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第10話 瓶の中身~あのあとオリヴァーは~ 俯瞰視点
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「メイソン。愚兄が申し訳ないことをした」
それは、イーサンとアヴリーヌが建物の中に――ソフィアの前で使用する毒を手に入れるため、知人のもとを訪ねた直後のことでした。イーサンの従者が主の帰りを待っていると、突然背後から声をかけられました。
「っ、オリヴァー様!? なぜこちらにっ!? わっ、わたくしめは――」
「大丈夫、慌てなくていい。僕は知っているんだよ、何もかもね」
イーサンとアヴリーヌがここに居る理由。今この場にいない二人が、今後取る行動の内容。そして――
『イーサン様!? そ、それは!!』
『そうだな、この手に持っているのは形見のペンダント。……俺にも後ろめたさはあるけれど、成功には協力者が必要不可欠なんだよ』
――真面目な従者メイソンは、脅迫をされてしぶしぶ片棒を担いでいたと把握していること。
それらを、手短に伝えました。
「気付くのが遅くなってすまない。くだんの形見はすでに兄さんの部屋にて発見し、回収してある。ここにあるものは、紛れもない本物だよ」
そうしてオリヴァーはペンダントを丁寧に返し、感涙するメイソンに再度詫びを入れたあと、建物を一瞥しました。
「あの二人は、悪行に悪行を重ねた。だからこれから報いを受けさせるつもりなのだけれど、君が協力してくれたらスムーズに進むんだ。手を貸してもらえるかな?」
「もっ、もちろんでございます! そちらはわたくしめの願いでもありまして……。いったい、なにをお手伝いすればよろしいのでしょうか?」
「ここにある、僕が用意した液体。これを、このあと兄さんが用意する液体とすり替えてもらいたいんだよ」
イーサンが用意していたものとまったく同じ形をした、まったく同じ色の液体が入った小瓶。それを、メイソンに手渡しました。
「お、オリヴァー様……。もしやこちらは…………。本物の、毒でございますか……?」
「まさか。そんな真似はしないよ、さすがにね」
毒を飲むフリをしていた者達が、本物を飲んでうっかり死んでしまう。二人に相応しい末路ではありますが、あの場で死なれたら様々な面でソフィアに悪影響が生じます。
そのためオリヴァーは、毒を用意してはいませんでした。
「これは身体に無害、それどころかとても健康に良いものだそうだよ。ただ」
「た、ただ?」
「異常なほどに苦く、喉が焼けるような痛みを覚えるらしい。……そんなものを何も知らずに飲んだら、どうなるんだろうね?」
それは、イーサンとアヴリーヌが建物の中に――ソフィアの前で使用する毒を手に入れるため、知人のもとを訪ねた直後のことでした。イーサンの従者が主の帰りを待っていると、突然背後から声をかけられました。
「っ、オリヴァー様!? なぜこちらにっ!? わっ、わたくしめは――」
「大丈夫、慌てなくていい。僕は知っているんだよ、何もかもね」
イーサンとアヴリーヌがここに居る理由。今この場にいない二人が、今後取る行動の内容。そして――
『イーサン様!? そ、それは!!』
『そうだな、この手に持っているのは形見のペンダント。……俺にも後ろめたさはあるけれど、成功には協力者が必要不可欠なんだよ』
――真面目な従者メイソンは、脅迫をされてしぶしぶ片棒を担いでいたと把握していること。
それらを、手短に伝えました。
「気付くのが遅くなってすまない。くだんの形見はすでに兄さんの部屋にて発見し、回収してある。ここにあるものは、紛れもない本物だよ」
そうしてオリヴァーはペンダントを丁寧に返し、感涙するメイソンに再度詫びを入れたあと、建物を一瞥しました。
「あの二人は、悪行に悪行を重ねた。だからこれから報いを受けさせるつもりなのだけれど、君が協力してくれたらスムーズに進むんだ。手を貸してもらえるかな?」
「もっ、もちろんでございます! そちらはわたくしめの願いでもありまして……。いったい、なにをお手伝いすればよろしいのでしょうか?」
「ここにある、僕が用意した液体。これを、このあと兄さんが用意する液体とすり替えてもらいたいんだよ」
イーサンが用意していたものとまったく同じ形をした、まったく同じ色の液体が入った小瓶。それを、メイソンに手渡しました。
「お、オリヴァー様……。もしやこちらは…………。本物の、毒でございますか……?」
「まさか。そんな真似はしないよ、さすがにね」
毒を飲むフリをしていた者達が、本物を飲んでうっかり死んでしまう。二人に相応しい末路ではありますが、あの場で死なれたら様々な面でソフィアに悪影響が生じます。
そのためオリヴァーは、毒を用意してはいませんでした。
「これは身体に無害、それどころかとても健康に良いものだそうだよ。ただ」
「た、ただ?」
「異常なほどに苦く、喉が焼けるような痛みを覚えるらしい。……そんなものを何も知らずに飲んだら、どうなるんだろうね?」
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