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第1話 大嫌いな女 ナタン視点(3)

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「事あるごとに俺の意見に口出しをしてきて、あまつさえ今日はあんなにも生意気な口を聞いた。いつまでも許されると思うなよ……!!」

 俺の正論を否定し、その上『考え直せ』などなど偉そうに言いやがって。今日という今日は、絶対に許さない!!

「ルーラ。お前はついさっき、ああいったヤツらと同じじゃないと言ったな? そうじゃないことを、身をもって教えてやるよ」
「…………殿下。貴方様は、何をなさるおつもりなのですか?」
「決まってるだろ。これから父上と母上のもとに向かい、お前との婚約を破棄するんだよ」

 こんな間違いだらけで、まったく敬わない女なんて、不要。居るだけ邪魔だからな。今日やこれまでのやり取りにスパイスを振りかけて・・・・・・・・・・伝え、コイツとの縁をすっぱりと絶つ。

「俺はこの国の第一王子殿下であり、不動の王太子殿下。だからこの婚約の主導権は俺にあって、俺が拒否をすれば言い分が通るんだよなぁ」

 弟のカインは、すべてに置いて俺には遠く及ばない。頭脳も顔もカリスマ性も、ここにいるナタン様の方が圧倒的に上。
 俺以外を選ぶ選択肢がない上に、父上達の前ではヤツらの理想像を演じているからな。急にそんなことを言い出しても、あっさりと受け入れてしまうんだよなぁ。

「残念だったな、ルーラ。王妃という最高の地位と権力を得られる、光り輝く席に座れなくなって」
「ナタン殿下。私は、地位や権力に興味はありません。そのような立場に、そういった邪な考えを抱くのは――」
「かかっ、負け惜しみご苦労様。せいぜい強がってな」

 そんな貴重な立場に、興味がないものなんて居ないからな。それは大嘘。
 なので俺はたっぷりと嘲笑い、出入り口を顎でしゃくった。

「もうお前と話すつもりはない。お前の顔を見て声を聞くのは、不愉快だ。ただちにこの場から去れ。そして、使者からの連絡を大人しく待っていろ」
「…………残念ですが、仕方がありませんね。承知いたしました」

 残念。ほら、最後に本音が出た。
 ヤツは婚約破棄を後悔しながらカーテシーを行い、粛々とその場を去っていった。

「…………よし、じゃあ行くか」

 忌々しい女が居なくなり、スッキリとしたバルコニー。そこを満足げに眺め回したあと、俺は王の間を――父上と母上のもとを、目指したのだった。

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