お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず

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第3話 だから と だったら ステファニー視点(1)

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「――以上が、以降に起きていた出来事となります。ですのでわたしは――」
「お前が、エマ!? 本当にあのエマなのか!?」
「悪質な冗談ではないの!? アナタは私達が知っているエマなの!?」

 説明を終え、本題に移ろうとしていた時でした。ヤニック様・・・・・ジネット様・・・・・が前のめりになって大声を上げ始め、しかもしつこく繰り返すようになりました。
 ……早く次の話に進みたかったのですが、仕方がありません。ひとまずあちらのペースに合わせましょう。

「髪の色は同じだがっ、当時の面影がないじゃないか!! 俺とジネットを足して2で割ったような顔だったんだぞ!?」
「私にもこの人にも似ていないじゃない!! まるで別人じゃないの!! 十数年経っているからって、ここまで変わってしまうはずがないわ!!」
「そちらは、きっと環境と心の変化が理由なのでしょうね。新たな人生が始まってから、時間に比例して貴方がたの色が消えていったのですよ」

 たくさんの優しさと愛――。今目の前にいる人達が、わたしのお父様とお母様――。それらが影響をもたらしたのだと思います。
 わたしの顔は段々と変わっていって、同一人物とは思えないほどに乖離したのです。

「バカな……。そんなことが、ありえるのか……!?」
「そんな話……。聞いたことがないわ……」
「わたし自身も最初は驚き、信じられませんでした。ですが、すべて事実です。その証拠に、アヴァザール家の人間しか知らないことも多数存じ上げていますよ」

 マリウスという、やせ型の男性が家令を務めていた。マイアという、先代から仕えている使用人がいた。食堂の壁にはラベンダーの絵画が飾られていた。などなど。他者は知りえない情報を口にし、そうするとようやくお二人は信用をされました。

「…………ほ、本物だ。本物のエマだ……!」
「え、ええ……。本物エマよ……! 目の前にいるのは、エマなんだわ……!!」
「やっと、ご理解いただけたようですね。では閑話休題として――…………」

 言葉を遮られる原因を取り除いたので、先ほどの続きを口にしましょう。そう考えていたわたしは、再び次の言葉を紡げくなってしまいました。
 なぜかというと――

「よかった……! よかった……!! 無事だったのだな……!!」
「よかった……! アナタが無事で…………本当によかったわ……!!」

 ――お二人は声を上擦らせながら顔を綻ばせ、ポロポロと涙を零し始めたからです。

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