上 下
66 / 173
第2章

1話(1)

しおりを挟む
「へぇ~、ここが『クローズ』。同じ中心的な街でも、ノーンとは雰囲気が違うわね」

 この国で一番大きな街にたどり着いた私は、360度を見回して「へぇ~」「へぇ~」と何度も感嘆の息を吐く。
 高い城壁と木組みの建物、石畳という構成は同じなのだけれど、色々なところに装飾が施されていて綺麗に彩られている。それに街を歩いている冒険者関連と思わしき人以外は、みんなオシャレ。やはり『服飾文化発祥の地』と言われるだけあって、ナルセイや私達がいた国とは力の入れどころが違ってる。

「武具屋やアイテム屋よりも服飾関係の道が多いなど、この街――この国の人間は、そういう部分に生活の重きを置いているらしいな」(この様子だと恐らく一般人は、魔王ゲーランが国内に居るとは知らないのだろうな)
(そうね。知ってたら、それどころじゃないもの)

 24時間365日大騒ぎで、こんなに楽しそうには過ごせない。もしかしたらゲーランは敢えて姿をさらさず、みんなを油断させようとしてるのかもだけど……。アイツの様子からすると、単に気まぐれかもしれない。
 こういう部分を深く考えるのは無意味だから、ここまでにしときましょっか。

(それじゃあメイクス国内ということでゲーランを意識しつつ、まずは服を買いにいきましょっか)
「そうだな。できれば先に拠点を確認しておきたいが、この街での宿はサーゼル殿が紹介してくださった場所だ。そちらを優先してもよさそうだな」

 実はサーゼルさん(ナルセイで泊ってた宿の主人さん)の旧友がやっている宿があって、出発前に宿泊の話をつけてくれてる。優良な宿を手掛けるあの人が『優良宿』と太鼓判を捺していたのだから、問題ないのよね。

「とにかくサービス品を、狙いたいわ。ティル。看板は、安売りをしている店までは教えてくれないのよね?」
「さしものクローズといえど、そんなサービスはないようだな。自分の足で探すしかないようだ」
「そりゃあそうよね。今のはちょっとしたジョークで、なら行きましょ」

 この街は馬車の乗り入れが禁止されているので、預かり所に向けて――お馬さん達に向けて手を振り、出発。この街での最初の『やるべきこと』、洋服のスペア探しを始めたのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】一緒なら最強★ ~夫に殺された王太子妃は、姿を変えて暗躍します~

竜妃杏
恋愛
王太子妃のオフィーリアは、王太子の子を身に宿して幸せに暮らしていた。 だがある日、聖女リリスに夫を奪われれ、自分に不貞の濡れ衣を着せられて殺されてしまう。 夫とリリスに復讐を誓いながら死んだ……と思ったらなんと翌朝、義弟リチャードの婚約者・シャーロットになって目が覚めた! 入り込んでしまったシャーロットの記憶を頼りに、オフィーリアは奔走する。 義弟リチャードを助けるため、そして憎き二人に復讐するため、オフィーリアが周囲の人々を巻き込んで奮闘する物語です。 ※前半はシリアス展開で残虐なシーンが出てきます。 後半はギャグテイストを含みます。 R15はその保険です。苦手な方はお気をつけて下さい。

妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜

橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。 もしかして……また俺かよ!! 人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!! さいっっっっこうの人生送ってやるよ!! ────── こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。 先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!

『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……

Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。 優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。 そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。 しかしこの時は誰も予想していなかった。 この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを…… アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを…… ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。

婚約破棄して、めでたしめでたしの先の話

ファンタジー
(2021/5/24 一話分抜けていたため修正いたしました) 昔々、あるところに王子様がいました。 王子様は、平民の女の子を好きになりました。平民の女の子も、王子様を好きになりました。 二人には身分の差があります。ですが、愛の前ではささいな問題でした。 王子様は、とうとう女の子をいじめる婚約者を追放し、女の子と結ばれました。 そしてお城で、二人仲良く暮らすのでした。 めでたしめでたし。 そして、二人の間に子供ができましたが、その子供は追い出されました。

使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。

ある月の晩に  何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?

ポチ
ファンタジー
ある月の晩に、私は愛犬と共に異世界へ飛ばされてしまった それは、何百年かに一度起こる天体の現象だった。その日はテレビでも、あの歴史上の人物も眺めたのでしょうか・・・ なんて、取り上げられた事象だった ソレハ、私も眺めねば!何て事を言いつつ愛犬とぼんやりと眺めてスマホで写真を撮っていた・・・

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

俺を追い出した元パーティメンバーが速攻で全滅したんですけど、これは魔王の仕業ですか?

ほーとどっぐ
ファンタジー
王国最強のS級冒険者パーティに所属していたユウマ・カザキリ。しかし、弓使いの彼は他のパーティメンバーのような強力な攻撃スキルは持っていなかった。罠の解除といったアイテムで代用可能な地味スキルばかりの彼は、ついに戦力外通告を受けて追い出されてしまう。 が、彼を追い出したせいでパーティはたった1日で全滅してしまったのだった。 元とはいえパーティメンバーの強さをよく知っているユウマは、迷宮内で魔王が復活したのではと勘違いしてしまう。幸か不幸か。なんと封印された魔王も時を同じくして復活してしまい、話はどんどんと拗れていく。 「やはり、魔王の仕業だったのか!」 「いや、身に覚えがないんだが?」

処理中です...