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第9話 紹介いたします クラリス視点(2)

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「オルヴァス様……。貴方、様は……。なにをなさる……おつもり、なのですか……?」

 セレスタン様が纏われる雰囲気で、絶対に避けられないと悟ったのだと思う。クレランズ様は今にも泣きそうになりながら、正面を見つめた。

「大したことはしませんよ。貴方がクラリス様に行ったものを、そのまま行うだけです」

 そんな視線を受けたセレスタン様は、ゆっくりとわたしを一瞥。その間だけは温かく優しい目となり、以降は再び先の視線となって前方へと戻りました。

「先ほどのお話は、扉の外で聞かせていただきました。貴方は現婚約者との絶縁を強く希望し、必死になって1億ギルを集めているのですよね?」
「……さ、さようでございます……」
「では、そんな貴方に『命令』をしましょう。1億ギルの調達を諦めて引き返し、現婚約者との関係を維持してください。一生涯」

 そうしなければ――。オルヴァス侯爵家の力を以て、貴方がた――関係者である貴方と現当主殿を、潰します。徹底的に、完膚なきまでにね。
 引き続き穏やかに、けれど声には冷たさを宿して、クレランズ様にとっては恐ろしいものが追加された。

「一生愛し護り続けるんだ、そう仰ったのでしょう? 自分で口にしたことですので、厳守していただきましょう」
「おっ、お待ちくださいっ! 確かにそうっ、口に致しましたっ! ですがあの女が大問題を起こしてしまったのですっ! あちらがそうできないようにしてしまったのですっ! ですのでどうかっ! それだけはご勘弁を……っっ‼」
「ええ、そちらも把握していますよ。ですが、お断りします」
「あっ、あんな女を家に置き続けたらっ! クレランズ家の評判は瞬く間に落ちっ、我々はっ、我が家(いえ)はっ、取り返しのつかない事態となってしまいますっ!! なにとぞご慈悲を……!!」
「ええ、そちらに関しても、理解していますよ。ですので・・・・、お断ります」

 クレランズ様はたまらずひれ伏し、カーペットに額を擦り付けつつ懇願した。けれど返ってくるものは、同じ。
 セレスタン様の首はゆっくりと、左右に振られたのでした。

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