50 / 173
7話(5)
しおりを挟む
「どうなってるんだ……? オレらは、森全部を回ったよな……?」
「ああ。間違いなく全ての場所を、くまなく探した」
「だよな? ……じゃあ、こりゃなんなんだ……? なぜ何も見つけられないんだ……?」
ユージと別のパーティーの戦士の人が何度も何度も首を傾け、他の人達も戸惑いを露にする。
明らかになにかあるはずなのに、なにもない。私も、頭の中がハテナマークで一杯だ。
「頭がこんがらがってきっちまったよ。なにがどうなれば、こうなるんだ?」
「……考えられるのは……。この状況を起こした『何か』は、もうこの場所にはない。謎はとっくになかった、というオチね」
「こりゃあ、リーダーの予想が当たってるっぽいな。そうとしか思えない」
なんにも、なかったんだもんね。ティルを誘惑した女性の言葉が、あってると思う。
「だったらギルドに急いで戻って、報告しねえとな! 新しい緊急クエストを出して、他の場所を虱潰しに調べるべきだ」
「別のとこで何か起きてる可能性も、あるもんな。撤収で決まりだ」
みんな踵を返し、焦り気味に来た道を引き返してゆく。
今回の捜索は、空振り。私達も馬車に戻ろう。
「ティル。みんなに遅れないように――ティル? どうしたの?」
幼馴染は顎に手を当て、整った眉を寄せていた。
「…………実はな。ここに来た時から、違和感を覚えていたんだ」
「ぁ、もしかして。探索前に言いかけてたのは、それについて?」
「ああ、その通りだ。しかしミファや他の人間は何一つ口にしないから、勘違いだと考えていた」
ティルはそう告げて、首を1回左右に振る。
「だがその微弱な違和は終始あり続け、たった今勘違いではなかったと結論付けた。つまりこの森には、何かがある」
「そ、そうなんだ……。だったら、他の人達にも伝えて――」
「伝える前に、やってもらいたい事がある。だからこうしてわざと、他のメンバーから距離を取ったんだ」
そっかそっか。目的があって、このタイミングで打ち明けたのね。
だとしたら、その『やってもらいたい事』ってのは……。
「魔術師の俺だけが感じ取れたのならば、その違和感の原因は十中八九魔術がかかわっている。そこで『祝福』を使い、魔力を高めて欲しいんだ」
「魔力が上がれば、感知能力も上がるもんね。オッケーよ」
私はティルの右手に触れ、『祝福』を発動。幼馴染は純白の光に包まれ、能力が急上昇した。
「おーい、姉御に旦那~っ。ギルドに戻られないんスか――って、お二人で何をされてるんスか?」
「ティルが違和感を覚えたみたいで、少し調べてるの。どう? 何か感じられる?」
「……………………。ほんの僅か、魔力を感じる。こっちだ」
ティルが斜め前方に歩き出し、私――と、ユージもついてくる。
2人だけの方が動きやすいんだけど、何かあったら伝令役になってもらえる。そんな理由で止めず、私達は3人で進むことにした。
「ああ。間違いなく全ての場所を、くまなく探した」
「だよな? ……じゃあ、こりゃなんなんだ……? なぜ何も見つけられないんだ……?」
ユージと別のパーティーの戦士の人が何度も何度も首を傾け、他の人達も戸惑いを露にする。
明らかになにかあるはずなのに、なにもない。私も、頭の中がハテナマークで一杯だ。
「頭がこんがらがってきっちまったよ。なにがどうなれば、こうなるんだ?」
「……考えられるのは……。この状況を起こした『何か』は、もうこの場所にはない。謎はとっくになかった、というオチね」
「こりゃあ、リーダーの予想が当たってるっぽいな。そうとしか思えない」
なんにも、なかったんだもんね。ティルを誘惑した女性の言葉が、あってると思う。
「だったらギルドに急いで戻って、報告しねえとな! 新しい緊急クエストを出して、他の場所を虱潰しに調べるべきだ」
「別のとこで何か起きてる可能性も、あるもんな。撤収で決まりだ」
みんな踵を返し、焦り気味に来た道を引き返してゆく。
今回の捜索は、空振り。私達も馬車に戻ろう。
「ティル。みんなに遅れないように――ティル? どうしたの?」
幼馴染は顎に手を当て、整った眉を寄せていた。
「…………実はな。ここに来た時から、違和感を覚えていたんだ」
「ぁ、もしかして。探索前に言いかけてたのは、それについて?」
「ああ、その通りだ。しかしミファや他の人間は何一つ口にしないから、勘違いだと考えていた」
ティルはそう告げて、首を1回左右に振る。
「だがその微弱な違和は終始あり続け、たった今勘違いではなかったと結論付けた。つまりこの森には、何かがある」
「そ、そうなんだ……。だったら、他の人達にも伝えて――」
「伝える前に、やってもらいたい事がある。だからこうしてわざと、他のメンバーから距離を取ったんだ」
そっかそっか。目的があって、このタイミングで打ち明けたのね。
だとしたら、その『やってもらいたい事』ってのは……。
「魔術師の俺だけが感じ取れたのならば、その違和感の原因は十中八九魔術がかかわっている。そこで『祝福』を使い、魔力を高めて欲しいんだ」
「魔力が上がれば、感知能力も上がるもんね。オッケーよ」
私はティルの右手に触れ、『祝福』を発動。幼馴染は純白の光に包まれ、能力が急上昇した。
「おーい、姉御に旦那~っ。ギルドに戻られないんスか――って、お二人で何をされてるんスか?」
「ティルが違和感を覚えたみたいで、少し調べてるの。どう? 何か感じられる?」
「……………………。ほんの僅か、魔力を感じる。こっちだ」
ティルが斜め前方に歩き出し、私――と、ユージもついてくる。
2人だけの方が動きやすいんだけど、何かあったら伝令役になってもらえる。そんな理由で止めず、私達は3人で進むことにした。
0
お気に入りに追加
1,890
あなたにおすすめの小説
もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが
天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。
だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。
その後、自分の異常な体質に気づき...!?
婚約破棄? ではここで本領発揮させていただきます!
昼から山猫
ファンタジー
王子との婚約を当然のように受け入れ、幼い頃から厳格な礼法や淑女教育を叩き込まれてきた公爵令嬢セリーナ。しかし、王子が他の令嬢に心を移し、「君とは合わない」と言い放ったその瞬間、すべてが崩れ去った。嘆き悲しむ間もなく、セリーナの周りでは「大人しすぎ」「派手さがない」と陰口が飛び交い、一夜にして王都での居場所を失ってしまう。
ところが、塞ぎ込んだセリーナはふと思い出す。長年の教育で身につけた「管理能力」や「記録魔法」が、周りには地味に見えても、実はとてつもない汎用性を秘めているのでは――。落胆している場合じゃない。彼女は深呼吸をして、こっそりと王宮の図書館にこもり始める。学問の記録や政治資料を整理し、さらに独自に新たな魔法式を編み出す作業をスタートしたのだ。
この行動はやがて、とんでもない成果を生む。王宮の混乱した政治体制や不正を資料から暴き、魔物対策や食糧不足対策までも「地味スキル」で立て直せると証明する。誰もが見向きもしなかった“婚約破棄令嬢”が、実は国の根幹を救う可能性を持つ人材だと知られたとき、王子は愕然として「戻ってきてほしい」と懇願するが、セリーナは果たして……。
------------------------------------
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる