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第2話 そうしてはじまる、微妙なすれ違い リーズ視点(1)

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「おやっ? 聞こえなかったのかなっ? リーズ・ハネット様! 僕と一緒にランチをしてくれないかなっ?」

 昨日までとは言動も雰囲気も異なっている、ロベール様。そんなロベール様は私を不思議そうに覗き込み、パチッとウィンクをされました。
 …………いっ、いけませんっ。あまりの出来事に固まってしまい、お返事を行えていませんでした。

「しっ、失礼致しました。ご、ごきげんよう、ロベール様。ら、ランチのお誘い、ありがとうございます。えっ、えっと……」

 だ、駄目です。どうにかお辞儀は行えましたが、そのあとが続きません。
 混乱して、頭の中がぐるぐると回ってしまっていて。なんて答えていいのか、分からなくなってしまっています。

「んんっ? 戸惑っているようだねっ? どうしたんだいっ? 僕は何も気にしないから、気になっていることがあるなら言っておくれよっ」
「は、はい……。で、ではお言葉に甘えて……。…………ロベール様。突然、どうされたのですか……?」

 眩しいくらいに、ニコニコされている点。小刻みに動かれていて、異様にキレがおありな点。何の脈絡もなくランチを誘ってくださった点。などなど。失礼と承知でお伺いしました。
 前日は、普通でしたのに。一夜の間に、何があったのでしょうか……?

「えっ? おかしなことを仰るねっ? 僕はずっとこの僕だよっ?」
『『『『『えっ!?』』』』』

 違いますよね!? 周りにいらっしゃる皆様も驚いて、唖然となっていますよ!?

「あ、あの……。ロベール様……」
「ああゴメンゴメン、今のはジョークだよ。実は僕は、これが本来の性格なのさ」

 これまでは、次期伯爵然とした振る舞いを取っていた。けれど素を出すべきだと思い――どんなことにも正直であるべきだと考え直し、今日からは有りのままの自分で過ごすことにした。
 ロベール様は太陽のような満面の笑みを浮かべながら、説明をしてくださいました。

「今まで騙していて、申し訳ありませんでした。これが真のロベール・フィラミスなのさっ!」
「おっ、おいロベールっ。お前何やってるんだ!? ハネット様や周りが困ってるだろっ。意味不明なウソをつくのは――」
「ルノーっ、君が見ていた僕も偽物なのだよっ! これこそがロベール・フィラミスなのさ!」

 親友であるマニウス伯爵家のルノー様のお声を遮り、素なのだと主張します。
 ですが……。そちらも、違っていますよね……? 私はずっとお慕いしておりましたので、分かります。昨日までのロベール様が、本物のロベール様です。

 どうして、このような行動をされているのでしょうか……?

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