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第2話 違和感だらけ、そして アニエス視点

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((クリストフ様もジルお義父様もデレジお義母様も、やっぱり何かを隠している。調べてみる必要がありますね……))

 次の日の朝。朝食を済まさせて部屋に戻って来たわたしは、顔を歪めながら室内を見回しました。
 最高級の寝具と家具。この部屋には高価なものばかり置かれていて、わたしは最高と言っていいほどの待遇を受けています。

((でも……))

 今身に着けている三日月のネックレスや『エリス』、髪形の件の却下と大声。その生活の中には、いくつものおかしな点があります。
 この違和感を解明しないと、いずれ大変なことになってしまう――。そんな嫌な確信があり、調査をしてみることにしました。

((まずは一つ目のおかしな点、『エリス』について。あの様子ですと、本人に聞いても答えは出ませんよね……))

 クリストフ様もジルお義父様もデレジお義母様も、本当のことを教えてくれるとは思えません。ですからバーベリアスの方言について、自分で調べたい――ところですが……。
 そういった動きに気付かれてしまったら、何かしらの問題が発生する可能性もあります。
 そこで…………

((4日後にあるお茶会に出席をして、レノア様に伺ってみましょう))

 わたしが在籍するお茶会の主催であり、侯爵令嬢であるレノア様。そんなレノア様のお兄様・レックス様も交換留学生として3年間バーベリアスに渡った経験があり、その地域の言葉についても把握されているはずです。

((あの方がお戻りになられたのは、確か5年前。クリストフ様と時期は多少異なりますが、わたしが知りたいのは『方言』。このくらいの誤差は影響ありませんよね))

 ですので急いでお手紙を書いて、婚約などの都合で一度はお誘いを断っていたお茶会に急遽参加することになりました。

「急に出席したいって言い出したからビックリしたよ。気をつけてねエリス」
「ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。行ってまいります」
「うん、いってらっしゃい。僕に嬉しいことがあって・・・・・・・・・・・、エリスにも嬉しいことがある。とても良いことだ」

 怪しまれないように4日間を過ごし、出発。わたしはアリズランド家の馬車に数時間揺られ、無事目的地であるリーンナル侯爵邸に到着したのでした。

「お会いできて嬉しいですわ。新たな生活は、い――あら? 難しい顔をされていますわね? どうかなさいましたの?」
「はい。実は、お伺いしたいことがありまして――」

 そうして『エリス』という方言についてお兄様に話をお聞きしたいと説明し、幸いにもすぐレックス様が対応してくださることとなりました。

「お待たせしました。俺に用事があるそうだね?」
「お時間をくださり感謝いたします。どうしてもお伺いしたいものがございまして――」

 隣国バーベリアの方言について教えていただきたい。先ほどレノア様にさせていただいたお話を、もう一度行って――

「…………エリス? そんな方言、聞いたことがないよ」

 ――やがて、レックス様のお口から……。信じられない言葉が、告げられたのでした。


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