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7話(5)

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「どうなってるんだ……? オレらは、森全部を回ったよな……?」
「ああ。間違いなく全ての場所を、くまなく探した」
「だよな? ……じゃあ、こりゃなんなんだ……? なぜ何も見つけられないんだ……?」

 ユージと別のパーティーの戦士の人が何度も何度も首を傾け、他の人達も戸惑いを露にする。
 明らかになにかあるはずなのに、なにもない。私も、頭の中がハテナマークで一杯だ。

「頭がこんがらがってきっちまったよ。なにがどうなれば、こうなるんだ?」
「……考えられるのは……。この状況を起こした『何か』は、もうこの場所にはない。謎はとっくになかった、というオチね」
「こりゃあ、リーダーの予想が当たってるっぽいな。そうとしか思えない」

 なんにも、なかったんだもんね。ティルを誘惑した女性の言葉が、あってると思う。

「だったらギルドに急いで戻って、報告しねえとな! 新しい緊急クエストを出して、他の場所を虱潰しに調べるべきだ」
「別のとこで何か起きてる可能性も、あるもんな。撤収で決まりだ」

 みんな踵を返し、焦り気味に来た道を引き返してゆく。
 今回の捜索は、空振り。私達も馬車に戻ろう。

「ティル。みんなに遅れないように――ティル? どうしたの?」

 幼馴染は顎に手を当て、整った眉を寄せていた。

「…………実はな。ここに来た時から、違和感を覚えていたんだ」
「ぁ、もしかして。探索前に言いかけてたのは、それについて?」
「ああ、その通りだ。しかしミファや他の人間は何一つ口にしないから、勘違いだと考えていた」

 ティルはそう告げて、首を1回左右に振る。

「だがその微弱な違和は終始あり続け、たった今勘違いではなかったと結論付けた。つまりこの森には、何かがある」
「そ、そうなんだ……。だったら、他の人達にも伝えて――」
「伝える前に、やってもらいたい事がある。だからこうしてわざと、他のメンバーから距離を取ったんだ」

 そっかそっか。目的があって、このタイミングで打ち明けたのね。
 だとしたら、その『やってもらいたい事』ってのは……。

「魔術師の俺だけが感じ取れたのならば、その違和感の原因は十中八九魔術がかかわっている。そこで『祝福』を使い、魔力を高めて欲しいんだ」
「魔力が上がれば、感知能力も上がるもんね。オッケーよ」

 私はティルの右手に触れ、『祝福』を発動。幼馴染は純白の光に包まれ、能力が急上昇した。

「おーい、姉御に旦那~っ。ギルドに戻られないんスか――って、お二人で何をされてるんスか?」
「ティルが違和感を覚えたみたいで、少し調べてるの。どう? 何か感じられる?」
「……………………。ほんの僅か、魔力を感じる。こっちだ」

 ティルが斜め前方に歩き出し、私――と、ユージもついてくる。
 2人だけの方が動きやすいんだけど、何かあったら伝令役になってもらえる。そんな理由で止めず、私達は3人で進むことにした。
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