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幕間 最初のざまぁ(2)

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『第一王女の結婚はなかったことにさせていただく』――。
 その言葉を聞いた瞬間、ノルスの態度が180度変化する。
 呆れと苛立ちが半分半分だった顔は、あっという間に苛立ちが100%に。ノルスは「どういうことだっ!?」と声を張り上げ、玉座から立ち上がった。

「ルルネ・アーティスは、半年後に僕のものとなるはずだ! なぜそうなる!!」
「アーティス家の事情、とございます……。なにやら、かなりプライベートな問題のようでして……。詳しい説明はありませんでした……」


 すでにアーティス家は支配力を失っており、現在王族は皆が皆、能力を治安維持に使うよう指示されている。更に、なにより。ルルネ・アーティスは、今回の漁場襲撃が――自分達が実権を失う原因が、ノルスにあると知ってしまった。そのためルルネは勇者を恨むようになってしまい、逆に婚約を破棄されていたのだ。


 愚者と愚者の間で発生した、醜い理由での醜い行動。それが結果的に、投げたブーメランが自分に戻ってきたようになっていたのだった。


「破棄な上に、伝言鳩――まともな文章ですらない。アーティス家の連中は……っ。勇者様の顔に、泥を塗るつもりか……っ? 僕の、偉大なる勇者様の加護が要らないと言うのかっっ?」
「ど、どうやらそのようです……。要約しますと、『自分の身は自分で守る。勇者とはむしろ距離を置きたい』とありましたから……」

 これに関しては、裏のトップであるレノン・アルジェの方針。
 勇者と繋がりがあると、今後も勘違いをした魔物に狙われかねない。そこでナルセイは今後、勇者ノルスと一切関わらない道を選んだったのだった。

「な、なんてバカな奴らなんだ……。急にどうした……? 気でも狂ったのか……?」
「自分にも、皆目見当がつきません……。ただちに使者を送り、踏み込んだ話を――」
「やめろ! それではまるでこの僕が格下みたいじゃないか!!」

 矢継ぎ早に、怒声が響き渡る。

「あちらがそういうつもりなら、ルルネ・アーティスはもう不要だ! あんな女は要らない! そもそも顔は中の上程度で、あのレベルならごまんといるからな!!」
「その通りですわ、ノルス様。それにノルス様にはあたしがいますし、愚妹が野垂れ死にした土地の女なんて来たら汚れますわ」
「……ああ、そうだな。どうやらあの国とそこに住む人間共は、ミファ達の怨念でイカれてしまったようだ。アイツらは死後も面倒をかけてくれる」

 ノルスは自分を落ち着かせるように悪態を繰り返し、しばしグチグチ暴言を吐いたのちゆっくりと玉座に座りなおす。
 けれど。
 プライドが無駄に高い勇者の怒りは収まらず――。イライラはその後、数日間も続いたのであった。
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