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第3話 7年前の出会いと、気持ちの変化 マティアス視点(3)
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「男の子君、お待たせっ。ご飯、持ってきたよ」
翌日の、午後1時過ぎ。公園にあるベンチで待っていると、あの女が小走りでやって来た。
「どうぞ。これがお昼と、夜と、次の日の朝の分だよ」
「おう。どれどれ………………っておい……。こんなもんしかないのかよ……」
ゆで卵とキャベツやタマネギのサラダを挟んだ、クロワッサン。これが3つだけ。
おまけにクロワッサンはパサパサで、ゆで卵とサラダの量はやけに大量なものの、そのすべての鮮度がとても悪い。予想していた内容よりも遥かに質素で、おもわず二度見してしまった。
「お前は昨日、店で一番高い干し肉を買ってただろ。ああいうのを寄越せよ」
「…………ごめんなさい。あれは、ミンラ様――お母様が、食べるものなの。私も食べた事がなくって、こういうものしか持ってこれないの」
「はぁー、なんなんだよソレ。…………まあ、いいや。このレベルのなら、毎日持ってこれるんだよな?」
「う、うん。持ってこれる。だから、悪いことは……」
「分かってる。しないっての」
チープだったとはいえ、俺にとっては滅多に味わえないもの。そして悲しいかな、生活故の質より量。それらが怒りとげんなりを薄め、ゆっくりと頷かせた。
「ありがとう、男の子くんっ。明日も、明後日も、ちゃんと持ってくるね」
「ああ、ここで待ってる。じゃあな」
なぜか彼女はやけに急いで帰り、俺はベンチでのんびりと飯を食らう。
――何もしなくても、3食が保証される生活――。
それは、心身に大きな潤いをもたらす。そのため俺は日に日に肌艶が良くなり、力が湧いてくるようになった。
そして――。
起きた変化は、もう一つあった。
それと引き換えに……。日に日に彼女の肌艶が悪くなり、力も感じられなくなっていったのだった。
翌日の、午後1時過ぎ。公園にあるベンチで待っていると、あの女が小走りでやって来た。
「どうぞ。これがお昼と、夜と、次の日の朝の分だよ」
「おう。どれどれ………………っておい……。こんなもんしかないのかよ……」
ゆで卵とキャベツやタマネギのサラダを挟んだ、クロワッサン。これが3つだけ。
おまけにクロワッサンはパサパサで、ゆで卵とサラダの量はやけに大量なものの、そのすべての鮮度がとても悪い。予想していた内容よりも遥かに質素で、おもわず二度見してしまった。
「お前は昨日、店で一番高い干し肉を買ってただろ。ああいうのを寄越せよ」
「…………ごめんなさい。あれは、ミンラ様――お母様が、食べるものなの。私も食べた事がなくって、こういうものしか持ってこれないの」
「はぁー、なんなんだよソレ。…………まあ、いいや。このレベルのなら、毎日持ってこれるんだよな?」
「う、うん。持ってこれる。だから、悪いことは……」
「分かってる。しないっての」
チープだったとはいえ、俺にとっては滅多に味わえないもの。そして悲しいかな、生活故の質より量。それらが怒りとげんなりを薄め、ゆっくりと頷かせた。
「ありがとう、男の子くんっ。明日も、明後日も、ちゃんと持ってくるね」
「ああ、ここで待ってる。じゃあな」
なぜか彼女はやけに急いで帰り、俺はベンチでのんびりと飯を食らう。
――何もしなくても、3食が保証される生活――。
それは、心身に大きな潤いをもたらす。そのため俺は日に日に肌艶が良くなり、力が湧いてくるようになった。
そして――。
起きた変化は、もう一つあった。
それと引き換えに……。日に日に彼女の肌艶が悪くなり、力も感じられなくなっていったのだった。
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