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エピローグ 捨てられたから生まれた幸せ ステファニー視点(2)
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「素敵な光景だったね。思わず僕も涙ぐんでしまったよ」
大切な方々に送り出されて向かうのは、もう一人の大切な方のもと。わたしに大きな影響を与えてくださった三人目の方、パトリス様です。
「三人で抱き合っている姿を見ていたら、僕も今日までの君との思い出が蘇ってきたよ。……君は、とても優しい女の子だったよね」
お庭の隅に怪我をした鳥がいた際に、真っ先に手当をしていたね――。6人の令嬢令息たちとお茶会を開いていた際は、全員が楽しく過ごせるように様々な形で動いていたよね。しかも、他の参加者に気を遣わせないようコッソリと――。
など。パトリス様はわたしを好きになってゆく切っ掛けとなった出来事を振り返られ、柔らかく目を細められました。
「なので、僕も同じ。ステファニーと出会えて幸せと思っていて、何よりも大切な存在だと思っているよ」
「……パトリス様、わたしもです。貴方様と出会えて幸せで、大切な存在でございます」
わたしも目を細めながら頷きを返し、わたし達はお互いの気持ちを改めて確認し合い、揃って祭壇へと身体の向きを変えます。
そうしてパトリス様とわたしは誓約や二人でデザインした指輪の交換などを行い、あっという間に残る儀式は1つとなりました。
婚約者から夫婦になるために必要な、最後のもの。それは、誓いのキスです。
「ステファニー」
「パトリス様」
向かい合ったわたし達は互いに一歩だけ前に出て、静かに見つめ合って。新たな関係へと進み出せる喜びを覚えながら、手を取り合い指を絡め合いました。
「………………」
「………………」
人生で初めて経験する、まるで身体が内側からはじけ飛んでしまいそうな高揚感。たくさんの幸せで満たされた状態で、わたし達の唇は静かに近づいていって――
わたしとパトリス様の唇が、重なった。
「………………ステファニー、大好きだ。愛してるよ」
「………………パトリス様、大好きです。愛しています」
体内に収まらなくなって、嬉し涙として溢れてくる幸せ。大好きな方の感触と温もり。
それらに包まれながら、わたし達は微笑みを交わし――。そうしてわたし達は、夫婦となったのでした。
かつてエマだったわたし。そんなわたしは大切な家族と出会ってステファニー・ノエアンズとなり、大好きな人と出会ってステファニー・ナーサルエルズになったのでした――。
※連載中は体調不良などで多々ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
今後は不定期ではありますが、結婚後のふたりのお話など描かせていただく番外編の投稿を予定しております。
大切な方々に送り出されて向かうのは、もう一人の大切な方のもと。わたしに大きな影響を与えてくださった三人目の方、パトリス様です。
「三人で抱き合っている姿を見ていたら、僕も今日までの君との思い出が蘇ってきたよ。……君は、とても優しい女の子だったよね」
お庭の隅に怪我をした鳥がいた際に、真っ先に手当をしていたね――。6人の令嬢令息たちとお茶会を開いていた際は、全員が楽しく過ごせるように様々な形で動いていたよね。しかも、他の参加者に気を遣わせないようコッソリと――。
など。パトリス様はわたしを好きになってゆく切っ掛けとなった出来事を振り返られ、柔らかく目を細められました。
「なので、僕も同じ。ステファニーと出会えて幸せと思っていて、何よりも大切な存在だと思っているよ」
「……パトリス様、わたしもです。貴方様と出会えて幸せで、大切な存在でございます」
わたしも目を細めながら頷きを返し、わたし達はお互いの気持ちを改めて確認し合い、揃って祭壇へと身体の向きを変えます。
そうしてパトリス様とわたしは誓約や二人でデザインした指輪の交換などを行い、あっという間に残る儀式は1つとなりました。
婚約者から夫婦になるために必要な、最後のもの。それは、誓いのキスです。
「ステファニー」
「パトリス様」
向かい合ったわたし達は互いに一歩だけ前に出て、静かに見つめ合って。新たな関係へと進み出せる喜びを覚えながら、手を取り合い指を絡め合いました。
「………………」
「………………」
人生で初めて経験する、まるで身体が内側からはじけ飛んでしまいそうな高揚感。たくさんの幸せで満たされた状態で、わたし達の唇は静かに近づいていって――
わたしとパトリス様の唇が、重なった。
「………………ステファニー、大好きだ。愛してるよ」
「………………パトリス様、大好きです。愛しています」
体内に収まらなくなって、嬉し涙として溢れてくる幸せ。大好きな方の感触と温もり。
それらに包まれながら、わたし達は微笑みを交わし――。そうしてわたし達は、夫婦となったのでした。
かつてエマだったわたし。そんなわたしは大切な家族と出会ってステファニー・ノエアンズとなり、大好きな人と出会ってステファニー・ナーサルエルズになったのでした――。
※連載中は体調不良などで多々ご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございませんでした。
今後は不定期ではありますが、結婚後のふたりのお話など描かせていただく番外編の投稿を予定しております。
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