上 下
22 / 38

第9話 その後 俯瞰視点(3)

しおりを挟む
「ごきげんよう、御三方。先ほどぶりですね」

 激昂していたマリオンが、平手打ちをできなかった理由。それは突然、銀髪の男が――リシャールが現れたからです。

「な……どうしてここに……? 門番リアックはなにをしているのだ!?」
「当主殿、あの方を責めないでください。門番殿は僕を通さざるをえなかったのですよ」
「通さざるを、えない……? な、なぜですの……!?」
「他家の人間を、私達の許可なしに入れないといけないだなんて……。どういう、こと……?」
「まずは、こちらを――最も重要な部分を、単刀直入にお伝えいたしましょう。皆様の行いは本日、白日のもとに晒されることとなりましたよ」

 祖母の形見のブローチを欲しいと要求し、拒否が切っ掛けで激昂。妹マリオンの要望を聞き、父ロークと母リリアンが追放を決めたこと。
 ゼルアレー公爵家のアンジェリックが、作品を気に入りエミリーとの会話を希望したため――保身のために、大急ぎでエミリーを探していたこと。
 それら全てが明らかとなり、その話は現在猛スピードで貴族界内外に拡散されていっている。そういった内容を、リシャールは3人に伝えました。

「対話を望まれていたアンジェリック様の、ゼルアレー公爵家。会のメンバーが属する、フィリックス侯爵家、ボレリエイ伯爵家、イオテリカ伯爵家、それと我がチュワヴァス子爵家。そして、治安機関。以上の5貴族と公的機関が僕の依頼に応えてくださり、あちこちに真実を広めてくださっているのですよ」
「……バカな……。なにが、起きているんだ……」
「どうなっているの……。どうして……!?」

 まだアンジェリックの件のタイムリミットは来ておらず、エミリー追放の件はアンジェリックに悟られていません。にもかかわらず、貴族が4つも協力している――状況を把握できていないゼルアレー家たちが、事実と認めて参画している。
 その理由が分からず、3人は間抜けに目を瞬かせました。

「それに、治安機関まで協力しているだなんて……。信じられない……。僕の依頼って……。普通、広めてとお願いされても広めない……。なんなんですの……!?」
「そうしてくださっている理由は、それぞれのお家と機関の代表者の方が、その御耳で真実を聞いているから。僕の言い分がすべて事実であると理解していらっしゃるから、力を貸してくださっているのですよ」
「…………え? 聞いた?」「聞いた……?」「聞いた……?」
「ええ、聞いた、ですよ。ああすみません、そういえば言っていませんでしたね。皆様が応接室でお話しをされていた時、ドアの向こう側には代表者の方々がいらっしゃったのですよ」

 3人が大急ぎでチュワヴァス邸を訪れる、その1時間以上前。リシャールの要望を受け、関係者は屋敷に集まっており――

『……お姉様、ごめんなさい。わたくし、反省しております……』
『……エミリー、すまない……。心から反省している……』
『……ごめんなさい、エミリー……。貴方にしたこと、反省しているわ……』

 ――マリオン、ローク、リリアンが自ら追放騒動の詳細を語ったため、誰一人としてリシャールの言い分を疑う者はいなかったのです。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます

柚木ゆず
恋愛
 ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。  わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?  当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。  でも。  今は、捨てられてよかったと思っています。  だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。

今更何の御用でしょう? ウザいので止めて下さいませんか?

ノアにゃん
恋愛
私は3年前に幼馴染の王子に告白して「馬鹿じゃないの?」と最低な一瞬で振られた侯爵令嬢 その3年前に私を振った王子がいきなりベタベタし始めた はっきり言ってウザい、しつこい、キモい、、、 王子には言いませんよ?不敬罪になりますもの。 そして私は知りませんでした。これが1,000年前の再来だという事を…………。 ※ 8/ 9 HOTランキング 2位 ありがとう御座います‼ ※ 8/ 9 HOTランキング  1位 ありがとう御座います‼ ※過去最高 154,000ポイント  ありがとう御座います‼

本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。

音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。 幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。 やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。 すっかり諦めた彼女は見合いをすることに…… だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。 二人の心は交わることがあるのか。

金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。

銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」  私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。 「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」  とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。  なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。  え?どのくらいあるかって?  ──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。  とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。  しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。  将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。  どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。  私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?  あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。 ◆◆◆◆◆◆◆◆ 需要が有れば続きます。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

婚約破棄ですか?あなたは誰に向かって口をきいているのですか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私、マリアンヌ・バークレーは王宮の誕生日パーティーでいきなり婚約破棄を言い渡された。は!?婚約破棄ですか?あなたは誰ですの?誰にモノを言っているのですか?頭大丈夫ですか?

10年前にわたしを陥れた元家族が、わたしだと気付かずに泣き付いてきました

柚木ゆず
恋愛
 今から10年前――わたしが12歳の頃、子爵令嬢のルナだった頃のことです。わたしは双子の姉イヴェットが犯した罪を背負わされ、ルナの名を捨てて隣国にある農園で第二の人生を送ることになりました。  わたしを迎え入れてくれた農園の人達は、優しく温かい人ばかり。わたしは新しい家族や大切な人に囲まれて10年間を楽しく過ごし、現在は副園長として充実した毎日を送っていました。  ですが――。そんなわたしの前に突然、かつて父、母、双子の姉だった人が現れたのです。 「「「お願い致します! どうか、こちらで働かせてください!」」」  元家族たちはわたしに気付いておらず、やけに必死になって『住み込みで働かせて欲しい』と言っています。  貴族だった人達が護衛もつけずに、隣の国でこんなことをしているだなんて。  なにがあったのでしょうか……?

お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?

柚木ゆず
恋愛
 こんなことがあるなんて、予想外でした。  わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。  元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?  あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?

処理中です...