本の女王と司書と本のあやかし

柚木ゆず

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5 予想外のイタズラ(1)

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「レオンさん。レオンさんのおかげで、かなりの数のイタズラがなかったことになってますね」

 空地であった2つ目のイタズラが元に戻ってから、もう1時間くらいが過ぎたかな。
 すたすた路地を進むヒロの後ろを歩いているわたしは、お隣に向けてぱちぱち拍手をしました。

 アメリカンショートヘア―の野良猫、ショート。
 キジシロの野良猫、シロ。

 ヒロに大きな影響を与える2匹が出てきたのに、本当のお話にないことは何にも起きなかった。
 この本『猫の大冒険』にイタズラをしたあやかしさんは、ヒロの『修行』に関係したイタズラをたくさんしてたんだと思う。
 だからお話の進行に絶対必要な部分がなくなって、まとめて消えちゃってるみたい。

「ふふ、そのようですね。お役に立てて光栄です」
「ショートとシロが関わるところはお話の中でも長く描かれていて、特にシロが出てくる部分は2番目にお話が長かったんです。それにさっきのトラ以上に2匹で行動するので元に戻すのは大変だなって思っていて、とても助かりました」

 小さな川に落ちてしまったヒロを、偶然近くにいたシロが命がけで助けてくれる。
 それが、ヒロとシロのお話。
 この出来事でヒロは、思いやりの心を学ぶんだけどね。

『どうして僕を助けてくれたの……?』
『君はヘンなことを聞くんだね。死にそうになってる子を助けるのは当然だよ?』

 質問をする方がおかしい。
 そんな風に思っているシロが素敵で、初めて読んだ時カッコイイって思った。すぐにシロが大好きになったんだよね。

「確かにヒロ殿とシロ殿は、ずっと近くにいましたね。ヒロ殿は川に落ちたショックで弱っていて、先ほどのような手は使えませんでした。そこに手を加えられていたら解決にてこずっていたでしょうし、嬉しい誤算ですね」
「そうですね。ヒロがここまで来てるってことは、お話の3分の2くらいが進んでいます。もうひと頑張り、ですね――あっ!!」

 胸の前で手をギュッと握りしめていた私は、つい大きな声を出してしまいました。
 なぜなら――

「わあ!? なんなのっ!?」

 ――突然、ヒロの足元に黒色の魔法陣が現れて……。
 その魔法陣から飛び出てきた牢屋に、ヒロが閉じ込められてしまったからです。
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