62 / 173
幕間 最初のざまぁ(2)
しおりを挟む
『第一王女の結婚はなかったことにさせていただく』――。
その言葉を聞いた瞬間、ノルスの態度が180度変化する。
呆れと苛立ちが半分半分だった顔は、あっという間に苛立ちが100%に。ノルスは「どういうことだっ!?」と声を張り上げ、玉座から立ち上がった。
「ルルネ・アーティスは、半年後に僕のものとなるはずだ! なぜそうなる!!」
「アーティス家の事情、とございます……。なにやら、かなりプライベートな問題のようでして……。詳しい説明はありませんでした……」
すでにアーティス家は支配力を失っており、現在王族は皆が皆、能力を治安維持に使うよう指示されている。更に、なにより。ルルネ・アーティスは、今回の漁場襲撃が――自分達が実権を失う原因が、ノルスにあると知ってしまった。そのためルルネは勇者を恨むようになってしまい、逆に婚約を破棄されていたのだ。
愚者と愚者の間で発生した、醜い理由での醜い行動。それが結果的に、投げたブーメランが自分に戻ってきたようになっていたのだった。
「破棄な上に、伝言鳩――まともな文章ですらない。アーティス家の連中は……っ。勇者様の顔に、泥を塗るつもりか……っ? 僕の、偉大なる勇者様の加護が要らないと言うのかっっ?」
「ど、どうやらそのようです……。要約しますと、『自分の身は自分で守る。勇者とはむしろ距離を置きたい』とありましたから……」
これに関しては、裏のトップであるレノン・アルジェの方針。
勇者と繋がりがあると、今後も勘違いをした魔物に狙われかねない。そこでナルセイは今後、勇者ノルスと一切関わらない道を選んだったのだった。
「な、なんてバカな奴らなんだ……。急にどうした……? 気でも狂ったのか……?」
「自分にも、皆目見当がつきません……。ただちに使者を送り、踏み込んだ話を――」
「やめろ! それではまるでこの僕が格下みたいじゃないか!!」
矢継ぎ早に、怒声が響き渡る。
「あちらがそういうつもりなら、ルルネ・アーティスはもう不要だ! あんな女は要らない! そもそも顔は中の上程度で、あのレベルならごまんといるからな!!」
「その通りですわ、ノルス様。それにノルス様にはあたしがいますし、愚妹が野垂れ死にした土地の女なんて来たら汚れますわ」
「……ああ、そうだな。どうやらあの国とそこに住む人間共は、ミファ達の怨念でイカれてしまったようだ。アイツらは死後も面倒をかけてくれる」
ノルスは自分を落ち着かせるように悪態を繰り返し、しばしグチグチ暴言を吐いたのちゆっくりと玉座に座りなおす。
けれど。
プライドが無駄に高い勇者の怒りは収まらず――。イライラはその後、数日間も続いたのであった。
その言葉を聞いた瞬間、ノルスの態度が180度変化する。
呆れと苛立ちが半分半分だった顔は、あっという間に苛立ちが100%に。ノルスは「どういうことだっ!?」と声を張り上げ、玉座から立ち上がった。
「ルルネ・アーティスは、半年後に僕のものとなるはずだ! なぜそうなる!!」
「アーティス家の事情、とございます……。なにやら、かなりプライベートな問題のようでして……。詳しい説明はありませんでした……」
すでにアーティス家は支配力を失っており、現在王族は皆が皆、能力を治安維持に使うよう指示されている。更に、なにより。ルルネ・アーティスは、今回の漁場襲撃が――自分達が実権を失う原因が、ノルスにあると知ってしまった。そのためルルネは勇者を恨むようになってしまい、逆に婚約を破棄されていたのだ。
愚者と愚者の間で発生した、醜い理由での醜い行動。それが結果的に、投げたブーメランが自分に戻ってきたようになっていたのだった。
「破棄な上に、伝言鳩――まともな文章ですらない。アーティス家の連中は……っ。勇者様の顔に、泥を塗るつもりか……っ? 僕の、偉大なる勇者様の加護が要らないと言うのかっっ?」
「ど、どうやらそのようです……。要約しますと、『自分の身は自分で守る。勇者とはむしろ距離を置きたい』とありましたから……」
これに関しては、裏のトップであるレノン・アルジェの方針。
勇者と繋がりがあると、今後も勘違いをした魔物に狙われかねない。そこでナルセイは今後、勇者ノルスと一切関わらない道を選んだったのだった。
「な、なんてバカな奴らなんだ……。急にどうした……? 気でも狂ったのか……?」
「自分にも、皆目見当がつきません……。ただちに使者を送り、踏み込んだ話を――」
「やめろ! それではまるでこの僕が格下みたいじゃないか!!」
矢継ぎ早に、怒声が響き渡る。
「あちらがそういうつもりなら、ルルネ・アーティスはもう不要だ! あんな女は要らない! そもそも顔は中の上程度で、あのレベルならごまんといるからな!!」
「その通りですわ、ノルス様。それにノルス様にはあたしがいますし、愚妹が野垂れ死にした土地の女なんて来たら汚れますわ」
「……ああ、そうだな。どうやらあの国とそこに住む人間共は、ミファ達の怨念でイカれてしまったようだ。アイツらは死後も面倒をかけてくれる」
ノルスは自分を落ち着かせるように悪態を繰り返し、しばしグチグチ暴言を吐いたのちゆっくりと玉座に座りなおす。
けれど。
プライドが無駄に高い勇者の怒りは収まらず――。イライラはその後、数日間も続いたのであった。
0
お気に入りに追加
1,890
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
悪役令嬢の騎士
コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。
異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。
少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。
そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。
少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが
天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。
だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。
その後、自分の異常な体質に気づき...!?
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
お姉さまに挑むなんて、あなた正気でいらっしゃるの?
中崎実
ファンタジー
若き伯爵家当主リオネーラには、異母妹が二人いる。
殊にかわいがっている末妹で気鋭の若手画家・リファと、市中で生きるしっかり者のサーラだ。
入り婿だったのに母を裏切って庶子を作った父や、母の死後に父の正妻に収まった継母とは仲良くする気もないが、妹たちとはうまくやっている。
そんな日々の中、暗愚な父が連れてきた自称「婚約者」が突然、『婚約破棄』を申し出てきたが……
※第2章の投稿開始後にタイトル変更の予定です
※カクヨムにも同タイトル作品を掲載しています(アルファポリスでの公開は数時間~半日ほど早めです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる