64 / 173
幕間 束の間の休息(2)
しおりを挟む
「…………。……………………。…………………………」
見間違いじゃない。やっぱりティルの額には、脂汗が浮かんでる。
私がお弁当を出しただけなのに。この人に何が起きてるの……?
「ティル、どうしたの? まさか『カーレルの森』みたいに、違和感があるの?」
「いや、そうじゃない。些末事だ。この草原に危険はなく、安全だ」
「そう? なら、いいわ。特製のお弁当をどうぞ」
些末事だそうなので気にせず、お弁当をパカっと開ける。
本日のメニューは、おにぎり、卵焼き、ポテトサラダ、ナルセイ名物エビと昆布の煮物。そして最後は、私の創作料理となっておりますっ。
「ミファ。ミファ。左隅に、不可思議な料理があるのだが……。これはどういった料理なんだ?」
「豚肉と玉ねぎと人参とニンニクと苺の肉団子を、苺とケチャップを合わせたソースで絡めたものよ。粗めに潰した苺と完全に潰した苺がフルーティーにしてくれる、私のオリジナルメニューよっ」
最近は冷遇されてて作る機会がなかった、ミファの創作料理。久しぶりでも腕は落ちてなくって、我ながら100点満点の仕上がりになってます。
「味見もして、バッチリと確認済みよ。ついつい三つも食べちゃった」
「そ、そうなのか。…………ミファは決して味音痴ではないが、許容範囲が異様に広いのが難点なんだよな…………」
「??? 何か言った?」
「いいや、これも些末事だ。……ありがたく食べさせてもらう」
ティルは小さく首を振ってお箸を手に取り、ぱくり。まずはナルセイ名物の、エビと昆布の煮物を食べた。
「………………相変わらず、ミファの料理は美味しい。あっさりとしていながらもコクがちゃんとあって、二日前に食堂で食べたものに勝るとも劣らない味だ」
「あははっ、褒めてくれてどうもです。そっちの卵は甘めにしてみましたが、いかがでしょうか?」
「………………こちらは優しい甘さがふわりと広がり、焼き加減も絶妙だな。ポテトサラダもマヨネーズに…………これはほんのりマスタードが混ぜ込まれていて、その刺激がいいアクセントになっている。おにぎりも米の硬さが丁度よくなるよう握られていて、本当に美味しいよ」
よっっしぃっ! ここまでは上々の出来。あとは最後の、創作料理ね。
「………………………」
「??? ティル? なんで固まってるの?」
「みたび、些末事だ。……いただきます」
ティルは慎重に肉団子を挟んで、ぱくり。もぐもぐもぐと口を動かして…………ごくん。特製肉団子を飲み込んだ。
ドキドキドキドキ。どう、かしら?
「……………………中にある苺が豚肉の臭みを上手く消していて、食べやすい。外のソースも苺がトマトの酸味を程よく和らげていて、マイルドで肉団子によく合っている。これも美味しいよ」
「よーっしっ、全て『美味しかった』をいただきましたっ。これで安心して私もお昼を食べられるわ」
小さくガッツポーズをした私は、バスケットにある卵サンドをパクパクっと食べる。
自信があってもやっぱり、どんな反応をしてもらえるかが不安。それを見るまでは落ち着かないのよね。
「ふ~、よかったぁ。ティルもサンドイッチ、食べる?」
「ああ、一ついただこう。…………ミファ、ありがとうな。味はともかく、今回も――前回同様に、気持ちが込められていた。おかげで幸せな時間を過ごせたよ」
「? ティルは、ボソボソ何言ってるの? また些末事?」
「いいや。これは、とても大事な独り言だ。大事な、ね」
ティルは小さく笑い、よく分からないけど内緒みたいなので、私は引き続き卵サンドに舌鼓を打つ。そしてその後は30分くらい2人でまったりして、私達は再び第2の国・メイクスを目指したのでした。
見間違いじゃない。やっぱりティルの額には、脂汗が浮かんでる。
私がお弁当を出しただけなのに。この人に何が起きてるの……?
「ティル、どうしたの? まさか『カーレルの森』みたいに、違和感があるの?」
「いや、そうじゃない。些末事だ。この草原に危険はなく、安全だ」
「そう? なら、いいわ。特製のお弁当をどうぞ」
些末事だそうなので気にせず、お弁当をパカっと開ける。
本日のメニューは、おにぎり、卵焼き、ポテトサラダ、ナルセイ名物エビと昆布の煮物。そして最後は、私の創作料理となっておりますっ。
「ミファ。ミファ。左隅に、不可思議な料理があるのだが……。これはどういった料理なんだ?」
「豚肉と玉ねぎと人参とニンニクと苺の肉団子を、苺とケチャップを合わせたソースで絡めたものよ。粗めに潰した苺と完全に潰した苺がフルーティーにしてくれる、私のオリジナルメニューよっ」
最近は冷遇されてて作る機会がなかった、ミファの創作料理。久しぶりでも腕は落ちてなくって、我ながら100点満点の仕上がりになってます。
「味見もして、バッチリと確認済みよ。ついつい三つも食べちゃった」
「そ、そうなのか。…………ミファは決して味音痴ではないが、許容範囲が異様に広いのが難点なんだよな…………」
「??? 何か言った?」
「いいや、これも些末事だ。……ありがたく食べさせてもらう」
ティルは小さく首を振ってお箸を手に取り、ぱくり。まずはナルセイ名物の、エビと昆布の煮物を食べた。
「………………相変わらず、ミファの料理は美味しい。あっさりとしていながらもコクがちゃんとあって、二日前に食堂で食べたものに勝るとも劣らない味だ」
「あははっ、褒めてくれてどうもです。そっちの卵は甘めにしてみましたが、いかがでしょうか?」
「………………こちらは優しい甘さがふわりと広がり、焼き加減も絶妙だな。ポテトサラダもマヨネーズに…………これはほんのりマスタードが混ぜ込まれていて、その刺激がいいアクセントになっている。おにぎりも米の硬さが丁度よくなるよう握られていて、本当に美味しいよ」
よっっしぃっ! ここまでは上々の出来。あとは最後の、創作料理ね。
「………………………」
「??? ティル? なんで固まってるの?」
「みたび、些末事だ。……いただきます」
ティルは慎重に肉団子を挟んで、ぱくり。もぐもぐもぐと口を動かして…………ごくん。特製肉団子を飲み込んだ。
ドキドキドキドキ。どう、かしら?
「……………………中にある苺が豚肉の臭みを上手く消していて、食べやすい。外のソースも苺がトマトの酸味を程よく和らげていて、マイルドで肉団子によく合っている。これも美味しいよ」
「よーっしっ、全て『美味しかった』をいただきましたっ。これで安心して私もお昼を食べられるわ」
小さくガッツポーズをした私は、バスケットにある卵サンドをパクパクっと食べる。
自信があってもやっぱり、どんな反応をしてもらえるかが不安。それを見るまでは落ち着かないのよね。
「ふ~、よかったぁ。ティルもサンドイッチ、食べる?」
「ああ、一ついただこう。…………ミファ、ありがとうな。味はともかく、今回も――前回同様に、気持ちが込められていた。おかげで幸せな時間を過ごせたよ」
「? ティルは、ボソボソ何言ってるの? また些末事?」
「いいや。これは、とても大事な独り言だ。大事な、ね」
ティルは小さく笑い、よく分からないけど内緒みたいなので、私は引き続き卵サンドに舌鼓を打つ。そしてその後は30分くらい2人でまったりして、私達は再び第2の国・メイクスを目指したのでした。
0
お気に入りに追加
1,889
あなたにおすすめの小説
【完結】一緒なら最強★ ~夫に殺された王太子妃は、姿を変えて暗躍します~
竜妃杏
恋愛
王太子妃のオフィーリアは、王太子の子を身に宿して幸せに暮らしていた。
だがある日、聖女リリスに夫を奪われれ、自分に不貞の濡れ衣を着せられて殺されてしまう。
夫とリリスに復讐を誓いながら死んだ……と思ったらなんと翌朝、義弟リチャードの婚約者・シャーロットになって目が覚めた!
入り込んでしまったシャーロットの記憶を頼りに、オフィーリアは奔走する。
義弟リチャードを助けるため、そして憎き二人に復讐するため、オフィーリアが周囲の人々を巻き込んで奮闘する物語です。
※前半はシリアス展開で残虐なシーンが出てきます。
後半はギャグテイストを含みます。
R15はその保険です。苦手な方はお気をつけて下さい。
妻を寝取ったパーティーメンバーに刺殺された俺はもう死にたくない。〜二度目の俺。最悪から最高の人生へ〜
橋本 悠
ファンタジー
両親の死、いじめ、NTRなどありとあらゆる`最悪`を経験し、終いにはパーティーメンバーに刺殺された俺は、異世界転生に成功した……と思いきや。
もしかして……また俺かよ!!
人生の最悪を賭けた二周目の俺が始まる……ってもうあんな最悪見たくない!!!
さいっっっっこうの人生送ってやるよ!!
──────
こちらの作品はカクヨム様でも連載させていただいております。
先取り更新はカクヨム様でございます。是非こちらもよろしくお願いします!
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
婚約破棄して、めでたしめでたしの先の話
を
ファンタジー
(2021/5/24 一話分抜けていたため修正いたしました)
昔々、あるところに王子様がいました。
王子様は、平民の女の子を好きになりました。平民の女の子も、王子様を好きになりました。
二人には身分の差があります。ですが、愛の前ではささいな問題でした。
王子様は、とうとう女の子をいじめる婚約者を追放し、女の子と結ばれました。
そしてお城で、二人仲良く暮らすのでした。
めでたしめでたし。
そして、二人の間に子供ができましたが、その子供は追い出されました。
使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。気長に待っててください。月2くらいで更新したいとは思ってます。
ある月の晩に 何百年ぶりかの天体の不思議。写真にも残そうと・・あれ?ココはどこ?何が起こった?
ポチ
ファンタジー
ある月の晩に、私は愛犬と共に異世界へ飛ばされてしまった
それは、何百年かに一度起こる天体の現象だった。その日はテレビでも、あの歴史上の人物も眺めたのでしょうか・・・
なんて、取り上げられた事象だった
ソレハ、私も眺めねば!何て事を言いつつ愛犬とぼんやりと眺めてスマホで写真を撮っていた・・・
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺を追い出した元パーティメンバーが速攻で全滅したんですけど、これは魔王の仕業ですか?
ほーとどっぐ
ファンタジー
王国最強のS級冒険者パーティに所属していたユウマ・カザキリ。しかし、弓使いの彼は他のパーティメンバーのような強力な攻撃スキルは持っていなかった。罠の解除といったアイテムで代用可能な地味スキルばかりの彼は、ついに戦力外通告を受けて追い出されてしまう。
が、彼を追い出したせいでパーティはたった1日で全滅してしまったのだった。
元とはいえパーティメンバーの強さをよく知っているユウマは、迷宮内で魔王が復活したのではと勘違いしてしまう。幸か不幸か。なんと封印された魔王も時を同じくして復活してしまい、話はどんどんと拗れていく。
「やはり、魔王の仕業だったのか!」
「いや、身に覚えがないんだが?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる