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6話(5)

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「っっ、反射の性質を持つ壁かっ。言葉通り厄介な代物だっ」
「ティルっ、迎撃は私に任せてっ。有言実行で、しっかりフォローするわよっ!」

 飛んでくる風を剣で斬り、両断して霧散させる。
 この剣は『祝福』のおかげで、安物でも聖剣と同レベルの切れ味。魔術でも斬れちゃうのよね。

「ほう、魔術を容易く斬ったか。貴様は、なかなかに特異な者のようだ」
「お褒めに預かり光栄(こーえー)でーす。特異な者の相手はしんどいから、降参する気になった?」
「寝言は寝ている時に言え。この程度、何の問題もない」

 通常はそうそうできないはずの魔術消去を見ても、表情が微塵も変わらない。彼は周囲にあるバリアーを軽く撫で、クククッと喉を鳴らす。

「ここにあるのは、受けた衝撃をそのまま返す能力を持った防御壁。そしてかの聖剣の一撃で以ても破壊できない強度を持った、防御壁だ」

 王族は物心ついた時に、どこからか女の人の声が響いてきて能力の詳細を教わる。なのでコイツの説明は、本物。そこにあるのは、滅茶苦茶な防御力を持った壁らしい。

「俺を倒すには、壁の破壊が必要不可欠。しかしながらその壁は、最高水準の攻と防を兼ね備えた奇跡の物体。お前達に勝ち目などないんだよ」
「へ~、そんなに強い能力をお持ちだったんですねえ。だったらアンタが戦えば楽々魔物を倒せるのに、どうして城に籠ってるんですかねえ?」

 私は嫌味ったっぷりで、お伺いする。
 緊急クエストが発生した瞬間、息子の『飛行』でそこに飛べば簡単に解決できるのに。なんで自分はここで座ってて、息子をギルドに遣したのかしら?

「これだから、庶民は無能は困る。いいか?」
「はーい。なんでございましょう?」
「ここにいるのは、王。この世に十二人しかいない、人類の頂点に立つ者の一人だ。そんな影響力を持つ者が、戦場に現れたらどうなる? その結果、むこう――魔物側も同等な存在が姿を現し、戦火が増してしまう。そういった問題を防ぐために、この世界の均衡を考え王は静観するのだよ」

 なるほどなるほど。人間と魔物の『小競り合い』で済ませるために、あえて自分は出ないのね。
 なるほどなるほど。

「じゃあ、もう一つ質問がございます。現在勇者であるノルス・ハスト様が各国の第一王女を娶っているため、魔物陣営は勘違いをしてしまっています。先ほどのように均衡を考えていらっしゃるのであれば、当然、ハスト様に抗議をして、そういう行為をやめさせるようにしますよね?」
「……………………」
「あのぅ。黙ってどうしたんですかぁ? そう、しますよね?」
「……………………魔物達が、そんな勘違いをしているはずがない。それは何かの間違いで、対処の必要はない」

 しばらく黙考していた王は、両目を瞑ってかぶりを振った。
 へぇ。そうなのね。

「私達が話した事を今まで信じてたのに、急に信じなくなった。あれあれぇ? おかしいですねえ」
「……………………」
「だったらこれって、もしかしてあれですか? 世界を思ってるってのは、出まかせ。自分は『この地位を保って安全に暮らしたい』から『万が一が起きる可能性がある戦場』には出向かなくって、『勇者に逆らうと王座を剥奪されかねない』から口出ししないんですかね?」
「っっっ! 無礼者が!! 推測で物事を口にするな!!」
「ミファ、王は酷く取り乱されている。的を射ていたようだな」

 急にここまで声を荒らげたということは、そういうこと。結局コイツらは自分第一で、やっぱり不要な王様。
 今日ここで、倒さないといけない王様だ。
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