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第14話 一週間後の出来事 俯瞰視点
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「失礼。ロビン様ですね?」
「ああ、そうだ。……アンタは、貴族――確か、チュワヴァス子爵家のリシャールという名前だったな。アンタのおかげでローク達を討てたようなもんだ、感謝している」
リシャールの行動は、世間に流れている噂話で把握していました。そのため声をかけられたロビンは、深々と頭を下げました。
「やっと、ヤツらにお礼が出来た。俺もアイツらも大満足で、久しぶりに心の中は晴れになってるよ」
「それはよかったです。ですが、それでもまだ足りません。貴方がたの心は晴れを越え、快晴となるべきです」
微笑みを返しながらもゆっくりと首を振った、リシャール。彼は懐から合わせて3枚の紙を――書類を取り出しました。
「? それは……?」
「こちらは、貴方がたについて記されたもの。ロビン様を含め被害者全員の、貴族籍を回復を認めるものとなります」
ロビンやマイクの日常が崩壊した原因は、捏造された罪。誰一人として実際に悪事を働いた人間はいません。
そのため今回の騒動が切っ掛けとなり、名誉など全ての回復が叶ったのです。
「忌々しい捏造の証拠はすでに抹消されていましたが、エミリーさんが――主犯の子どもが事細かに証言をしたことで、無罪が真実と証明されたのですよ。こちらは公式なものですので、すぐに貴族への復帰が可能となっております」
「……エミリー……。あの人が、やってくれたのか……」
「彼女はずっと、何もできないことを悔やんでいました。ローク達に引導を渡したと報告したらすぐ、貴方がたに言及していましたよ」
止めたいのに止められず、密かな支援さえもできず、エミリーは長年申し訳なく思っていました。そんな感情が胸にあったため、すぐに行動が始まっていたのです。
「ですのでこのタイミングでこちらが叶い、もう一つ皆様にご報告がございます」
「? 他にも……? 思い当たる節がないが、なんなんだ……?」
「残念ながら、当時の状況全てが戻るわけではありません。そこで少しでもよりよい生活を送れるようにと、こちらを――6億ビルズをご用意させていただきました」
全員が各家の嫡男でしたが、すでに当主が存在しているため当主になることができません。機会を失わせてしまったせめてものお詫びにと、エミリーは1人1億ビルズの慰謝料を用意していたのです。
「こちらはエミリーさんが、ランファーズ家に調達させたものです。……あの家は3人以外にも腐った人間だらけであり、同類しかおりません。どうなったとしても笑い話となりますので、どうぞお納めください」
「……そういうことなら、有難くいただいておく。いつか直接会って礼を伝えさせてもらいたいと、伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
「ああそれと、快晴になったとも伝えておいてくれ。……まさか、こんな日が来るなんてな。夢みたいだ」
かつて絶望のどん底に落とされた、ロビンたち6人。あの日から雷雨となっていた彼らの人生は、こうして再び一変することになったのでした――。
「ああ、そうだ。……アンタは、貴族――確か、チュワヴァス子爵家のリシャールという名前だったな。アンタのおかげでローク達を討てたようなもんだ、感謝している」
リシャールの行動は、世間に流れている噂話で把握していました。そのため声をかけられたロビンは、深々と頭を下げました。
「やっと、ヤツらにお礼が出来た。俺もアイツらも大満足で、久しぶりに心の中は晴れになってるよ」
「それはよかったです。ですが、それでもまだ足りません。貴方がたの心は晴れを越え、快晴となるべきです」
微笑みを返しながらもゆっくりと首を振った、リシャール。彼は懐から合わせて3枚の紙を――書類を取り出しました。
「? それは……?」
「こちらは、貴方がたについて記されたもの。ロビン様を含め被害者全員の、貴族籍を回復を認めるものとなります」
ロビンやマイクの日常が崩壊した原因は、捏造された罪。誰一人として実際に悪事を働いた人間はいません。
そのため今回の騒動が切っ掛けとなり、名誉など全ての回復が叶ったのです。
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「……エミリー……。あの人が、やってくれたのか……」
「彼女はずっと、何もできないことを悔やんでいました。ローク達に引導を渡したと報告したらすぐ、貴方がたに言及していましたよ」
止めたいのに止められず、密かな支援さえもできず、エミリーは長年申し訳なく思っていました。そんな感情が胸にあったため、すぐに行動が始まっていたのです。
「ですのでこのタイミングでこちらが叶い、もう一つ皆様にご報告がございます」
「? 他にも……? 思い当たる節がないが、なんなんだ……?」
「残念ながら、当時の状況全てが戻るわけではありません。そこで少しでもよりよい生活を送れるようにと、こちらを――6億ビルズをご用意させていただきました」
全員が各家の嫡男でしたが、すでに当主が存在しているため当主になることができません。機会を失わせてしまったせめてものお詫びにと、エミリーは1人1億ビルズの慰謝料を用意していたのです。
「こちらはエミリーさんが、ランファーズ家に調達させたものです。……あの家は3人以外にも腐った人間だらけであり、同類しかおりません。どうなったとしても笑い話となりますので、どうぞお納めください」
「……そういうことなら、有難くいただいておく。いつか直接会って礼を伝えさせてもらいたいと、伝えておいてくれ」
「承知いたしました」
「ああそれと、快晴になったとも伝えておいてくれ。……まさか、こんな日が来るなんてな。夢みたいだ」
かつて絶望のどん底に落とされた、ロビンたち6人。あの日から雷雨となっていた彼らの人生は、こうして再び一変することになったのでした――。
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