子爵令嬢と伯爵令息の勘違い

第５話 作戦は順調のようだ ロベール＆俯瞰視点

（（ふぅ。どうにか、軌道を修正できたようだな））

　明日のダンスの約束をこぎつけて、リーズ様を教室まで送り届けたあと。僕は自分の教室へと戻りながら、安堵の息を吐いていた。

（（明日の夜は、リーズ様とダンスを行えることになった。これまでとは違う僕を、披露できるな））

　今までの僕のダンスは、基礎の中に落ち着きを含んでいるものだった。しかしながらあの方は、明るく活発で積極的を好まれている。
　そこでダンスにもそういった要素を混ぜ込み、踊りを使って更に距離を縮めようと考えていたのだ。


『明るく活発で、積極的なダンスを踊りたいだと……？　ロベール、急にどうしてしまったのだ……？』
『今の僕に欠けていて、どうしても必要なものなのです。ご指導をお願い致します、父上』


　父はダイナミックなそういった動きを非常に得意としており、社交界では『名手』と絶賛された人。そのため昨夜から指示を仰いでいて、明日の夜には間に合わせることができる。
　授業が終われば即邸に帰り、父上の仕事の手伝いが終われば特訓だ。

「ん？　ロベール、その異様な性格はともかくとしてだ。機嫌がよさそうだな。何かいい事があったのか？」
「ああっ。ランチの際に、もう一つ・・・・いい事があったのさっ！」

　教室に戻ると友人ルノーがジト目と共に声をかけてきたので、それに応じながら着席する。

（（学舎前の時とは違って、今の僕と普通に会話などを行ってくださるようになった））

　恐らくはランチの際のやり取りやその際の言動で、これまでの性格は演じていたものだと理解されたのだろう。そのためロベール・フィラミスは自分好みの性格だと思ってもらえて、気に入っていただけているようだ。

（（このままいけば告白は上手くいく可能性が高く、それになによりだ。あの寂し気な表情を、打ち明けてもらえる））

　ランチの際もさり気なく探ってみたけれど、残念ながら進展はなかった。
　悩みがあるのであれば、早く取り除きたい。一秒でも早く楽になっていただけるよう、努力を続けよう。

（（明るく、活発で、積極的。これらを、しっかりと実行していこう））

　どんな言葉を口にすれば、どんな風に振る舞えば、もっとそう感じてもらえるのか――。それらを考え、やがていくつかの名案が閃いた。

（（……これらを適切なタイミングで出せば……。効果的だな））

　頭の中で何度もシミュレーションを行い、成功を確認して大きく頷く。
　よし。これで明日は、もっとうまくいくぞ！





　※本日は執筆時間を多く確保できましたので、これから複数回投稿をさせていただきます。