催眠探偵術師のミク

柚木ゆず

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6 罠(4)

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「は? はっ? は……? さいみん、を、さき、に……?」

 理由をお伝えしたら、真犯人さんはお口をパクパクさせ始めた。
 ありゃりゃ。信じられないことが起きちゃったから、頭の中が爆発しちゃってるみたい。

「え? は? それは、どういう……?」
「催眠術がね、効かないようにしておいたの。あとから催眠術をかけても意味がないよーにしてたから、真希ちゃんにはかかってなかったんだよー」

 かかってないから、忘れろーって命令しても忘れてないんだよね。

「さ、催眠術を防ぐ、催眠術……。そんなことが、できる、のか……?」
「スマートホンのロックとおんなじだよ。あれって正解の番号とかを打ち込まないと、なにも反応してくれないよね? だからぜーんぶ、意味がなかったの」
「ふふふ、これがオチよ先生。アナタにとっては、常識を覆すような催眠でしょ?」
「思い付きもしない…………というか、そんなものは聞いたことがないっ。こんな魔法みたいなことを、しかもこんな子どもが軽々とやれるなんて――いやそれは有り得ない!」

 頭を抱えていた真犯人さんが、ぎょろっとした目で睨んで来た。
 ふぇ? あり得ない?。

「瞼を下げられないという術はかかっている! オレの催眠術はかかってるじゃないかっっ! お前達の言い分は全部嘘だ!」
「はぇー。わたし達が知らないところで、そんなことがあったんだー」

 わたしは、そこにいなかったもんね。知らなかったよ。

「あの時は確かに、かかっていた! 僕が操る催眠をかけたのはその直後だから、そっちもかかるはずだっ! おかしい!!」
「んーん、ちょっぴりもおかしくないよー。だってそれって、真希ちゃんが催眠術にかかったお芝居をしてただけだもん」
「そっ。アタシは、かかったフリをしていたのよ」

 わたしはずっと前に、催眠術は効かないって催眠術をかけてたんだもんね。お話を合わせていただけないのです。

「えん、ぎ……っ。あそこからずっと騙していたのか!?」
「いいえ、その前からよ。例の睡眠薬入りのスポーツドリンクを飲んで倒れたところから、アナタを騙していたわ」

 真犯人さんは、またハズレ。
 最初の最初からずーっと、騙されてたんだよね。

「ボトルを落とす際にワザと零したから、アナタは気付いていないでしょうけど。あれは飲むフリをしていて、アタシは一滴も飲んでいないのよ」
「っっ! そ、んな……さ、催眠術の対策だけではなく、睡眠薬の対策までやっていただなんて……。どうしてそこまで準備をできたんだっ!?」
「真犯人さんが、真希ちゃん――夢卯ちゃんと親しい人を使って、何かをやってくる可能性が高かったからですー。だから『おひとりの時にもらった食べ物と飲み物は手を付けないでね』ってお願いをしてたんだよっ」

 放課後までに、きっと悪い動きがある。そう予想してたから、できたのです。
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