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第3話 マルクとジョルジェットのやり取り~今日までの出来事~ 俯瞰視点(1)

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「…………マルク様……。どう、思います……?」
「…………信頼していい、だろう。だが…………解せない部分が多すぎるな……」

 それは、サンドリーヌと彼女の侍女アニェスが中庭を去ったあとのこと。そんなふたりを背中を見つめていたふたりは、眉根を寄せあっていました。

 ――証拠を掴む前に姿を現したこと。万が一の時はマルクとジョルジェットに罪が及ばない書類を作成すると自ら言及したこと。それらによって、自分達を陥れる気配はまるで感じられない――。

 ――だから信じていいものの、自ら陥れてくれと言い出す理由が分からない――。

 サンドリーヌがあまりにもおかしな言動を見せているので、マルクとジョルジェットの頭の中は疑問符だらけになっていたのです。

「……わたくし達の狙い通りに進んだ場合、サンドリーヌの人生は終わったも同然になる……。せっかく一位を取り続けていたのに学院を去る羽目になるし、まともな結婚なんてできやしない。表舞台から消えることになるのに――『コノルワーズ家』の中でも居場所を失い兼ねないのに……。どうして、あんなことを言い出したのでしょう……?」
「…………念のため、確認しておきたい。ジョルジェット。サンドリーヌは卒業後に、次期当主となるんだったよな? そのためにこの学院に入学して、できるだけ箔をつけて卒業したいと言っていたんだよな?」
「え、ええ。仰る通りですわ。後者はこの耳で実際に聞いたことがありますし、前者も間違いのない情報ですわ」
「……そう、だよね。…………いったい、何を考えているんだ……?」

 将来の地位が確定していて、そのために1年間走り続けてきていた。なのに突然、それらを壊そうとする。しかも率先して。
 情報を整理するとますます頭の中が混乱することとなってしまい、さらに眉間に皺が刻まれました。

「………………………………………………駄目だ。分からない。分かるはずがない、こんなこと」
「……そう、ですわね……。分かりかねますわ……」
「…………ま、まあ、あれだ。あちらが用意した作戦を実行したら、サンドリーヌは学院を去る。今後は一切関係がなくなるんだ。気になる部分はあるが、さっき言ったように裏切る気配はまるでないのだから、気にしないでおこうじゃないか」
「そ、そうですわね。そう致しましょう」

 恐ろしいほどに理解できない部分はあるものの、危険性はないのだからこれ以上触れるのは止めておこう。マルクとジョルジェットはそう決める――のですが、その翌々日の夜のことでした。

「……………………」
「……………………」

 そんなマルクとジョルジェットは、深夜0時の中庭で言葉を失っていました。
 なぜならば――


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