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第3話 到着後~想定内 想定内?~ マクソンス視点(2)

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「ルシー……。俺達のために、すまないな……」
「殿下、こちらは私の意思で行っていること。皆様のお役に立てることが、嬉しいのです。お気になさらないでください」

 神殿の中心に設けられた、穢れを一切感じない空間・『祈りの間』。そこへ移動した俺は偽りの忸怩たる思いを吐露し、そうすればすぐ左右の首振りが返ってきた。

「それに先ほど申し上げましたように不調は一切ありませんし、祈りはたったの三十分間です。何一つ苦は存在しておりませんよ」
「…………そう、か。ありがとう、俺達のため、国のために、よろしく頼む」
「はい。お任せください」

 他者を最優先し、他者の幸せを我が事のように喜べる、裏表が微塵もない女。人々にとっては聖女であり人間の鑑で、俺にとってはつまらなく面白みのない女。
 そんなルシーは微笑みを返してきたあと、空間の中央へと歩み、そこにある直径20メートルほどの大きな魔法陣の上に――国中に加護を届けるための装置の上に、立った。

「…………………………。第58代聖女、ルシー・ラナエック。豊穣の祈祷を始めます」

 そしてその体勢で深呼吸を4回行い、精神を統一。しっかりと心を整えたあとは陣に両膝を突き、胸の前で両手を組んだ。
 こうすることで聖女は魔法陣とリンクし、聖女の力を拡散できるようにな――

((ん? ない……?))

 胸の前で手を組む姿を見ていたら、ようやく気が付いた。いつも胸元にある――アイツがいつもつけている、赤色の宝石がついたペンダントがなくなっていることに。

((あれは確か、ルシーが聖女になってからずっとつけていたものだ。どうして今日はつけていないんだ……?))

 不自然なことがあれば放ってはおけない、おきたくない、それが俺。しかしながらこのタイミングで確認は行えないし、なにより、これから面白いことになるんだ。
 そのため突如生まれた疑問は一旦頭の中に置いておき、ルシーを再びしっかりと見つめる。

「…………ラーフェック。私はこの大地の豊穣を願う、貴方の友です。どうか私の願いに応じ、この力を受け入れ糧としてください」

 こうやってこの国に呼びかけ、目を瞑る。そうすれば陣が七色に輝き応えるのだが、今日はそうはならない。
 聖女でなくなっている者に応えるはずもなく、陣は――


 七色に輝く。


 いつものように清らかな光を放ち、いつものようにルシーの呼びかけに応じたのだった。


((…………………………なんだと? ……………………魔法陣が反応した!?))

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