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If ローズの恋と変わる心 俯瞰視点(5)
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「レオス様は、あたしを一目で見抜いた…………人を見極める目を持っていた。だから……。悪い部分は、全部捨てないといけない」
決意をしたローズ。彼女はまず姉サーラと婚約者フェリックスのもとに行き、
「姉さん、フェリックス様、ごめんなさい……っ。あたしは、心を入れ替えていたフリをしていました。魔法の本を使ってフェリックス様を魅了して、姉さんから奪い取ろうとしていたんです!」
2人の前で床に両膝をつき、誠心誠意の謝罪を行います。そうすると心優しいサーラ達は『正直に打ち明けてくれたから、許すよ。これからは仲良くしようね』と笑いかけるのですが、ローズには決めていることがありました。
「姉さん、フェリックス様、パパ、ママ。あたしは、『ヴィナロ修道院』で修行をしてきます!」
そこはこの国の西部にある、孤児院が併設された修道院。そこにある『ヴィサト孤児院』に所属することで修道女にならなくても様々な奉仕活動に参加できるようになっており、ローズはそうして心をしっかりと入れ替えようとしていたのです。
「「ローズよ。本気、なのか?(本気なの?)」
「ローズ。あそこは1年単位、つまり1年経つまでは離れられないんだよ?」
「僕も、心配だ……。大丈夫なのかい?」
「本気だし、大丈夫です」
その間に他の人と結ばれてしまう可能性はあるけれど、これが一番の方法――。こびりついてしまった『自分』を捨てるには、これしかない――。
そう考えているため、即座に返事をしました。
「パパ、ママ、姉さん、フェリックス様。行ってきます」
そうしてローズは旅立ち、彼女は心を込めて奉仕活動を行います。
今の彼女は結局は自分の目的のために動いており、まだまだ心の中には悪い面が沢山残っていました。そのため、
――めんどくさい――。
――疲れる――。
――嫌だ――。
そういった不満が頻繁に浮かんできますが、それを懸命に打ち消し、毎日毎日せっせと動きます。そうしていると徐々に腹黒い面が薄まってゆき、更には、
「お姉ちゃん、ありがと~っ」
「お姉ちゃんが来てくれるとね、うれしくてたのし~。また来てね~」
孤児院内外の子ども達の声や笑顔がローズの心を解し、やがてはローズ自身もやりがいを感じるようになります。
「……ええ、また来るわ。あたしも、貴方たちといると楽しいもの」
笑顔をもらって、笑顔になる。
そんな日々が毎日続き、1年後――。ブランシュ邸に戻ってきたローズは少し背が伸びて、心は身体以上に成長していました。
「「ローズ、お帰り」」
「ローズ、おかえりなさい」
「ローズ、君の評判は聞いていたよ。おかえりなさい」
「パパ、ママ、姉さん、フェリックス様、ただいま。……あたし、行ってきます」
胸の奥に一点の曇りもなくなった彼女は家の馬車に乗り、隣国へと出発。想い人がいる騎士団の本部を目指し、やがて1年ぶりの再会を果たすのでした。
決意をしたローズ。彼女はまず姉サーラと婚約者フェリックスのもとに行き、
「姉さん、フェリックス様、ごめんなさい……っ。あたしは、心を入れ替えていたフリをしていました。魔法の本を使ってフェリックス様を魅了して、姉さんから奪い取ろうとしていたんです!」
2人の前で床に両膝をつき、誠心誠意の謝罪を行います。そうすると心優しいサーラ達は『正直に打ち明けてくれたから、許すよ。これからは仲良くしようね』と笑いかけるのですが、ローズには決めていることがありました。
「姉さん、フェリックス様、パパ、ママ。あたしは、『ヴィナロ修道院』で修行をしてきます!」
そこはこの国の西部にある、孤児院が併設された修道院。そこにある『ヴィサト孤児院』に所属することで修道女にならなくても様々な奉仕活動に参加できるようになっており、ローズはそうして心をしっかりと入れ替えようとしていたのです。
「「ローズよ。本気、なのか?(本気なの?)」
「ローズ。あそこは1年単位、つまり1年経つまでは離れられないんだよ?」
「僕も、心配だ……。大丈夫なのかい?」
「本気だし、大丈夫です」
その間に他の人と結ばれてしまう可能性はあるけれど、これが一番の方法――。こびりついてしまった『自分』を捨てるには、これしかない――。
そう考えているため、即座に返事をしました。
「パパ、ママ、姉さん、フェリックス様。行ってきます」
そうしてローズは旅立ち、彼女は心を込めて奉仕活動を行います。
今の彼女は結局は自分の目的のために動いており、まだまだ心の中には悪い面が沢山残っていました。そのため、
――めんどくさい――。
――疲れる――。
――嫌だ――。
そういった不満が頻繁に浮かんできますが、それを懸命に打ち消し、毎日毎日せっせと動きます。そうしていると徐々に腹黒い面が薄まってゆき、更には、
「お姉ちゃん、ありがと~っ」
「お姉ちゃんが来てくれるとね、うれしくてたのし~。また来てね~」
孤児院内外の子ども達の声や笑顔がローズの心を解し、やがてはローズ自身もやりがいを感じるようになります。
「……ええ、また来るわ。あたしも、貴方たちといると楽しいもの」
笑顔をもらって、笑顔になる。
そんな日々が毎日続き、1年後――。ブランシュ邸に戻ってきたローズは少し背が伸びて、心は身体以上に成長していました。
「「ローズ、お帰り」」
「ローズ、おかえりなさい」
「ローズ、君の評判は聞いていたよ。おかえりなさい」
「パパ、ママ、姉さん、フェリックス様、ただいま。……あたし、行ってきます」
胸の奥に一点の曇りもなくなった彼女は家の馬車に乗り、隣国へと出発。想い人がいる騎士団の本部を目指し、やがて1年ぶりの再会を果たすのでした。
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