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第4話 なぜですの⁉ マーガレット視点

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「なっ、なぜですの――」(なぜですのユリウス様!? どうして50クララなんですの!?)

 ここは、公衆の面前。慌てて声のボリュームを下げて、両目を瞬かせる。
 わたくしと食べ歩きデートを出来たのにっ! 可愛らしくタルトを食べる姿を間近で見たのにっ! 手を繋いだのにっ! どうしてあの方の半分程度になってますのっ!?

(通行人が多い、俺も声量を落としておくか。……マーガレット。君と過ごしたあの1時間半は、体感ではクララと過ごした際の倍はあった。そこで2倍=2分の1として、50とした)
(んなっ!? で、では……っ。あの方よりも遥かにっ、つまらなかったと仰るんですのっっ!?)
(そうだな。単刀直入に言えば、そうなる)
(っっっ!! わっ、わたくしがタルトを食べる姿を見ましたよねっ!? そっ、それを見てなんとも思わなかったんですのっ!?)

 我ながら最高に美しく可愛らしい様(さま)ですし、実際、他の殿方の視線をくぎ付けにする行動ですのよ!? あれで何も感じなかったんですの!?

(ああ、特には感じなかった。強いてあげるなら、『そんなにも無駄にポーズを決めて食べて、疲れないのだろうか』と思ったくらいだな)
(…………………………)

 こ、この方、本気ですわ……。
 クララテリア様への罪悪感で、我慢しているとかじゃありません。ユリウス様は、心からそう思っていますわ……。

(でっ、ですがっ! 思い返せばっ! わたくしがタルトを食べている際、少しだけですがジッとわたくしを見ていましたわっ!! あっ、あれはなんだったんですのっ!?)
(ああ、あれか。もともと、本当にそんなつもりはなかったのだが――。ソレによってクララがお菓子を食べる姿を思い出し、ボーっとしていただけだ)

 クララは食べることが好きで、本当に美味しそうに、幸せそうに食べるんだ――。その姿を見るのは楽しみの一つで、つい色々なものをお土産に買ってしまう――。
 などなど。わたくしが唖然となってしまうものに加え、知りたくもなかった情報までもを聞かされてしまいました……。テリア様の邸宅がある方角を、眺めながら……。

(何度も言っているが、俺はクララを愛し、クララ以外想うつもりはないんだ。続けるのは無駄だぞ?)
(…………い、いいえ。いいえ! ユリウス様は、まだわたくしの魅力に気付いていないだけですわ! そのお気持ちは、次で必ず、がらりと変わりますわ!)

 ここで微塵もなびかないのは計算外ですけど、まだ作戦は2つもあります。それに残りは、1つ目よりも強力なもの。次で軌道を修正し、わたくしのペースに持ち込みますわっ!

(ユリウス様っ、今度はとあるお店に入りますわ。こちらです)
(……今日1日、という約束だからな。分かった)

 そうしてわたくしは、再出発。気を取り直し、街の西側を目指したのでした。

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