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8話 窮地(2)
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「お父様お母様っ、ナズリさんっ、お止めください! こんなの酷すぎます!!」
「そうだな。我々が行っているのは、心に甚大なる害をもたらすものだ」
「だからね、ミラ。それが嫌なら、ワタシ達がやめるようにすればいいのよ」
「今すぐに教えてくれるのなら、ベルバ殿が持つ火は消す。どうするのかしら?」
三人は心底愉快そうに、睨みつける私を見下ろしてきます。
彼らの瞳に宿っているのは、歓喜と狂気。罪悪感という感情はどこにもなく、目の前にいるのは人型の『何か』に思えます……。
「エリス殿。今は、地獄のような状況ですなあ?」
「『ひ……っ。ぁぁ……。ぁぁぁぁ……』」
「しかしそんな時間は、貴方の行動一つで簡単に終わりを告げますぞ。秘宝が眠る場所へと、案内をしてくれますな?」
お父様が松明を嫌味たらしく揺らしながら、私の顔を覗き込んできます。
「宝を確保できたら、心身の安全は保障致しましょう。案内を、してくれますな」
「『ぁ……。ぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……っ』」
「問いかけには、きちんと答えて欲しいものですな。エリス殿、回答のチャンスはあと1回だけですぞ?」
「「案内を、してくれるわよね?」」
「『わっ、分かった! するっ! します、からっ! お願い……っ。あたし、からっ。火を、離して、ください……っ』」
松明を身体に近づけられてしまい、私は涙まみれになって何度も何度も首を縦に振りました……。
どうにかして、エリスさんを助けたいのですが……。拘束されている私には、炎を消すことも逃げることもできません……。
「はっはっは、賢明な判断ですな。それでは早速ですが、我々を連れていってくれますかな?」
「『……わかり、ました……。………パパ、ママ、みんな……。ごめんなさい……っ』」
濡れた顔を涙が伝い、今度は懺悔の涙が床に落ちていきます。
今のエリスは精神が酷く不安定で、私の声も届きません……。助けるだけではなく、心を和らげることさえもできません……。
「『あたしは……。自分のために、みんなを、うらぎっちゃう……。ごめんなさい……。ごめんなさい……』」
((………………。どうして、エリスが……。こんなに、苦しまないといけないのですか……))
弱弱しい声と心の中に広がる罪悪感を感じていたら、私も涙が溢れるようになりました……。
理不尽に死んで、その怒りで意識が蘇って、そのせいで苦しむ。
なんで、エリスがこんな目に遭わないといけないのですか? なにも悪くないエリスが、こんな目に遭わないといけないのですか?
こんなの、嫌ですっ。このままじゃいけません!
誰かっ。誰か、エリスを助けてくださいっ!!
私の代わりに……っ。この人を、助けてあげてくださいっっ!!
「素直な人間は、好きですぞ。ではレルア、ナズリ殿」
「ええ。そうね」
「みんなで、楽しく。ご対面に向かいましょう――」
「残念ですが、それはできませんよ。お前達の野望は、俺に粉砕されるのだからな」
ナズリさんの声を遮ったのは、扉の破砕音と聞きなれた声。
ドアを蹴り破って表れたのは、私が愛する人。クロードさんでした。
「そうだな。我々が行っているのは、心に甚大なる害をもたらすものだ」
「だからね、ミラ。それが嫌なら、ワタシ達がやめるようにすればいいのよ」
「今すぐに教えてくれるのなら、ベルバ殿が持つ火は消す。どうするのかしら?」
三人は心底愉快そうに、睨みつける私を見下ろしてきます。
彼らの瞳に宿っているのは、歓喜と狂気。罪悪感という感情はどこにもなく、目の前にいるのは人型の『何か』に思えます……。
「エリス殿。今は、地獄のような状況ですなあ?」
「『ひ……っ。ぁぁ……。ぁぁぁぁ……』」
「しかしそんな時間は、貴方の行動一つで簡単に終わりを告げますぞ。秘宝が眠る場所へと、案内をしてくれますな?」
お父様が松明を嫌味たらしく揺らしながら、私の顔を覗き込んできます。
「宝を確保できたら、心身の安全は保障致しましょう。案内を、してくれますな」
「『ぁ……。ぁぁぁ……。ぁぁぁぁぁ……っ』」
「問いかけには、きちんと答えて欲しいものですな。エリス殿、回答のチャンスはあと1回だけですぞ?」
「「案内を、してくれるわよね?」」
「『わっ、分かった! するっ! します、からっ! お願い……っ。あたし、からっ。火を、離して、ください……っ』」
松明を身体に近づけられてしまい、私は涙まみれになって何度も何度も首を縦に振りました……。
どうにかして、エリスさんを助けたいのですが……。拘束されている私には、炎を消すことも逃げることもできません……。
「はっはっは、賢明な判断ですな。それでは早速ですが、我々を連れていってくれますかな?」
「『……わかり、ました……。………パパ、ママ、みんな……。ごめんなさい……っ』」
濡れた顔を涙が伝い、今度は懺悔の涙が床に落ちていきます。
今のエリスは精神が酷く不安定で、私の声も届きません……。助けるだけではなく、心を和らげることさえもできません……。
「『あたしは……。自分のために、みんなを、うらぎっちゃう……。ごめんなさい……。ごめんなさい……』」
((………………。どうして、エリスが……。こんなに、苦しまないといけないのですか……))
弱弱しい声と心の中に広がる罪悪感を感じていたら、私も涙が溢れるようになりました……。
理不尽に死んで、その怒りで意識が蘇って、そのせいで苦しむ。
なんで、エリスがこんな目に遭わないといけないのですか? なにも悪くないエリスが、こんな目に遭わないといけないのですか?
こんなの、嫌ですっ。このままじゃいけません!
誰かっ。誰か、エリスを助けてくださいっ!!
私の代わりに……っ。この人を、助けてあげてくださいっっ!!
「素直な人間は、好きですぞ。ではレルア、ナズリ殿」
「ええ。そうね」
「みんなで、楽しく。ご対面に向かいましょう――」
「残念ですが、それはできませんよ。お前達の野望は、俺に粉砕されるのだからな」
ナズリさんの声を遮ったのは、扉の破砕音と聞きなれた声。
ドアを蹴り破って表れたのは、私が愛する人。クロードさんでした。
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