41 / 173
6話(5)
しおりを挟む
「っっ、反射の性質を持つ壁かっ。言葉通り厄介な代物だっ」
「ティルっ、迎撃は私に任せてっ。有言実行で、しっかりフォローするわよっ!」
飛んでくる風を剣で斬り、両断して霧散させる。
この剣は『祝福』のおかげで、安物でも聖剣と同レベルの切れ味。魔術でも斬れちゃうのよね。
「ほう、魔術を容易く斬ったか。貴様は、なかなかに特異な者のようだ」
「お褒めに預かり光栄(こーえー)でーす。特異な者の相手はしんどいから、降参する気になった?」
「寝言は寝ている時に言え。この程度、何の問題もない」
通常はそうそうできないはずの魔術消去を見ても、表情が微塵も変わらない。彼は周囲にあるバリアーを軽く撫で、クククッと喉を鳴らす。
「ここにあるのは、受けた衝撃をそのまま返す能力を持った防御壁。そしてかの聖剣の一撃で以ても破壊できない強度を持った、防御壁だ」
王族は物心ついた時に、どこからか女の人の声が響いてきて能力の詳細を教わる。なのでコイツの説明は、本物。そこにあるのは、滅茶苦茶な防御力を持った壁らしい。
「俺を倒すには、壁の破壊が必要不可欠。しかしながらその壁は、最高水準の攻と防を兼ね備えた奇跡の物体。お前達に勝ち目などないんだよ」
「へ~、そんなに強い能力をお持ちだったんですねえ。だったらアンタが戦えば楽々魔物を倒せるのに、どうして城に籠ってるんですかねえ?」
私は嫌味ったっぷりで、お伺いする。
緊急クエストが発生した瞬間、息子の『飛行』でそこに飛べば簡単に解決できるのに。なんで自分はここで座ってて、息子をギルドに遣したのかしら?
「これだから、庶民は無能は困る。いいか?」
「はーい。なんでございましょう?」
「ここにいるのは、王。この世に十二人しかいない、人類の頂点に立つ者の一人だ。そんな影響力を持つ者が、戦場に現れたらどうなる? その結果、むこう――魔物側も同等な存在が姿を現し、戦火が増してしまう。そういった問題を防ぐために、この世界の均衡を考え王は静観するのだよ」
なるほどなるほど。人間と魔物の『小競り合い』で済ませるために、あえて自分は出ないのね。
なるほどなるほど。
「じゃあ、もう一つ質問がございます。現在勇者であるノルス・ハスト様が各国の第一王女を娶っているため、魔物陣営は勘違いをしてしまっています。先ほどのように均衡を考えていらっしゃるのであれば、当然、ハスト様に抗議をして、そういう行為をやめさせるようにしますよね?」
「……………………」
「あのぅ。黙ってどうしたんですかぁ? そう、しますよね?」
「……………………魔物達が、そんな勘違いをしているはずがない。それは何かの間違いで、対処の必要はない」
しばらく黙考していた王は、両目を瞑ってかぶりを振った。
へぇ。そうなのね。
「私達が話した事を今まで信じてたのに、急に信じなくなった。あれあれぇ? おかしいですねえ」
「……………………」
「だったらこれって、もしかしてあれですか? 世界を思ってるってのは、出まかせ。自分は『この地位を保って安全に暮らしたい』から『万が一が起きる可能性がある戦場』には出向かなくって、『勇者に逆らうと王座を剥奪されかねない』から口出ししないんですかね?」
「っっっ! 無礼者が!! 推測で物事を口にするな!!」
「ミファ、王は酷く取り乱されている。的を射ていたようだな」
急にここまで声を荒らげたということは、そういうこと。結局コイツらは自分第一で、やっぱり不要な王様。
今日ここで、倒さないといけない王様だ。
「ティルっ、迎撃は私に任せてっ。有言実行で、しっかりフォローするわよっ!」
飛んでくる風を剣で斬り、両断して霧散させる。
この剣は『祝福』のおかげで、安物でも聖剣と同レベルの切れ味。魔術でも斬れちゃうのよね。
「ほう、魔術を容易く斬ったか。貴様は、なかなかに特異な者のようだ」
「お褒めに預かり光栄(こーえー)でーす。特異な者の相手はしんどいから、降参する気になった?」
「寝言は寝ている時に言え。この程度、何の問題もない」
通常はそうそうできないはずの魔術消去を見ても、表情が微塵も変わらない。彼は周囲にあるバリアーを軽く撫で、クククッと喉を鳴らす。
「ここにあるのは、受けた衝撃をそのまま返す能力を持った防御壁。そしてかの聖剣の一撃で以ても破壊できない強度を持った、防御壁だ」
王族は物心ついた時に、どこからか女の人の声が響いてきて能力の詳細を教わる。なのでコイツの説明は、本物。そこにあるのは、滅茶苦茶な防御力を持った壁らしい。
「俺を倒すには、壁の破壊が必要不可欠。しかしながらその壁は、最高水準の攻と防を兼ね備えた奇跡の物体。お前達に勝ち目などないんだよ」
「へ~、そんなに強い能力をお持ちだったんですねえ。だったらアンタが戦えば楽々魔物を倒せるのに、どうして城に籠ってるんですかねえ?」
私は嫌味ったっぷりで、お伺いする。
緊急クエストが発生した瞬間、息子の『飛行』でそこに飛べば簡単に解決できるのに。なんで自分はここで座ってて、息子をギルドに遣したのかしら?
「これだから、庶民は無能は困る。いいか?」
「はーい。なんでございましょう?」
「ここにいるのは、王。この世に十二人しかいない、人類の頂点に立つ者の一人だ。そんな影響力を持つ者が、戦場に現れたらどうなる? その結果、むこう――魔物側も同等な存在が姿を現し、戦火が増してしまう。そういった問題を防ぐために、この世界の均衡を考え王は静観するのだよ」
なるほどなるほど。人間と魔物の『小競り合い』で済ませるために、あえて自分は出ないのね。
なるほどなるほど。
「じゃあ、もう一つ質問がございます。現在勇者であるノルス・ハスト様が各国の第一王女を娶っているため、魔物陣営は勘違いをしてしまっています。先ほどのように均衡を考えていらっしゃるのであれば、当然、ハスト様に抗議をして、そういう行為をやめさせるようにしますよね?」
「……………………」
「あのぅ。黙ってどうしたんですかぁ? そう、しますよね?」
「……………………魔物達が、そんな勘違いをしているはずがない。それは何かの間違いで、対処の必要はない」
しばらく黙考していた王は、両目を瞑ってかぶりを振った。
へぇ。そうなのね。
「私達が話した事を今まで信じてたのに、急に信じなくなった。あれあれぇ? おかしいですねえ」
「……………………」
「だったらこれって、もしかしてあれですか? 世界を思ってるってのは、出まかせ。自分は『この地位を保って安全に暮らしたい』から『万が一が起きる可能性がある戦場』には出向かなくって、『勇者に逆らうと王座を剥奪されかねない』から口出ししないんですかね?」
「っっっ! 無礼者が!! 推測で物事を口にするな!!」
「ミファ、王は酷く取り乱されている。的を射ていたようだな」
急にここまで声を荒らげたということは、そういうこと。結局コイツらは自分第一で、やっぱり不要な王様。
今日ここで、倒さないといけない王様だ。
0
お気に入りに追加
1,889
あなたにおすすめの小説
父ちゃんはツンデレでした
文月ゆうり
ファンタジー
日本の小さな村に住む中学生の沙樹は、誕生日に運命が動き出した。
自宅のリビングに現れたのは、異世界からきたという騎士。
彼は言う「迎えにきた」と。
沙樹の両親は異世界の人間!?
真実は明かされ、沙樹は叔母とともに異世界に渡る。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
側妃に追放された王太子
基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」
正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。
そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。
王の代理が側妃など異例の出来事だ。
「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」
王太子は息を吐いた。
「それが国のためなら」
貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。
無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。
拝啓神様。転生場所間違えたでしょ。転生したら木にめり込んで…てか半身が木になってるんですけど!?あでも意外とスペック高くて何とかなりそうです
熊ごろう
ファンタジー
俺はどうやら事故で死んで、神様の計らいで異世界へと転生したらしい。
そこまではわりと良くある?お話だと思う。
ただ俺が皆と違ったのは……森の中、木にめり込んだ状態で転生していたことだろうか。
しかも必死こいて引っこ抜いて見ればめり込んでいた部分が木の体となっていた。次、神様に出会うことがあったならば髪の毛むしってやろうと思う。
ずっとその場に居るわけにもいかず、森の中をあてもなく彷徨う俺であったが、やがて空腹と渇き、それにたまった疲労で意識を失ってしまい……と、そこでこの木の体が思わぬ力を発揮する。なんと地面から水分や養分を取れる上に生命力すら吸い取る事が出来たのだ。
生命力を吸った体は凄まじい力を発揮した。木を殴れば幹をえぐり取り、走れば凄まじい速度な上に疲れもほとんどない。
これはチートきたのでは!?と浮かれそうになる俺であったが……そこはぐっと押さえ気を引き締める。何せ比較対象が無いからね。
比較対象もそうだけど、とりあえず生活していくためには人里に出なければならないだろう。そう考えた俺はひとまず森を抜け出そうと再び歩を進めるが……。
P.S
最近、右半身にリンゴがなるようになりました。
やったね(´・ω・`)
火、木曜と土日更新でいきたいと思います。
その科学は魔法をも凌駕する。
神部 大
ファンタジー
科学が進みすぎた日本の荒廃。
そんな中最後の希望として作られた時空転移プログラムを用い歴史を変える為に一人敵陣に乗り込んだフォースハッカーの戦闘要員、真。
だが転移した先は過去ではなく、とても地球上とは思えない魔物や魔法が蔓延る世界だった。
返る術もないまま真が選んだ道は、科学の力を持ちながらその世界でただ生き、死ぬ事。
持ちうる全ての超科学技術を駆使してそんな世界で魔法を凌駕しろ。
異世界でスローライフとか無理だから!
まる
ファンタジー
突如青白い光に包まれ目を開ければ、目の前には邪神崇拝者(見た目で勝手に判断)の群れが!
信用できそうもない場所から飛び出していざ行かん見慣れぬ世界へ。
○○○○○○○○○○
※ふんわり設定。誤字脱字、表現の未熟さが目につきます。
閲覧、しおり、お気に入り登録ありがとうございます!
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
あらやだ! コレあれやろアレ! なんやったっけ? そうや転生やろ! ~大阪のおばちゃん、平和な世の中目指して飴ちゃん無双やで!~
橋本洋一
ファンタジー
ちりちりパーマで虎柄の服をこよなく愛する大阪のおばちゃん代表、鈴木小百合はある日、目の前でトラックに跳ねられそうになった小学生を助けようとして、代わりに死亡してしまう。
しかしこの善行がとある転生神の目に止まり、剣と魔法の世界に転生させられる。そのとき彼女に与えられたチート能力は「好きなだけポケットの中から飴を出せる」だった。
前世からおせっかいで世話好きな性格の彼女は転生世界で自覚なしに、人々を助けまくる。その人々の中には、英雄と呼ばれる騎士が生まれたりして――
『あらやだ! 転生しちゃったわ! ~おばちゃん無双~』よろしくおねがいします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる