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第10話 恐怖の対面と、戸惑い マーティン視点(1)
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「お、おひはひふりでっ。お久しぶりでございらすっ。マーティンさま――いえオーバン様っ!」
我がリッダジア侯爵邸の1階部にある、応接室。オーバン様の希望により俺達は一対一で向かい合っていて、まずは改めてご挨拶を行った。
……これから待っているのは、解消および捏造に関する話なのだから……。どんなに落ち着こうとしても、舌がもつれテンパってしまう……。
「今日のマーティンは、様子がおかしいね? どうしたんだい?」
「そ、それは……。…………オーバン様、申し訳ございません! わたくしは今回の件によってようやく、事の大きさに…………己の身勝手さに、気が付きましたっ!」
これは遠回りに、『当然分かっているだろう?』と仰られている。したがってここで知らないフリをしてしまえば、更に大きな反感を買ってしまう。
そこで俺はソファーからどうにか立ち上がり、倒れ込むようにして床に両膝をついた。
「オーバン様の来訪を知り、目的を把握して恐怖を抱き……。それによって、やっと省みるようになりました! これまでの『やる側』から『やられる側』に立場が変わったことにより、そういった側の気持ち、心理を理解できるようになりまして……。己が犯した罪の大きさ愚かさに、気付いたのです……!」
「マーティン、君は――」
「こちらは決して減刑などを目的としたものではございません!! すべてが本心によるものでしてっ! 自分自身っ! ああいった理由で過ちに気付きましたのでっ、減刑は一切望んでおりません!! オーバン様のお好きなようにっ、俺を――俺と父を、事前にお決めになられた内容でお裁きください!!」
本音は逆だ。俺は減刑を望んでいて、そもそも裁きなんて受けたくない。
だがこうでも言わないと、この場合はもっとひどい目にあってしまうことになる。ここで『罪を軽くして』という動きを僅かでも見せたら、更なる地獄が待っている……!
だから本心に見えるように『どうにか穏便に』という気持ちを封じ込め、声を体を激しく震わせながらそう訴えた。
「この場での執行。連行の上での執行。どちらでも構いません。覚悟はできております故、どうぞお裁きください……!!」
「………………。マーティン」
神様、お願いします! 奇跡を起こしてください! 俺がこう口にしたことで、オーバン様の怒りが収まりますように!! あり得ないことを実現させてください!!
そう祈りながら、立ち上がったオーバン様を見上げる。そうしてこの方はゆっくりと俺の真ん前まで歩いて来て――
「君は、さっきから何を言っているんだ? 己の犯した罪とは、なんなんだい?」
――片膝を付いて目線を合わせてくださり、不思議そうに首を傾げられたのだった。
…………え? え………………?
我がリッダジア侯爵邸の1階部にある、応接室。オーバン様の希望により俺達は一対一で向かい合っていて、まずは改めてご挨拶を行った。
……これから待っているのは、解消および捏造に関する話なのだから……。どんなに落ち着こうとしても、舌がもつれテンパってしまう……。
「今日のマーティンは、様子がおかしいね? どうしたんだい?」
「そ、それは……。…………オーバン様、申し訳ございません! わたくしは今回の件によってようやく、事の大きさに…………己の身勝手さに、気が付きましたっ!」
これは遠回りに、『当然分かっているだろう?』と仰られている。したがってここで知らないフリをしてしまえば、更に大きな反感を買ってしまう。
そこで俺はソファーからどうにか立ち上がり、倒れ込むようにして床に両膝をついた。
「オーバン様の来訪を知り、目的を把握して恐怖を抱き……。それによって、やっと省みるようになりました! これまでの『やる側』から『やられる側』に立場が変わったことにより、そういった側の気持ち、心理を理解できるようになりまして……。己が犯した罪の大きさ愚かさに、気付いたのです……!」
「マーティン、君は――」
「こちらは決して減刑などを目的としたものではございません!! すべてが本心によるものでしてっ! 自分自身っ! ああいった理由で過ちに気付きましたのでっ、減刑は一切望んでおりません!! オーバン様のお好きなようにっ、俺を――俺と父を、事前にお決めになられた内容でお裁きください!!」
本音は逆だ。俺は減刑を望んでいて、そもそも裁きなんて受けたくない。
だがこうでも言わないと、この場合はもっとひどい目にあってしまうことになる。ここで『罪を軽くして』という動きを僅かでも見せたら、更なる地獄が待っている……!
だから本心に見えるように『どうにか穏便に』という気持ちを封じ込め、声を体を激しく震わせながらそう訴えた。
「この場での執行。連行の上での執行。どちらでも構いません。覚悟はできております故、どうぞお裁きください……!!」
「………………。マーティン」
神様、お願いします! 奇跡を起こしてください! 俺がこう口にしたことで、オーバン様の怒りが収まりますように!! あり得ないことを実現させてください!!
そう祈りながら、立ち上がったオーバン様を見上げる。そうしてこの方はゆっくりと俺の真ん前まで歩いて来て――
「君は、さっきから何を言っているんだ? 己の犯した罪とは、なんなんだい?」
――片膝を付いて目線を合わせてくださり、不思議そうに首を傾げられたのだった。
…………え? え………………?
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