お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず

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第10話 異変の裏側 俯瞰視点(2)

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「「…………兄さん」」
「………………ああ。もうそれしかないな」

 思っていたよりも支出が多くなってしまった。これ以上工面のしようがなく、このままでは近々警備を維持できなくなってしまう。そう感じた日から数日後。邸内にいる三人は、重々しく頷き合いました。

「我々が必死になってかき集めた、この3000万。こいつをすべて投資に使う」

 極力短期間――。爆発的に増やす――。その両方を満たす方法は、これのみ。
 成功すれば天国、負ければ地獄。ジュール、トマ、メラニーは、一世一代の大勝負にでることにしたのでした。

「…………この博打は、危険な賭けだ。だが」
「我々は、現在も商会持ち。これまで頭脳を用いて業界を生き抜いて来た猛者です」
「…………わたくし達なら、光を掴みとれますわ!」

 金絡みの行動は得意だから、大丈夫。これまで商売の世界で生き残ってきているのだから、大丈夫。
 三人は自分自身に言い聞かせるように言葉を紡ぎ、そうして三人による負けられない戦いが始まりました。

「こちらには実績も経験もあるんだ……! これは予想じゃない、預言だ……!! 我々が次に浮かべる表情は、笑みだ……!!」

 実際ジュール達はある程度商会を立て直しており、一流とまではいかないものの、それなりの実力を有していました。加えて今回の件は全身全霊を注いでいるため、計画の成功はほぼ間違いのないものとなっていました。

 ――この状況下以外で、動き出していたのであれば――。

『極力短期間』。『爆発的に』。
 現在行っている『金を増やす作戦』には、この2点の大前提がありました。何が何でも、これらを達成する必要がありました。

 ――そのため、ジュール達は焦ってしまった――。

 優良だと感じたものに即飛びつき、そこに全額を注ぐ。
 大した熟考もせずに行った勝負で勝てるほど、世の中は甘くはありません。残念ながらラッキーも起きてはくれず――

「「「そんな……」」」

 短期間で、大失敗。逆に爆発的な損失を出してしまい、0になるどころか大量の借金を抱えてしまうことになったのでした。

「「「…………ぁ、ぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……」」」

 そのため三人は仲良く崩れ落ち、そんな彼らは――
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