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第17話 想いを乗せて アリア視点

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((……レイオン様。あの日貴方様は、わたしの音色は羽のようだと褒めてくださりましたよね。とても嬉しかったです))

 修道服を纏って会場に入り、ピアノの前にある椅子に座ったあとのこと。わたしは鍵盤を指でそっとなぞり、『始まりの日』の出来事を振り返っていきました。

((惹かれた音を奏でるその方から、そんな風に仰ってもらえるだなんて。幸せでした))

 それだけでも幸福なことなのに、次の約束をしていただけて。そこからよくお会いするようになって。一緒にコンサートに行ったりピアノについてお話ししたり。
 更には、想っていただけるようになったり。
 まるで夢のようです。

((……レイオン様はわたしと交際をできるように、見えないところで行動してくださっていたんですよね))

 そのようなことをしていただけるなんて、思っていなくて。あの時はおもわず混乱してしまいました。

((…………レイオン様。ずっと、ありがとうございます))

 感謝しています。

((そんなレイオン様は。そのあと起きてしまうわたしの異変に、すぐ気付いてくださりましたよね))

 おかしいと感じて、行動してくださって、真実を把握して。わたしのために怒ってもくれましたよね。

((レイオン様。ありがとうございます))

 感謝、しています。
 だから。

((だからこれからもう一度、恩返しをさせていただきますね))

 今の貴方様は気付けなくなってしまっていますが、教わった記憶や現状は嘘だらけなんです。利用、されてしまっているんです。

((なにも知らないまま、最悪な未来へと進んでしまう。天国の皮をかぶった地獄へとたどり着いてしまう。そんなことにはさせません))

 絶対に。

((…………レイオン様。今、お救いしますね))

 記憶の回復。そんなことが可能なのか分かりません。
 そういった前例は、ないそうです。
 成功する確率は、極めて低いそうです。
 けど。

 そんなことは関係ありません。

 出来る出来ないではなく、やるんです。
 成功させないと、いけないんです。

((この音で、世界を鮮明にしてみせます))


 レイオン様。
 わたしの音を、お聴きください。





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