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第4話 理由と理由 ガブリエル・セイラルファル視点(5)

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「聖女である私が、接近を全く感知できませんでした。となれば『何か』は怨霊悪霊など所謂人外、霊的な存在ではなく、人間が仕掛けたものとなります」
「やはり、そうなりますか。ですがそうなると可能性は呪いの類となり、ルシー様への接触はできないと思うのですが……?」

 犯人が分かる。その御説明を受け始めてすぐ、僕は眉を寄せた。
 聖女に呪いは効かない――。それは周知の事実で、反射されてしまうため仕掛けてくる者はないはず。
 僕は呪いに携わった経験がないため先の出来事を使って断言はできないが、知識が否定しているのでこう反応した。

「仰られている通り、私に呪いは通じません。ですが感知できなかった以上、人によるものとなってしまうのですよ」
「なるほど……。呪いではない悪意を持つもの、なのですね」
「はい。おかしな――前例のないお話ではありますが、そうなります」

 こくり、と。神妙な面持ちでルシー様は頷かれ、そうして地面へと――散らばるペンダントへと視線を移された。

「ですので私が保管していたものは、人の手に渡っているのですが……。その方法、目的が一切不明であっても、確定している事実があります。その方に待っている未来、それは穢れによる浸食です」

 5人分の、穢れ。こんなものを聖女ではない人間が手にしてしまえば、穢れによって大変なことになってしまうらしい。

「恐らく何かしらの算段があり、悪用可能だと考えているのでしょうが……。あれは、人の手に負えるものではありません」
「………………」
「同じく前例がないため内容までは予測できませんが、その方の心身に大きな悪影響を及ぼしてしまいます。ですので心身に未曽有の異変が起きた方が、犯人となるのですよ」

 なので各地に目を光らせていれば、すぐに気付いて取り押さえられる。それにその浸食が周囲に害を及ぼす危険性がないとは言い切れないため、僕はすぐさま司祭長に『聖水を携帯した神官』の配置手配を行った。
 不意に発生した異常はこうして、予期せぬ形で解決へと進み始め――たのだが、一点気になることがあった。そのため敢えて神殿関係者以外には『ルシー様が突然倒れた』と伝え、その時の訪れを待つことにしたのだった。

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