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中編
しおりを挟む「では、いくか?」
「うん。お父さん。ありがとう。」
どうか、純粋な愛が生まれますように。心の中の片隅で、ずっとそう思っていた。
「ねぇ、アンナ!本当なの?ただでさえあんな男にフラれたというのに、そもそもパーティーなんかで出会いを求めるなんて、薄っぺらい愛しか作れないわ!」
私の母は、猛反対した。私のことを気にかけて反対してくれたのであろう。
「ありがとう。お母さん。だけどね、パーティーで恋愛を求めるのも普通のことでしょう。実際、お母さんとお父さんが恋仲になって今こうやって共に幸せになってるのも、パーティーで作られた愛のおかげでしょう?」
「ま、まぁ、そうだけど…」
そう。私の父と母が出会い、恋仲になったのはとある公爵令息の誕生日パーティーがきっかけである。パーティーに、そういった恋愛目当てで参加する人は多い。
「やってみるわ。お母さん。それに、私はそんなに今、傷ついてないから。むしろ、新しい出会いのワクワクの方が高いわ。」
「なら、無理しないでね…」
本当に母は優しい。私のことを第一に考えてくれる。この優しさを悲しさに変えないように、私もしっかりとした恋愛を求め、パーティーに参加して、出会いを求めるしかない。
今後の後取りともなる人間になるのだ。よっぽど優秀な人ではないといけない。
夜には、綺麗な月が見えた。美しい。しかし、トラウマでもある。月と言えば、ラヴィマールに告白された時の言葉、景色に月が関連するのだ。今夜のように月が美しい日に、「君を例えるなら、あの美しく、幻想的なあの月だ。そして、僕はその月を静かに包む夜空。君の夜空になりたい。」と、言われて婚約した。
だが、夜空になり、婚約もして早々、あのようなことを言われ、婚約破棄、別れに至った。
「どうか、お月さま、私に純粋な愛を。」
美しく輝く月に、そう願った。
パーティーは、賑やかであった。さすがと言う感じである。久々に来たものだから、少し緊張する。だが、その緊張がラヴィマールのことを忘れさせて良い薬になる。
「どうしよう。ただ、一人でいたら、誰か話しかけてくれるかな。」
そんなことを考え、一人目立つところで飲み食いを楽しんだ。しかし、誰もこない。むしろ、周りからは不思議な目で見られている。あぁ。そうか。周りからは、まだ知らされていないから、ラヴィマールと付き合っていると思われているのか。だから、ひとりの私が変なのであろう。
ならば、パーティー作戦は失敗となるのか。あまりに無謀だから、帰ろうと思った時、懐かしみを感じる声が私を呼び止めた。
「アンナ!アンナでしょう!?」
振り向くと、そこにはフサフサの赤い髪の毛、キラッとクリリンとした可愛い眼、そして、白くて、美しい肌の、王子様のような格好をした男がいた。私は、彼を見た瞬間に、思い出した。
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