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第10話 尽きることない不満 俯瞰視点(1)

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「あははっ、あははっ。これよっ、これこれっ! あたしはずっとっ、こういう日常を待ってたのよ!」

 シュザンヌが神殿でありこの国を去ってから、一週間後。この国唯一の聖女となっている佐々岡春奈は、最高ランクの家具で固めた自室にて満面の笑みを浮かべていました。

 ――聖女が独りしかいないため、周囲は今まで以上に春奈のご機嫌を取らざるを得なくなった――。

 それによって春奈の耳には新聖女を絶賛する声しか入って来なくなり、完全なる唯一無二の『象徴的存在』となっているため、非常に機嫌がよかったのです。

「聖女の力をこの国のために使ってあげるって、言ってあげたんだもの。しっかり崇める、しっかり称えるのは当然よね。や~っと、理想的が出来上がったわ!」

 神殿に行けば関係者がペコペコする。慰労に行ってあげたらソコにいる人間全員がペコペコする。
 どこにいても最大級の敬意を払われるなんて、日本で女子高生をしていた頃はなかった――大人になっても、一生涯あり得なかったこと。
 春奈は頬を紅潮させてパチンと指を鳴らし、春奈はより一層聖女活動に力を入れるようになりました。

「ドンドン慰労に行ってあげるわ! ガンガンスケジュールを入れなさい!」

 もっともっと崇められたい。もっと色んな場所で、もっと沢山の人間に感謝されたい。もっと自分にひれ伏す姿を見てみたい。
 そういった理由で春奈は張り切り、自分のためにタイトなスケジュールを組み、自分のために精力的に動き回りました。

「ふふふ、あはははははっ。楽しいっ! 楽しくって仕方がないわっ! くふふっ。こんな毎日を過ごしてる人って他にいるっ!? ここまでの人はいないいないっ! ホント最高だわ!!」
 
((よ、よかった……))

((一時はどうなることかと思いましたが……。その様子でしたら、安心ですね))

((今後も、聖女の職務を全うしてくださることでしょう))


 シュザンヌ引退の真実を知っている者達は――春奈のあまりにも身勝手な性質を知っている者達は、そんな姿を見てホッと胸を撫で下ろしていました。
 ですがそんな者達の表情は、その僅か1か月後に強張ることとなってしまうのでした。


「やあ春奈、俺に話があるんだってね。なんだい?」
「アントナン殿下、お願いがあるの。もちろん聞いてくれるでしょ?」
「え? あ、ああ、うん。聞くよ。どんなお願いがあるのかな?」
「あたし、自分の時間と自由が欲しくなったの。だから慰労の当面の休止と、規則を変えて聖女が国外にも出られるようにして頂戴」


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