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5話(6)

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「申し訳ありません、アーティス様。僕は貴方様の発言を看過できないため、その御指示に従えません」

 彼は、瞳に静かな怒りを宿して――恐らくはずっと隠していたものを表に出して、首を右と左に振った。

「今後を考え、見捨てる。犠牲が最も役立てる方法だと言い切る。貴方はあまりに民を軽視し、愚弄しています」
「なっ……っ。な……っっ! お前はギルドのトップなはずだ!! 多くの者の上に立っている者が、なに生ぬるい事を言って――」
「多くの者の上に立つ者だからこそ、言っているのですよ。確かに全員が無事で、一つの犠牲もなく解決できる事など殆どありません。日々、どこかで何かしらの犠牲が発生しています。けれどそれでも、犠牲ありきで考えるべきじゃない。なぜならこの世に、駒となっていい者など存在しないのですから」

 アルジェさんは私に対して穏やかに目尻を下げたあと、正面に対して鋭く睨みつける。
 この人はやっぱり、大きな組織のトップ。考えがしっかりしているし、なにより迫力が違う。この人は丁寧な物腰で喋ったあとに睨みつけただけなのに、場の空気がビリビリするようになった。

「おまけに先ほど、正論を口にした彼女を刑に処すると言いました。アーティス様はこれまでも『こういった振る舞い』が多々ありましたが、今回のソレらは一線を大きく超えてしまった。貴方には――貴方がた現王族には、もう政治を任せるべきではないのですよ」
「ぐ……っ。少し名のある『駒』の分際で、いけしゃあしゃあと……!! お前もこの女と同様に、惨たらしく殺してやるからなあああああああああああああああああ!!」
「…………まったく、どこまでも見苦しい男だ。もう黙っていろ」

 ティルが威力を抑えた雷を二つ放ち、直撃を受けた王子と元側近は失神してしまった。
 ナイスティル。いい一撃だったわ。

「レイスさん、ありがとうございます。……僕が長年判断を誤ってしまった為、お二人に酷いご迷惑をかけてしまいました……」
「アルジェさんにも絶対に色々あったと思うので、そういうのは止めてください。あれは私がしたいようにやった結果で、後悔は一つもありませんよ」
「……何から何まで、ありがとうございます。せめてものお詫びに、この身とこの力の全てを用いて協力させていただきます」
「「「「「オレらもだ! 参加させてもらうぞ!!」」」」」

 勢いよく扉が開いて、何十人もの人がなだれ込んできた。この人達はさっき門で胴上げをしてくれた、漁師さんと戦士だ。
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