60 / 173
エピローグ
しおりを挟む
「「「「「ミファ・ソーラっ! ミファ・ソーラっっ!!」」」」」
「「「「「ティル・レイルっ! ティル・レイルっっ!!」」」」」
巨大魔物を討伐した私達を待っていたのは、街で暮らす人全員からの祝福だった。
もう安全と報告するや住民が群がってきて、万歳やら胴上げやらで大盛り上がり。そんな騒ぎは1日丸々続いて、いつの間にか私達は『ノールの名誉冒険者』となって表彰されたりもした。
でも――。ビックリは、まだ終わらない。
街に出稼ぎに来ている人達が、実家にいる家族に今回の話をする。その話を今度は家族が知り合いに伝えて、その知り合いが更にその知り合いに伝える。
そうやって『ミファ・ソーラとティル・レイルの活躍』は瞬く間にナルセイ国内の全土に広がり、私達2人は絶大な支持を得てしまったのだ。
『ソーラさんならサービスしないとな。ジュースを飲んでってくれ!』
『レイルおにーさん、あのね、クッキーやいたの。たべて~』
そのためちょっと外を歩くとすぐに声をかけられて、老若男女のご厚意の嵐が吹き荒れる。
こんな生活はとても楽しいし、幸せ。なんだけど、私達にはノルスへの復讐という目的がある。それに魔王のゲーランから、お呼ばれしちゃってるからね。
あれから1週間後――魔物の第3波はないと判断した今日。私達は隣国・メイクスへと旅立つことにした。
「ソーラさん、レイルさん。お世話になりました」
時間は早朝。場所はギルドの前。私達は大勢の人に見送られていて、一同を代表してアルジェさんが頭を下げてくれた。
「お二人がいなれば、この街に今立つことはできていません」(それは勿論この国も同じで)「本当に、ありがとうございました」
目の前にいる彼は私達にしか聞こえない台詞を挟み、もう一度ペコリ。今度は大勢の人達――街の住人と近くの村の住民も揃って、感謝を示してくれた。
実はあの魔物の大移動のせいで村が壊滅状態になっていて、私達はそれを救うために巨大魔物の魔石を寄付した。だからこうして、村の人にもとっても感謝されているんだよね。
もちろんこれには他意はなくって、100%善意。ぶっちゃけると『あれが手元にあれば……』って考えも過ったけど、今はこれが正解だったと思う。
「私達はなんだかんだで、自分達の都合で動いただけです。何度も言ってますが、お礼は結構ですよ」
「彼女は何度も正義感を発揮していましたが、基本的にはその通りです。こちらも何かと頂いておりますので、お相子ですよ」
この国で私達は、かなり支持されるようになったもんね。一つ地盤をしっかり固められたから、こっちもバッチリもらってる。
……ところで、ティル……。唐突にさらっと褒めるのは、やめてよね……。恥ずかしいでしょが。
(先日お二人は、魔王や大魔王を倒すと仰っていましたね。もしや貴方がたは――ああいえ。恩人様に対する詮索は、無粋ですね)
声のボリュームを落としていたアルジェさんは、短く首を振る。
やはりこの人は、60歳間近の外見詐欺気味紳士さん。深入りしないでくれた。
(お二人の目的は見当がつきませんが、僕、そしてこの街とこの国に暮らす人々全てが、様々な意味で救われています。何かありましたら必ずお力になりますので、遠慮なく仰ってくださいね)
(感謝します。我々はまだまだ若輩故、その際はよろしくお願いいたします)
(私は何度もドジを踏んでまして、高確率でお願いしちゃうかもしれません。その時はお願いします)
私達3人はこっそりと目礼をして、いよいよ出発の時。前国王(現表向きの国王)が、街を救ってくれた感謝の気持ちとして――媚を売ろうとして強引に押し付けてきた馬車に乗り、ティルの運転で馬車が動き出した。
「「「「「ミファ・ソーラっ! ミファ・ソーラっっ!!」」」」」
「「「「「ティル・レイルっ! ティル・レイルっっ!!」」」」」
「メイクスに着けば、いつどこで魔王が仕掛けてくるか分かりません。お気をつけて」
「はいっ。みなさん、アルジェさんっ。どうもありがとうございましたっ!」
ティルの隣にいる私は少し身を乗り出し、お互い相手の姿が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。
こうして私達の、最初の国での物語はお仕舞い。期待と不安、そしてノルスへの復讐心(たっぷり)を胸に、私達は次の舞台・隣国メイクスを目指したのでした。
「「「「「ティル・レイルっ! ティル・レイルっっ!!」」」」」
巨大魔物を討伐した私達を待っていたのは、街で暮らす人全員からの祝福だった。
もう安全と報告するや住民が群がってきて、万歳やら胴上げやらで大盛り上がり。そんな騒ぎは1日丸々続いて、いつの間にか私達は『ノールの名誉冒険者』となって表彰されたりもした。
でも――。ビックリは、まだ終わらない。
街に出稼ぎに来ている人達が、実家にいる家族に今回の話をする。その話を今度は家族が知り合いに伝えて、その知り合いが更にその知り合いに伝える。
そうやって『ミファ・ソーラとティル・レイルの活躍』は瞬く間にナルセイ国内の全土に広がり、私達2人は絶大な支持を得てしまったのだ。
『ソーラさんならサービスしないとな。ジュースを飲んでってくれ!』
『レイルおにーさん、あのね、クッキーやいたの。たべて~』
そのためちょっと外を歩くとすぐに声をかけられて、老若男女のご厚意の嵐が吹き荒れる。
こんな生活はとても楽しいし、幸せ。なんだけど、私達にはノルスへの復讐という目的がある。それに魔王のゲーランから、お呼ばれしちゃってるからね。
あれから1週間後――魔物の第3波はないと判断した今日。私達は隣国・メイクスへと旅立つことにした。
「ソーラさん、レイルさん。お世話になりました」
時間は早朝。場所はギルドの前。私達は大勢の人に見送られていて、一同を代表してアルジェさんが頭を下げてくれた。
「お二人がいなれば、この街に今立つことはできていません」(それは勿論この国も同じで)「本当に、ありがとうございました」
目の前にいる彼は私達にしか聞こえない台詞を挟み、もう一度ペコリ。今度は大勢の人達――街の住人と近くの村の住民も揃って、感謝を示してくれた。
実はあの魔物の大移動のせいで村が壊滅状態になっていて、私達はそれを救うために巨大魔物の魔石を寄付した。だからこうして、村の人にもとっても感謝されているんだよね。
もちろんこれには他意はなくって、100%善意。ぶっちゃけると『あれが手元にあれば……』って考えも過ったけど、今はこれが正解だったと思う。
「私達はなんだかんだで、自分達の都合で動いただけです。何度も言ってますが、お礼は結構ですよ」
「彼女は何度も正義感を発揮していましたが、基本的にはその通りです。こちらも何かと頂いておりますので、お相子ですよ」
この国で私達は、かなり支持されるようになったもんね。一つ地盤をしっかり固められたから、こっちもバッチリもらってる。
……ところで、ティル……。唐突にさらっと褒めるのは、やめてよね……。恥ずかしいでしょが。
(先日お二人は、魔王や大魔王を倒すと仰っていましたね。もしや貴方がたは――ああいえ。恩人様に対する詮索は、無粋ですね)
声のボリュームを落としていたアルジェさんは、短く首を振る。
やはりこの人は、60歳間近の外見詐欺気味紳士さん。深入りしないでくれた。
(お二人の目的は見当がつきませんが、僕、そしてこの街とこの国に暮らす人々全てが、様々な意味で救われています。何かありましたら必ずお力になりますので、遠慮なく仰ってくださいね)
(感謝します。我々はまだまだ若輩故、その際はよろしくお願いいたします)
(私は何度もドジを踏んでまして、高確率でお願いしちゃうかもしれません。その時はお願いします)
私達3人はこっそりと目礼をして、いよいよ出発の時。前国王(現表向きの国王)が、街を救ってくれた感謝の気持ちとして――媚を売ろうとして強引に押し付けてきた馬車に乗り、ティルの運転で馬車が動き出した。
「「「「「ミファ・ソーラっ! ミファ・ソーラっっ!!」」」」」
「「「「「ティル・レイルっ! ティル・レイルっっ!!」」」」」
「メイクスに着けば、いつどこで魔王が仕掛けてくるか分かりません。お気をつけて」
「はいっ。みなさん、アルジェさんっ。どうもありがとうございましたっ!」
ティルの隣にいる私は少し身を乗り出し、お互い相手の姿が見えなくなるまで手を振り続けたのだった。
こうして私達の、最初の国での物語はお仕舞い。期待と不安、そしてノルスへの復讐心(たっぷり)を胸に、私達は次の舞台・隣国メイクスを目指したのでした。
0
お気に入りに追加
1,889
あなたにおすすめの小説
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
侯爵の孫娘は自身の正体を知らない
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
青い髪の少女の子を貴族が引き取りに来た。どうやら孫を探していた様子。だが候補は二人。一人は葡萄(えび)色の瞳のアイデラ、もう一人は青い瞳のイヴェット。
決め手になったのは、イヴェットが首から下げていたペンダントだった。けどそれ、さっき私が貸したら私のよ!
アイデラは前世の記憶を持っていたが、この世界が『女神がほほ笑んだのは』という小説だと気が付いたのは、この時だったのだ。
慌てて自分のだと主張するも、イヴェットが選ばれエインズワイス侯爵家へ引き取られて行く。そして、アイデラはアーロイズ子爵家に預けられ酷い扱いを受けるのだった――。
漆黒のブリュンヒルデ
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
主神オーディンの娘にしてヴァルキリアの主将! 堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士!
我が名はブリュンヒルデなるぞ!
漆黒の姫騎士の蹉跌と復活の日々を異世界・東京で紡いでいく。
作者渾身の新連載!
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
運び屋『兎』の配送履歴
花里 悠太
ファンタジー
安心、確実、お値段ちょっとお高め。運び屋『兎』に任せてみませんか?
兎を連れた少女が色々なものを配達するほのぼの物語です。
他にも出てくる相棒の召喚獣たちと共に配達してまわります。
兎をもふりたい。
カバで爆走したい。
梟とおしゃべりしたい。
亀と日向ぼっこしたい。
そんな方は是非ご一読を。
転生もチートもロマンスもないお仕事ファンタジーです。
ーーーーーーーーーーー
とある街の商業ギルド。
その一室にユウヒという名の少女が住んでいる。
彼女は召喚士であり、運び屋だ。
彼女がこなす運びは、普通の運び屋とはちょっと違う。
時には、魔物の中に取り残された人を運びにいき。
時には、誰にも見つからないようにこっそりと手紙を届けにいく。
様々な能力を持つ召喚獣を相棒として、通常の運び屋では受けられないような特殊な配送を仕事として請け負っているのだ。
彼女がいつも身につけている前かけ鞄には、プスプスと鼻息をたてる兎が一匹。
運び屋の仕事を受けるときも、仕事で何かを運んでいる時も。
いつでも兎と一緒に仕事をする様から、彼女はこう呼ばれていた。
運び屋『兎』
彼女に仕事を頼みたい時は、商業ギルドの受付で
「『兎』に荷物を届けてほしい」
と声をかければ兎と一緒に彼女が仕事を受けてくれる。
召喚した相棒と共に、運べるものなら、手紙でも、荷物でも、何でも。
仕事は確実にこなすが少し手荒め、お値段はかなりお高め。
ある時はカバで街道から山の中へと爆走。
ある時は梟と夜に紛れて貴族の屋敷に潜入。
ある時は亀にまたがり深海へと潜航。
仕事の依頼を通して色々なものを配送するユウヒ。
様々な出会いや、出来事に遭遇して成長していく異世界ファンタジー。
カバに轢かれたくなければ道を開けてください。
その科学は魔法をも凌駕する。
神部 大
ファンタジー
科学が進みすぎた日本の荒廃。
そんな中最後の希望として作られた時空転移プログラムを用い歴史を変える為に一人敵陣に乗り込んだフォースハッカーの戦闘要員、真。
だが転移した先は過去ではなく、とても地球上とは思えない魔物や魔法が蔓延る世界だった。
返る術もないまま真が選んだ道は、科学の力を持ちながらその世界でただ生き、死ぬ事。
持ちうる全ての超科学技術を駆使してそんな世界で魔法を凌駕しろ。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる