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第16話 回想・補完編その1 ~十年前の出会い~ レオナード(ヴィクター)視点(3)

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「レオナード様。お迎えにあがりました」

 僕が考えを変えて、戻ろうとした時だった。どこからともなく、目の前に赤い髪の女性が現れた。

「……レベッカ。そっか、そうだよね。僕は国王の子どもだもんね。ずっと傍に居た――居てくれてたんだね」
「はい。ただ…………わたくしは専属護衛ではありますが、人でもございます故。現状を喜ばしく思っております」
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫だよ、ありがとう」

 そうして僕はレベッカと共に父上のもとへと戻り、暴走を謝罪。二度とこんな真似はしないと誓い、父上は不要だと仰ったものの自身がそう決めていたため、1週間城内の清掃など自分に罰を与えた。
 そしてそれが終わった日に、僕は父上に一つのお願いをしたのだった。

「なんだって……!? 調律師を目指したい!?」
「はい。僕の心を救ってくれた恩人に、恩返しをしたいんです」

 一週間ああしている間に情報を集めてもらい、奏者はレンダユス伯爵家のステラ様だと――ピアニストを志している女の子であると知った。同時に調律師は職業柄年々数が減っている上に我が国では高齢化が顕著であるとも知っていて、そう決めていたのだ。

「う、ううむ……。お前の意思を尊重してやりたいところだが……」
「お父様、安心してください。職務、責務は全うした上で、目指すつもりです」

 先にあった派閥や親族、他国などの問題を少しでも早く封じ込めていけるように、次の代からは――兄上が国王に就いた時から、僕とレオネル――次男と三男が両脇を固め、3人で力を合わせて国を守ってゆく計画になっている。幸い僕ら兄弟は仲が良くリスペクトし合っていたため、実現すれば強固な守りが誕生するのは確定的だった。
 なので――あのような思いをするのは僕で最後になるように、そこを疎かにするつもりはなかった。

「僕は奏者である彼女に救われたので、恩返しはピアノに関することでなくてはならないのです。どうか、お許しください」
「…………時間、労力、体力。様々な面で、厳しい毎日になるだろう。それでも有言実行とするのだな?」
「はい。どちらも実現します」
「父上。この男は、やると決めたらやる男です」「お父さま。お兄さまは約束を破らない人ですよ」
「お前達…………それは分かっておるさ。一応、聞いてみただけだ」

 父上は、陰で盗み聞きをしていた――見守ってくれていた兄さんとレオネルに向けて頷き、こうしてお許しをいただいた。
 なのでその日から調律師を目指し始め、師匠は容赦のない人で修業は厳しかった。第二王子との両立は厳しいものだったが、それでも我武者羅に走り続けた。
 そうしてそれから6年後に『一人前』の太鼓判をいただき、やがて僕は専属調律師としてステラ様と契約を行ったのだった――。

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