お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず

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第3話 だから と だったら ステファニー視点(3)

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「だからな、エマ……!」「だからね、エマ……!」

 あのあと心から後悔をしていたんだ。すぐに探しに戻ったんだ。けれど戻ってもそこには誰もおらず、会えなくて悔やみ続けたんだ。それによって何も手につかなくなり、すべてを失ってしまったんだ。
 声を大きく震わせながら以降の出来事を語ったお二人は、一層――これまでの比にはならないほどに、でした。声を上ずらせ、おまけに顔を涙でぐちゃぐちゃにして、まったく同じタイミングでわたしを見つめました。

「お前がちゃんと生きていたと分かって、ホッとしている……! 言葉では表しきれないような……! とてつもない幸せを感じているのだよ……!!」
「エマ……! 生きてくれていて、ありがとう……!! 公爵様、公爵夫人様……! この子をあの日救ってくださり、ありがとうございます……!!」

 そうしてお二人は濡れに濡れている顔を綻ばせ、そのまま溶けてしまうのではと感じるほどに目尻を下げて――。そのあとはお父様とお母様へと身体全体を向け、うやうやしく片膝をつかれました。

「痛み入ります……。痛み入ります……! 貴方様のおかげで、この子に、エマに……。ずっと伝えたかったことを、伝えられます」
「…………エマ。あのね。これで許されるとは思っていないし、私たちは絶対に許されてはいけないとも思ってるの。でも、本当の気持ちなので……。私たちの言葉を、聞いてください」

 そしてその次は両膝をついた状態でわたしへと向き直り、こちらに向けて胸の前で手を組みました。ですのでわたしは、そんなお二人を交互に見つめ――

「ありがとう、エマ! 聞いてくれるんだね……!」
「あんなことをしたのに…………本当にありがとう……! 聞いてくれるなんて――」
「いいえ、貴方がたのお話を聞くつもりはありませんよ。……その表情もこれまでも言葉も、すべてが嘘。起死回生を目論む心にもないものだと、重々理解しておりますので」

 ――大きく、呆れ含みのため息を吐いたのでした。
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