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第2章
4話(16)
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『ソーラ様、レイル様。安全圏にいらっしゃるのでしたら、お返事をください』
あれからおよそ25分後。ティルが2つ目のお話を終えたところで、私達の頭の中に聞き覚えのある声が響いた。
この上品な声は、ルナ・レルマさん。この国の第一王女様だ。
「? ?? お兄さんお姉さん、どーしたのー?」
「ごめんね。用事ができたから、お兄さん達はちょっと外に出てくるよ」
すっかり『優しくてカッコいいお兄ちゃん』の二つ名がついたティルと一緒に私も断りを入れ、揃って建物から出る。
相手が相手だもんね。誰にも聞かれない場所に移り、レルマさんに返事をした。
「レルマ殿、我々は無事です。出現した二体の魔物を打ち倒し、現在はノイゾ村で滞在しております」
第一王子は命に別条がないこと。私達は無事なこと。ノイゾ村に監禁されていた人がいたこと。街を出てから今までに起きた出来事を、全て説明した。
『お、お二人が、倒されたのですか……!? 二体の人型魔物を、ですか……!?』
説明し終わったと同時に、頭に響いている声が震える。
能力持ちの王子と手練れの戦士が、傷すらつけられなかった相手だもんね。そうなるのも無理はないわよね。
「間違いなく、あの者達は処理しました。とある事情で我々には力があり、どちらも無傷で話しております」
『しかも無傷、なのですか……。信じられないお話なのですが、こうしてお喋りをしてくださっていますもんね。全て事実で、ホッとしております』
声音に柔らかさが含まれるようになって、脱力した様子も窺えるようになった。
『兄を助けてくださった事は存じ上げておりましたが、それ以降は不明で気が気でありませんでした。できればもっと早くお声をおかけしたかったのですが、遅くなってしまいすみません』
「もしも危険だったらと、配慮してくださったのですよね? 我々は正しく理解しておりますよ」
レルマさんは、真っすぐな人だもんね。考えがあって黙ってくれていたって、ちゃんとわかってます。
『ありがとう、ございます。お二人にはいつも――すみません。少しお待ちください』
あちらで何かあったらしく、能力を使った会話は一時中断。ティルと空を見上げて時間を潰していたら、3分くらいで再び声が響いてきた。
あれからおよそ25分後。ティルが2つ目のお話を終えたところで、私達の頭の中に聞き覚えのある声が響いた。
この上品な声は、ルナ・レルマさん。この国の第一王女様だ。
「? ?? お兄さんお姉さん、どーしたのー?」
「ごめんね。用事ができたから、お兄さん達はちょっと外に出てくるよ」
すっかり『優しくてカッコいいお兄ちゃん』の二つ名がついたティルと一緒に私も断りを入れ、揃って建物から出る。
相手が相手だもんね。誰にも聞かれない場所に移り、レルマさんに返事をした。
「レルマ殿、我々は無事です。出現した二体の魔物を打ち倒し、現在はノイゾ村で滞在しております」
第一王子は命に別条がないこと。私達は無事なこと。ノイゾ村に監禁されていた人がいたこと。街を出てから今までに起きた出来事を、全て説明した。
『お、お二人が、倒されたのですか……!? 二体の人型魔物を、ですか……!?』
説明し終わったと同時に、頭に響いている声が震える。
能力持ちの王子と手練れの戦士が、傷すらつけられなかった相手だもんね。そうなるのも無理はないわよね。
「間違いなく、あの者達は処理しました。とある事情で我々には力があり、どちらも無傷で話しております」
『しかも無傷、なのですか……。信じられないお話なのですが、こうしてお喋りをしてくださっていますもんね。全て事実で、ホッとしております』
声音に柔らかさが含まれるようになって、脱力した様子も窺えるようになった。
『兄を助けてくださった事は存じ上げておりましたが、それ以降は不明で気が気でありませんでした。できればもっと早くお声をおかけしたかったのですが、遅くなってしまいすみません』
「もしも危険だったらと、配慮してくださったのですよね? 我々は正しく理解しておりますよ」
レルマさんは、真っすぐな人だもんね。考えがあって黙ってくれていたって、ちゃんとわかってます。
『ありがとう、ございます。お二人にはいつも――すみません。少しお待ちください』
あちらで何かあったらしく、能力を使った会話は一時中断。ティルと空を見上げて時間を潰していたら、3分くらいで再び声が響いてきた。
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