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第10話 最後のサプライズ アリシア視点
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「あら、もうこんな時間。楽しいパーティーも、もうそろそろ終わってしまいますのね」
「ええ、残念ですわ。楽しい時間でしたから…………終わってしまうのは、寂しいですわ」
「あと一つくらい何かがあれば、寂しい思いをせずに済むのですが……。何かしらがある、なんてことはありませんわよね……?」
「えっ!? 皆さん忘れてしまいましたのっ!? 最後に大事なご報告があると、ヴァイオレット様が仰っていたではありませんのっ」
壁の花となってムカデのブローチを眺めていたら、他の参加者がワザとらしくこんな会話をし始めた。
なるほどね。もう一つ仲間にも内緒な『私への大きな攻撃』が――それも今夜の集大成となるものが、これから発生するみたい。
((会場に入ってからの、ヒソヒソ話。ローストビーフなどの食べ物、ボヌール管弦楽団による『蒼海』の生演奏。ムカデのブローチときて……。ヴァイオレット様が考える、トドメの一撃。なんなんでしょうね……?))
ボヌール管弦楽団の演奏は…………いくら考えても意図が掴めなかったけど……。あの方はあの手この手で、色々な角度から私にダメージを与えようとしてきた。
だから今回のものもタチが悪くて、次はラストなのだから、輪をかけて意地が悪いものになっているんでしょうね。
((ロイス様とダフネ様を特別ゲストとして招待して、私を動揺させる? ……それはあり得ないわね))
ヴァイオレット様は多分そうしたいと考えた時期があると思うけど、ロイス様が首を縦に振るはずがない。それにこのお屋敷の持ち主であるレオン・ペティノール様は、そういうことを嫌う御方として有名。
きっと、このパーティーに他意があるとご存じでない――ヴァイオレット様が巧みに隠しているはずだから、ソレは100%ないわね。
((じゃあ、なんなのかしら? …………ブローチをもっとゆっくり眺めたいから、早く始まって早く帰してくれな――))
「皆様っ、お待たせいたしましたわっ!」
心の中でそんなことを考えていたら、一旦会場から出ていたヴァイオレット様が戻って来た。いつの間にか、ドレスが変わっている――更に豪華な純白なドレスになっているから、かなり気合が入ったものを企んでいるみたいね。
「…………皆様。本日は皆様に、とっても大事なご報告がありますの。当分はオフレコでお願い致しますわね」
口の前で人差し指を立てて、ゆっくりと会場を眺め回したあと。ヴァイオレット様は喜びと悪意を含んだ満面の笑みを浮かべ、はっきりとした口調でこう仰ったのだった。
「わたくしヴァイオレット・ぺティノールは明後日、レビライザ侯爵家のポール様と婚約をしますのっ!」
「ええ、残念ですわ。楽しい時間でしたから…………終わってしまうのは、寂しいですわ」
「あと一つくらい何かがあれば、寂しい思いをせずに済むのですが……。何かしらがある、なんてことはありませんわよね……?」
「えっ!? 皆さん忘れてしまいましたのっ!? 最後に大事なご報告があると、ヴァイオレット様が仰っていたではありませんのっ」
壁の花となってムカデのブローチを眺めていたら、他の参加者がワザとらしくこんな会話をし始めた。
なるほどね。もう一つ仲間にも内緒な『私への大きな攻撃』が――それも今夜の集大成となるものが、これから発生するみたい。
((会場に入ってからの、ヒソヒソ話。ローストビーフなどの食べ物、ボヌール管弦楽団による『蒼海』の生演奏。ムカデのブローチときて……。ヴァイオレット様が考える、トドメの一撃。なんなんでしょうね……?))
ボヌール管弦楽団の演奏は…………いくら考えても意図が掴めなかったけど……。あの方はあの手この手で、色々な角度から私にダメージを与えようとしてきた。
だから今回のものもタチが悪くて、次はラストなのだから、輪をかけて意地が悪いものになっているんでしょうね。
((ロイス様とダフネ様を特別ゲストとして招待して、私を動揺させる? ……それはあり得ないわね))
ヴァイオレット様は多分そうしたいと考えた時期があると思うけど、ロイス様が首を縦に振るはずがない。それにこのお屋敷の持ち主であるレオン・ペティノール様は、そういうことを嫌う御方として有名。
きっと、このパーティーに他意があるとご存じでない――ヴァイオレット様が巧みに隠しているはずだから、ソレは100%ないわね。
((じゃあ、なんなのかしら? …………ブローチをもっとゆっくり眺めたいから、早く始まって早く帰してくれな――))
「皆様っ、お待たせいたしましたわっ!」
心の中でそんなことを考えていたら、一旦会場から出ていたヴァイオレット様が戻って来た。いつの間にか、ドレスが変わっている――更に豪華な純白なドレスになっているから、かなり気合が入ったものを企んでいるみたいね。
「…………皆様。本日は皆様に、とっても大事なご報告がありますの。当分はオフレコでお願い致しますわね」
口の前で人差し指を立てて、ゆっくりと会場を眺め回したあと。ヴァイオレット様は喜びと悪意を含んだ満面の笑みを浮かべ、はっきりとした口調でこう仰ったのだった。
「わたくしヴァイオレット・ぺティノールは明後日、レビライザ侯爵家のポール様と婚約をしますのっ!」
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