3 / 28
第1話 あの会話の前後にあったやり取り 俯瞰視点
しおりを挟む
「うふふっ、そうでしたのね。憧れのライオニック様とダンス。素敵な夜になりましたわね、ルシール様」
「ええ、一生の思い出となりましたわ。幸せで、大満足ですわ……っ」
「もぅルシール様、ここで満足してしまってはいけませんわよ? 明後日はデートをされるのでしょう? ここからが本番ですわよっ」
「私も、微力ながら応援をさせていただきます。何かご相談があれば、いつでも仰ってくださいね」
((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))
ロベールが会話を耳にして、心の中でそう呟いた少し前。学院内にあるカフェテリアでは、4人の令嬢が食後の紅茶を飲みながら談笑していました。
伯爵令嬢アンリエット・ノレア。伯爵令嬢ルシール・テルエ。子爵令嬢フラヴィ・オリズ。子爵令嬢リーズ・ハネット。彼女達はお茶会仲間でもある同学の友人なため、今日もプライベートな話題で盛り上がっていました。
「そういえば、伺ったことがありませんでしたわ。アンリエット様は初めてのデートの時、いかがでしたの? 緊張しましたの?」
「『次に繋げないと』という思いがあって、緊張して固くなってしまいましたわ。でも現婚約者が優しくエスコートしてくださって、それらはすぅっと消えてしまいましたの」
「まぁ。そうだったんですのね」
「ライオニック様はレオン様の親友で、そんな方が『お優しい』と称されているんですもの。きっと、大丈夫ですわ。素晴らしい一日になりますわよ」
こういった恋に関する話をしたり、
「今日は、犬を飼う夢を見ましたの。アンリエット様、フラヴィ様、リーズ様。犬はお好きでしたっけ?」
こんな他愛もない話をしたり。気心の知れたグループならではの内容で会話が行われ、その夢の話の延長として――
「その子はわたくしが大好きな甘えん坊タイプで、とても可愛らしかったんですの。皆様はどんな性格の子がお好きですの?」
――3人が頷きを返したため、ルシールはこんな質問を行いました。そのため、
「わたくしは、逞しい子ですわ。キリッとしていて格好いい子が好きですの」
「わたしは、アンリエット様とは正反対ですね。大人しくて、可愛らしい雰囲気の子が好きです」
順番に質問に応えてゆき、
「あらまあ、そうなのですね。次は、リーズ様の好みを教えてくださいまし」
「私ですか? そうですね…………。しいて挙げるなら、明るくて活発で積極的、だと嬉しいですね」
リーズは、このように答えました。
そして――
((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))
――それを偶然ロベールが聞いてしまい、このように解釈してしまいます。おまけに彼は友人と歩いていたためすぐにその場を離れることになり、
「明るくて活発で、積極的。でしたら、ゴールデンレトリーバーが近いのかしら?」
「ええ、そうですね。レトリーバーは大好きですっ。叔父様の邸にはランティス君というレトリーバーがいて、伺った際はいつも遊んでいます。ランティス君が――初めて仲良くなった子の性格がそういったものなので、そちらが影響しているのだと思います」
その直後にあった、このやり取りを聞くことができませんでした。
そのため犬に対するやり取りを人に関するものだと思い込み、こうして彼の勘違いが始まってしまったのでした――。
「ええ、一生の思い出となりましたわ。幸せで、大満足ですわ……っ」
「もぅルシール様、ここで満足してしまってはいけませんわよ? 明後日はデートをされるのでしょう? ここからが本番ですわよっ」
「私も、微力ながら応援をさせていただきます。何かご相談があれば、いつでも仰ってくださいね」
((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))
ロベールが会話を耳にして、心の中でそう呟いた少し前。学院内にあるカフェテリアでは、4人の令嬢が食後の紅茶を飲みながら談笑していました。
伯爵令嬢アンリエット・ノレア。伯爵令嬢ルシール・テルエ。子爵令嬢フラヴィ・オリズ。子爵令嬢リーズ・ハネット。彼女達はお茶会仲間でもある同学の友人なため、今日もプライベートな話題で盛り上がっていました。
「そういえば、伺ったことがありませんでしたわ。アンリエット様は初めてのデートの時、いかがでしたの? 緊張しましたの?」
「『次に繋げないと』という思いがあって、緊張して固くなってしまいましたわ。でも現婚約者が優しくエスコートしてくださって、それらはすぅっと消えてしまいましたの」
「まぁ。そうだったんですのね」
「ライオニック様はレオン様の親友で、そんな方が『お優しい』と称されているんですもの。きっと、大丈夫ですわ。素晴らしい一日になりますわよ」
こういった恋に関する話をしたり、
「今日は、犬を飼う夢を見ましたの。アンリエット様、フラヴィ様、リーズ様。犬はお好きでしたっけ?」
こんな他愛もない話をしたり。気心の知れたグループならではの内容で会話が行われ、その夢の話の延長として――
「その子はわたくしが大好きな甘えん坊タイプで、とても可愛らしかったんですの。皆様はどんな性格の子がお好きですの?」
――3人が頷きを返したため、ルシールはこんな質問を行いました。そのため、
「わたくしは、逞しい子ですわ。キリッとしていて格好いい子が好きですの」
「わたしは、アンリエット様とは正反対ですね。大人しくて、可愛らしい雰囲気の子が好きです」
順番に質問に応えてゆき、
「あらまあ、そうなのですね。次は、リーズ様の好みを教えてくださいまし」
「私ですか? そうですね…………。しいて挙げるなら、明るくて活発で積極的、だと嬉しいですね」
リーズは、このように答えました。
そして――
((……明るくて、活発で積極的。それが、リーズ様の好みのタイプなのか……))
――それを偶然ロベールが聞いてしまい、このように解釈してしまいます。おまけに彼は友人と歩いていたためすぐにその場を離れることになり、
「明るくて活発で、積極的。でしたら、ゴールデンレトリーバーが近いのかしら?」
「ええ、そうですね。レトリーバーは大好きですっ。叔父様の邸にはランティス君というレトリーバーがいて、伺った際はいつも遊んでいます。ランティス君が――初めて仲良くなった子の性格がそういったものなので、そちらが影響しているのだと思います」
その直後にあった、このやり取りを聞くことができませんでした。
そのため犬に対するやり取りを人に関するものだと思い込み、こうして彼の勘違いが始まってしまったのでした――。
0
お気に入りに追加
425
あなたにおすすめの小説
幸せな結婚生活に妻が幼馴染と不倫関係、夫は許すことができるか悩み人生を閉じて妻は後悔と罪の意識に苦しむ
window
恋愛
王太子ハリー・アレクサンディア・テオドール殿下と公爵令嬢オリビア・フランソワ・シルフォードはお互い惹かれ合うように恋に落ちて結婚した。
夫ハリー殿下と妻オリビア夫人と一人娘のカミ-ユは人生の幸福を満たしている家庭。
ささいな夫婦喧嘩からハリー殿下がただただ愛している妻オリビア夫人が不倫関係を結んでいる男性がいることを察する。
歳の差があり溺愛している年下の妻は最初に相手の名前を問いただしてもはぐらかそうとして教えてくれない。夫は胸に湧き上がるものすごい違和感を感じた。
ある日、子供と遊んでいると想像の域を遥かに超えた出来事を次々に教えられて今までの幸せな家族の日々が崩れていく。
自然な安らぎのある家庭があるのに禁断の恋愛をしているオリビア夫人をハリー殿下は許すことができるのか日々胸を痛めてぼんやり考える。
長い期間積み重ねた愛情を深めた夫婦は元の関係に戻れるのか頭を悩ませる。オリビア夫人は道ならぬ恋の相手と男女の関係にピリオドを打つことができるのか。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
あなたは愛を誓えますか?
縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。
だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。
皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか?
でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。
これはすれ違い愛の物語です。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
モブ令嬢は白旗など掲げない
セイラ
恋愛
私はとある異世界に転生した。
その世界は生前の乙女ゲーム。私の位置は攻略対象の義姉であり、モブ令嬢だった。
しかしこのモブ令嬢に幸せな終わりはない。悪役令嬢にこき使われ、挙げ句の果てに使い捨てなのだ。私は破滅に進みたくなどない。
こうなれば自ら防ぐのみ!様々な問題に首を突っ込んでしまうが、周りに勘違いをされ周りに人が集まってしまう。
そんな転生の物語です。
転生ヒロインに国を荒らされました。それでも悪役令嬢(わたし)は生きてます。【完結】
古芭白あきら
恋愛
今日、私は40になる。この歳で初めて本当の恋を知った――
聖女ミレーヌは王太子の婚約者として責務を全うしてきた。しかし、新たな聖女エリーの出現で、彼女の運命が大きく動き出す。
エリーは自分を乙女ゲームのヒロインだと言い、ミレーヌを『悪役令嬢』と決めつけ謂れのない罪を被せた。それを信じた婚約者から婚約破棄を言い渡されて投獄されてしまう。
愛していたはずの家族からも、共に『魔獣』を討伐してきた騎士達からも、そして守ってきた筈の民衆からも見放され、辺境の地リアフローデンへと追放されるミレーヌ。
だが意外にも追放先の辺境の地はミレーヌに対して優しく、その地に生きる人々ととの生活に慣れ親しんでいった。
ミレーヌはシスター・ミレとして辺境で心穏やかに過ごしていたが、彼女の耳に王都での不穏な噂が入ってくる。エリーの振る舞いに民達の不満が募っていたのだ。
聖女の聖務を放棄するエリーの奢侈、100年ぶりの魔王復活、異世界からの勇者召喚、そして勇者の失踪と度重なる王家の失政に対する民の怨嗟――次々と王都で問題が湧く。
一方、ミレの聖女としての力で辺境は平穏を保っていた。
その暮らしの中で、ミレは徐々に自分の『価値』と向き合っていく。
そんな中、ミレは黒い髪、黒い瞳の謎の青年と出会う。
この人を寄せ付けないエキゾチックな青年こそがミレの運命だった。
番外編『赤の魔女のフレチェリカ』『小さき聖女シエラ』完結です。
「小説家になろう」にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる