大好きな人の幼馴染は、とても酷い人でした

第１０話 それは不意に アリア視点（４）

「『レーリアックの奇跡』という伝承、小説をご存じでしょうか？」

　頭の中が真っ白になっていると、そんなレイオン様のお声が聞こえてきました。
　レーリアックの奇跡……。もちろん、知っています……。

「レーリアック湖で３０日間祈りを捧げる。幼馴染が――ミータイアス伯爵家のオルネラという女性が行ってくれて、そのおかげで１５日前に――達成してくれた２日後に、４０数日振りに意識が回復したんですよ」
「……………………」
「１か月以上も動けていなかった影響で全身の筋肉が弱っていて、ずっとリハビリをしていた――今もしているんです。お医者様によるともう少ししたら、外出しても構わないそうなんですよ」
「……………………」
「突然こんなことになってしまい、親族友人など多くの人を心配させてしまいました。恐らく貴方もその中の一人で、体調が整い次第ご報告に伺おうとしていて――？？？　唇が真っ青になっていますよ……？　どうかされたのですか……？」

　頭の中が混乱していて、なにも反応できない。なにも考えられない。
　ただただレイオン様を見つめていたら、レイオン様は首を傾げられました……。

「もしかして……。僕は、なにか変なことを口にしてしまったのでしょうか……？」
「……………………」
「きっと、そうなのですよね？　申し訳ございません。謝罪をさせていただきます」
「……………………ち、ちが……。そ、そうでは――」
「レイオン、謝罪なんて要らないわ。貴方は謝る必要はないし、それ以上その女と話しをしてはいけないわ」

　そうではなくて。どうにかそのように口を動かそうとした、その時でした。わたしを更なる衝撃が襲います。

「…………ミータイアイス、さま……？」

　レイオン様の後ろから――お屋敷の中から出てきた女性。それはオルネラ・ミータイアス様――レイオン様を助けたことになっている人が、この場に現れたからです。

「？？？　話をしてはいけない？　オルネラ、どういうことなんだい？」
「……あのねレイオン。そこにいるのは、わたくしが――わたしやおじ様達が口にしていた女の。あの・・、アリア・ニーラックなのよ」
「……なんだって……！　この人が、あの……」

　オルネラ様の言葉を聞いたレイオン様の顔が急に険しくなり、え……？　急に一歩下がり、わたしを警戒するようになってしまいました。

「れ、レイオン、さま……？　どうなさったのですか……？　『あの』とは、いったいどういう……？」
「はぁ、白々しいわね。記憶喪失だと聞いて、レイオンに嘘を吹き込めるとでも思ったのかしら？　残念だけど無駄よ。貴方の悪事を消すことなんてできないわ」

　悪事……？
　この方も、何を言っているのですか……？