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第2章

3話(5)

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「アンタらに、大事な用があるんだ。来てくれるよな?」

 一人目の男の隣にいるヤツも、ナイフをチラつかせて言葉を放つ。
 こんなことをされたら断れないし、これは悪評について探れるチャンス。そこで私とティルはすぐに頷きを返した。

「ここは人通りが多い。人気(ひとけ)のない場所に移す」
「お前達は黙ってついてこい。逃げようとするんじゃないぞ?」
「そんなつもりは毛頭ない。さっさと案内してくれ」

 ティルが目線で促すと男達は私達に背を向け、大股で歩き始めた。
 この辺りは人通りが多くて、そういうところはないはず。しばらくコイツらと進む羽目になりそうね。

「はぁ、面倒になことになったわね。どこまで歩かないといけないのかしら?」
(……………………)

 呆れつつ隣に顔を向けてみたら、反応なし。ティルは目を瞑り、目を開ける、という行動を繰り返していた。

(??? ???)
(…………………ミファ。その先の角を曲がったら、その瞬間に『祝福』で俺の聴覚を少しだけ強化して欲しい)

 不思議に感じていると、真っすぐ前を向いたまま、極めて小声かつ早口で反応があった。
 こちらを全く見ずに、一方的に伝える――。内緒でやって、ってことね。

 ――オッケー。わかったわ。

 心で返事をした私は前の3人に気付かれないように注意をしながら、角を右に曲がったと同時に恵みを施した。
 言われた通りに、やってみたけど……。こうして、どうなるんだろ……?

(助かった、ミファ。おかげで、後方にも三人敵がいると分かったよ)

 心の中で首を何度も傾げていたら、おもわず声を出しちゃいそうになる小声が返ってきた。
 後ろ!? そっちにも3人いたの!?

(相手は殺気を非常に上手く隠していて、極僅かしか漏れていなかった――存在を感知するだけで精一杯だった。そこで聴覚を上げて『一定の距離を保ち歩く者の足音』を聞き分け、位置と人数を特定していたんだ)
(そっか……。だから相手は全然こっちを振り返ってなくて、ティルは集中してたんだ――ってちょっと待って! 普通の人は、そこまで上手に殺気を消せないわよねっ?)

 ウチの騎士団のメンバーに話を聞いて、そういう知識はある。
 殺気を隠すには、かなりの修行がいる。センスがあると言われていた団長さんでさえも、毎日の厳しい修行を7年間続けて習得したレベルだった。

(365日朝昼晩と真面目に鍛えて、やっとなんだもん。そこら辺の人間が当たり前のようにできるものじゃないわ)
(ああ、そうだな。後ろの者は――前の者も所謂チンピラを装っているが、そんな輩ではない。十中八九、正しい指導を受けて訓練を行っている人間だ)
(そんなヤツらが、テオさんの悪評を流してる……。これは裏に何かがある、案件のようね)
(彼らを捕らえ、しっかりと吐かせる必要がありそうだ。……殺気があるという事は、あちらにはそういう気があるという事。コイツらの相手は俺に任せてくれ)

 私達は引き続き正面を向いたまま会話をして、それから2分くらいして路地にたどり着いた。
 敵は私達を挟み撃ちにして、確実に倒そうとしてるみたいね。だけど、残念。うちの幼馴染に、そんな小細工は通用しないわよ。
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