54 / 173
8話(1)
しおりを挟む
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
動く城――。そんな例えが適切になっちゃうくらい、大きな大きな存在。
四足歩行の、鱗を持つ緑色の化け物――トカゲに似た巨大な魔物が、のっそりのっそりと歩いてきている。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
一歩足を降ろすたびに大地は揺れ、咆哮は鼓膜を激しく震わせる。
アイツがなすこと全てが、規格外。子供の頃に夢で見た、タチの悪いお話のような景色がそこにある。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「……興奮状態にもかかわらず、そのスピード。どうやらヤツは、この速さが限界のようだ」
「だったら、不幸中の幸いね。あのデカさで滅茶苦茶俊敏なら、流石にどうにもならなかったもの」
猫のような動きをみせる、三十メートル超の巨大魔物。こんなのがいたら、街も私達も終わってた。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「ようやく俺達に気付き、殺気を剥き出しにしてきたな。ならばこちらも、挨拶をするとしよう」
ティルが前方に杖を突き出し、その先端が青く光って氷の魔術が飛び出す。直径2メートルくらいある大きなツララは、ヤツの左前脚へと飛んで行って――
「ギギャ……?」
しっかり命中したものの、アイツは無傷。『今、何かぶつかったか?』とでも言いたげな、薄い反応を見せただけだった。
「あの規模の魔術だと、他の魔物なら串刺しになってるのに……。防御力が、高いみたいね」
「ああ。異様に、高いらしい。ミファに魔力を高めてもらった状態で撃っても、鱗に傷一つついていないからな」
ほんの僅かな傷跡さえも、ない。魔王ゲーランが言っていた『もう一つの愉快な力』は、コレ。バカみたいな防御力のようね。
「…………威力のある光属性の魔法をぶつけても、結果は同じか。十中八九、ミファが思っている通りのようだな」
「そうね。だけど、アイツは甘いわ。ここには聖剣並みの剣があるんだからね」
私は腰から剣を抜き、『祝福』を施して強化する。
これでこの武器は、様々な逸話を持つ利器になった。あの鱗も聖剣が斬り伏せてきたものに比べたら柔らかくて、ちゃんと傷つけられるのよね。
「脚を斬って姿勢を崩し、地面に転がった胴体をぶしゅり。こんな感じかしら」
「そう、なるな。だが相手も攻撃手段を持っていて、近づけば激しく抵抗してくるはずだ。……まずは俺が偵察してくる」
ティルは私を制するように左手を横に伸ばし、颯爽と前に飛び出した。
動く城――。そんな例えが適切になっちゃうくらい、大きな大きな存在。
四足歩行の、鱗を持つ緑色の化け物――トカゲに似た巨大な魔物が、のっそりのっそりと歩いてきている。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
一歩足を降ろすたびに大地は揺れ、咆哮は鼓膜を激しく震わせる。
アイツがなすこと全てが、規格外。子供の頃に夢で見た、タチの悪いお話のような景色がそこにある。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「……興奮状態にもかかわらず、そのスピード。どうやらヤツは、この速さが限界のようだ」
「だったら、不幸中の幸いね。あのデカさで滅茶苦茶俊敏なら、流石にどうにもならなかったもの」
猫のような動きをみせる、三十メートル超の巨大魔物。こんなのがいたら、街も私達も終わってた。
「ギギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
「ようやく俺達に気付き、殺気を剥き出しにしてきたな。ならばこちらも、挨拶をするとしよう」
ティルが前方に杖を突き出し、その先端が青く光って氷の魔術が飛び出す。直径2メートルくらいある大きなツララは、ヤツの左前脚へと飛んで行って――
「ギギャ……?」
しっかり命中したものの、アイツは無傷。『今、何かぶつかったか?』とでも言いたげな、薄い反応を見せただけだった。
「あの規模の魔術だと、他の魔物なら串刺しになってるのに……。防御力が、高いみたいね」
「ああ。異様に、高いらしい。ミファに魔力を高めてもらった状態で撃っても、鱗に傷一つついていないからな」
ほんの僅かな傷跡さえも、ない。魔王ゲーランが言っていた『もう一つの愉快な力』は、コレ。バカみたいな防御力のようね。
「…………威力のある光属性の魔法をぶつけても、結果は同じか。十中八九、ミファが思っている通りのようだな」
「そうね。だけど、アイツは甘いわ。ここには聖剣並みの剣があるんだからね」
私は腰から剣を抜き、『祝福』を施して強化する。
これでこの武器は、様々な逸話を持つ利器になった。あの鱗も聖剣が斬り伏せてきたものに比べたら柔らかくて、ちゃんと傷つけられるのよね。
「脚を斬って姿勢を崩し、地面に転がった胴体をぶしゅり。こんな感じかしら」
「そう、なるな。だが相手も攻撃手段を持っていて、近づけば激しく抵抗してくるはずだ。……まずは俺が偵察してくる」
ティルは私を制するように左手を横に伸ばし、颯爽と前に飛び出した。
0
お気に入りに追加
1,889
あなたにおすすめの小説
スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
外れスキル【観察記録】のせいで幼馴染に婚約破棄されたけど、最強能力と判明したので成りあがる
ファンタスティック小説家
ファンタジー
モンスター使役学を100年単位で進めたとされる偉大な怪物学者の孫アルバート・アダンは″天才″と呼ばれていた。将来を有望な魔術師として見込まれ、大貴族で幼馴染の可憐なる令嬢を許嫁としていた。
しかし、おおくの魔術師に期待されていたアルバートは【観察記録】という、「動物の生態を詳しく観察する」だけの極めて用途の少ない″外れスキル″を先代から受け継いでしまう。それにより周囲の評価は一変した。
「もうアダン家から実績は見込めない」
「二代続いて無能が生まれた」
「劣等な血に価値はない」
アルバートは幼馴染との婚約も無かったことにされ、さらに神秘研究における最高権威:魔術協会からも追放されてしまう。こうして魔術家アダンは、力をうしない没落と破滅の運命をたどることになった。
──だがこの時、誰も気がついていなかった。アルバートの【観察記録】は故人の残した最強スキルだということを。【観察記録】の秘められた可能性に気がついたアルバートは、最強の怪物学者としてすさまじい早さで魔術世界を成り上がっていくことになる。
もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる