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6 大事なイタズラ(4)

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「ぅぅ……。ぅぅぅ……」

 脚に大怪我を負って、ヒロは動けなくなってしまう。
 私はヒロが大好きだから、すごく悲しいし今すぐ助けに行きたくなる。
 だけどそうしちゃったら……。このイタズラは元に戻せるけど、そのあとが上手くいかなくなっちゃう。

「クイーン……。お辛いですね……」
「レオンさん、大丈夫です。元に戻ったらヒロの傷はなくなるので、大丈夫です」

 ヒロが気になるけど、今はイタズラの内容に集中してないといけない。
 私はレオンさんに首を振って、ヒロとクロをじっと見るようにしました。

「ぅ……。ぁぅ……。ぅぅぅ――」
「シャァアアア!! フシャアァァァァァ!!」
「ぅぁあっ!? ぁ……。ぁぁ…………」


 そうしてるとクロは更にヒロに攻撃をして、ヒロはもうボロボロ。
 そんなヒロにトドメを刺すために、クロはゆっくりと前足を上げました。

「ぅ……。ぅぅ……」
「残念だったな。終わりだ」

 クロはニヤリと笑って、鋭い爪を出して……。ヒロへと向け、右の前足を勢いよく振り降ろして――


『そこまでだ』


 ――鋭い爪が、ヒロに爪が当たる直前でした。
 1匹の猫が、クロの爪を受け止めました。

「っっ!? だっ、誰だ貴様は……!?」
「俺か? 俺の名前は、トラだ」

 助けに入ったのは、ヒロが最初に出会った猫のトラ。
 トラは自分の縄張りがあるから一緒には行けなかったけど、嫌な予感がして急いでヒロのあとを追いかけていたそうです。

「ち……っ。関係ない者が邪魔をするな……っ!」
「『関係ない者』、だって? 俺は、コイツの友。仲間がイジメられているなら、無関係じゃない。黒猫、今度はこの俺が――東地区のボスが相手だ!!」

 シャー!
 怒りの声を出したトラはクロに飛びかかり、

「ヒロにしたことは、絶対に許さない。覚悟しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
「覚悟するのはお前だ! その程度の怒りで俺に勝てると思うなよぉぉぉぉ!!」
「その程度だとっ? ふざけるな! この怒りはただの怒りとはちがうぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「な!? なんだと!? こ、この俺が、おされて――ぐあっ!? うぁああああああああああああああああああ…………」

 数回お互い攻撃し合ったあと、トラの全ての力を込めた猫パンチがクロに直撃。強いパンチを受けたクロは勢いよく後ろに飛んでいって、地面にバッタリと倒れてしまったのでした。

「……これが、あやかしさんが考えた内容……。クロに助けてもらったヒロは、そのままトラに支えられながら道を進んでいって……」

 ここで2匹の邪魔をしたらイタズラを元に戻せるけど、エンディングが近いのでまだしません。
 私はレオンさんに『あること』をお願いしたあと、ヒロとトラの後ろをそっと歩いていって――
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