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第2章

1話(6)

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『ふざけんなよテメェ! 俺に文句を言うんじゃねぇっ!!』
『なんだと……っ。これだからお前は昔から気に食わねえんだ……!』
『そうだそうだっ。間違った素直に謝れってんだよ、この子供以下野郎!』
『ぁぁ? 子供以下だと……っ? 二度と生意気言えねえようにしてやらぁぁぁぁぁぁあああああああああ!!』

 ギルドは各国ごとに登録しないといけないため、この街のギルドにお邪魔した。そしたら1階のど真ん中で3人の大男が激しく言い合いをしていて、やがて取っ組み合いのケンカが勃発。その結果3人は8人のギルドスタッフにすぐさま取り押さえられ、戦士のリール・サザヤさん35歳とサザキ・ランクスさん35歳、そしてギルドマスターのワサト・リンクさん35歳が、5週間の謹慎処分となったのでした。
 ……うん。最初と最後の台詞の人、ギルドのトップなのよね……。

「先ほどは、お見苦しいところをお見せしました。すみません」

 ようやく場が落ち着いたので申請をしたら、受付にいるお姉さんが何度も何度も頭を下げてくれた。
 この人が悪いんじゃないのに……。スタッフさんも大変よねぇ……。

「いえ、お気になさらずに。この街のギルドマスターさんは、なかなかに血の気が多い人みたいですね」
「それが、ですね。確かにカッとなりやすい性格ではあるんですが、仲間には絶対に暴力を振るわない人なんですよ。なのであたし達も、ビックリしてるんですよね」

 意外なことに、そういうタイプじゃなかったみたい。連行されてる時にスタッフさんが何かヒソヒソ話をしてたのは、そのことで驚いてたのかもだ。

「マスターは先程まで現地調査をされていて、久しぶりに戦士としての血が騒いだのかもしれません。普段はいい兄貴分な方なのですが――余計なお喋りをしてしましましたね。ナルセイの有名人お二方の登録、完了いたしました」

 頭コンと叩いて苦笑していた受付係さんは、やけに目をキラキラさせてカードを渡してくれた。
 ここは魔物に関する情報も集まる、ギルドだもんね。ティルと私の名前が広まってたみたい。

「ノーンを救った英雄が来てくださったのなら、ここクローズも安泰です。ご活躍期待してます」
「自分達の目標を果たしつつ、できる限りのことはやらせてもらいます。処理、どうもありがとうございました――じゃなくって。あれを忘れてた」

 私はその場で、くるりと回転。ワンピースを全角度からお見せした。

「実は今着てるこの素敵なお洋服は、エンジュの現店主ことテオ・クリスさんの商品なんですよ。例の噂が本当かどうなのか、私達に注目しておいてくださいね」
「噂というのは、呪いがある、というお話ですよね……? だ、大丈夫なのですか……?」
「我々は何者かによる悪戯だと考えており、問題ないと確信しております。よろしければミファとティルが着用しているという話の流布を、お願いいたします」
「ホントに呪いがあるならまだしも、ないのに悪口が広まるのは可哀想。よろしくお願いしますね」

 私達は早速宣伝を行い、次はクエスト受注に出発。すっかりお馴染みになったクエストボードに歩み寄った。

「この街には、どんなクエストがあるのかしら? えーと……」
「現在最も難度が高いものは、A。あとはCやDの採取クエストが中心だな」

《畑を荒らすイノシシ型の魔物を6匹倒して欲しい。 報酬10万E》

《光石(こうせき)を5個持ってきて欲しい 報酬6万E》

 A級は魔物を倒すクエストで、他は素材を取ってくるクエストがほとんど。ここは服飾の街だけあって、服飾の材料になるものが多いみたい。

「今日はすでに午後3時を大きく回っていて、遠くに行くのは賢明ではない。そこで近場で済む採取クエストを1つか2つ受注しておこう」
「毎日稼いどかないと、だものね。ティルはどれがいいと思う?」
「それと、それ、だな。すぐ近くの森で採れる、『甘味草(かんみそう)4つ』と『赤(あか)の実10個』のクエストが適切だな」

 甘味草はご存じ私の嗅覚で楽々ゲットしたあの草で、赤の実は文字通り赤色の実。これは確か絞れば染料の原料になる、メイクスでは頻繁に発生してるクエストみたい(今日は同じ依頼が合計9もあった)。

「この組み合わせが、最も効率がいい。これで構わないか?」
「もちろん。これとこれで申請しましょ」

 代表して私がボードから剥がし、さっきの受付係さんに頼んでクエストを受注。処理が済むと私達は身体の向きを変え、甘味草と赤の実が採れる場所を目指し――

「緊急クエスト発生! 緊急クエスト発生です!!」

 ――採れる場所を目指していたら、建物内に大声が響き渡ったのでした。
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