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番外編 親子のその後~父ケヴィンside~ 俯瞰視点

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「ぁぁ……。腹が減った……。寒い……」

 かつてとある伯爵家の親子が急遽した国、マリトル。その隣にあるオズレーガ国内に存在する、小さな村エニック。そこではひとりの男が、ボロボロの家で手を擦り合わせていました。
 すっかりやせ細り、髭だらけとなってしまった男性。彼の名は、ケヴィン。およそ2年前までマリトルで貴族籍を所有していた、元伯爵です。

「ぁぁ……。暖かくなれるものが、欲しい……。肉、酒が欲しい……」

 そんな彼は人生をリセットさせるべく名前と身分を捨て、一時はそれなりの成功を収めました。しかしながら元子爵であるアドンによって全てを失い、邪魔者として新たな住居から追い出されてしまいました。
 それによりたった独り、しかも今回は無一文の状態で拠点づくりを行わなければならなくなり、その状況下で人並みの暮らしができるはずがありません。そのため、

『今日という日を生きる抜くことで精いっぱい』

 そんな日々となり、スレスレの状態で生きていたのでした。

「ぁぁ……。チャンスさえ、あれば……。もっとお金が、あれば……。立て直せるのに……。切っ掛けが、欲しい……。チャンスが、欲しい……」

 明かりはロウソクのみの、薄暗く寒い室内。そんな場所の中央でボロ布にくるまり、暖を取っているケヴィン。彼は胸の前で手を組みますが、自然とそういったものが訪れてくれるはずがありません。
 ですので、今夜も変化はなし。この辛い日々が様変わりすることはなく、今夜も彼は嘆き始めます。

「うぁぁ……。こんなことに、なってしまうなんて……。あんなことを、しなければよかった……。あの日、アイツの我が儘をきかなければよかった……。あの女、クラリスとの婚約を解消させなければよかった……」

 そうすれば、こうなってはいなかったのに――。
 大きな借りを作ることも。返済で慌てふためくことも。貴族籍を捨てることも。隣国に移住することも。追い出されてしまうこともなかったのに――。
 あの屋敷で好きな物を食べて、大きなベッドで眠れていたのに――。
 ケヴィンは歯がみをしながら頭を掻きむしり、激しく後悔をします。

 ですが――。
 こちらも同じく、そんなことをしても何も変わりません。

「ぁぁ、ぁぁ……。最悪な選択を、してしまった……。ぁぁぁぁぁぁぁ……!!」

 ですので今日も嘆き疲れて眠りの世界に落ち、翌朝起床。日中は日雇いで生活費を稼ぎ、夜は震えて嘆く。
 彼は生涯、このサイクルから抜け出すことはできないのでした――。

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