上 下
15 / 56

第6話 最悪の来訪 アリア視点(2)

しおりを挟む
「そんな……。あの夜……そんなことが、起きていただなんて……」

 レイオン様は、異変に気付いてくださっていた――。
 その理由は分かりませんが何かしらが切っ掛けとなって違和感を覚え、巧みな誘導によって事実を聞き出していたのです。
 それによって脅迫を知り、お優しいレイオン様はすぐに行動してくださった。わたしに事情を伝え関係者に謝罪をさせるために、まずはミータイアス伯爵邸に向かっていて……。
 その日は、強い雨が降っていて……。
 天候の影響で車輪が滑り、馬車が横転してしまって……。激しく動く車内で、お父様を庇われて……。その際にご自身が、頭を強く打ってしまい……。
 その怪我は命に別状はなかったものの、その日からずっと眠ったままだなのそうです……。

「医者の話によると、回復する見込みは少ない。仮に回復したとしても、何かしらの後遺症が残り続ける可能性が高い。90パーセント以上の確率で、どこかしらに問題が発生するそうよ」
「………………。ま、まさか……。あなた様は……」
「ええそうよ。いつ目覚めるか分からない上に、運よく目覚めたとしてもそのレイオンは問題あり。そんな人間要らないわ」

 …………。
 そのようなことを、さらっと――僅かの罪悪感もなしに言えてしまえるだなんて。
 この人は、人間ではありません。悪魔です。

「……ミータイアス様……。あなたは、酷い人です。最低の人間です……!!」

 人様に向かって暴言を吐くのは言語道断。ひどい無礼です。
 けれどそれでも、そう言わずには要られませんでした。

「ふぅん、そう。へ~ぇ。…………あらまぁっ、手が滑っちゃったわ!!」
「きゃあ!?」

 突然左の頬を衝撃が襲い、その勢いでわたしは転んでしまいました。
 手が滑ったなんて、真っ赤な嘘。ミータイス様は力を思い切り込めて、平手打ちをした……。

「格上であるわたくしに暴言を吐いたのに、それだけで済むんだもの。有り難く思いなさいよ」
「………………」
「なによその生意気な目は。ねえ、アリア・ニーラック。なにか文句あるの?」
「…………。いえ……。ありません」

 言いたいことは、たくさんあります。でもそうすれば今度こそ、お父様やお母様に迷惑がかかってしまいます。
 わたしは感情を飲み込み、首を左右に振りました。

「ふふ。ふふっ。弱者は無様よねぇ」
「………………」
「まあいいわ。用は済んだことだし――いけない、大事なことを忘れていたわ」

 大事な、こと……?

「おじ様とおば様が、貴女と話しがしたいと言っていた――すぐに了承を得られないなら、明日自分たちが訪ねると言っていたわ。あっちには眠っているレイオンもいるんだし、行ってみたらいいんじゃないかしら?」
「……わたしと……はなしを、したい……」
「今度こそ、用は済んだから失礼するわ。……レイオンとお幸せに。ふふふ」

 ミータイアス様は最後までやりたい放題で、嫌みたっぷりにウィンクをして去られました。
 ですのでわたしは、すぐに部屋を出て――



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。

鈴木べにこ
恋愛
 幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。  突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。  ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。 カクヨム、小説家になろうでも連載中。 ※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。 初投稿です。 勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و 気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。 【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】 という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリアン・スチール公爵令嬢18歳デビット王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

生まれたときから今日まで無かったことにしてください。

はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。 物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。 週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。 当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。 家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。 でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。 家族の中心は姉だから。 決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。 ………… 処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。 本編完結。 番外編数話続きます。 続編(2章) 『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。 そちらもよろしくお願いします。

バイバイ、旦那様。【本編完結済】

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
妻シャノンが屋敷を出て行ったお話。 この作品はフィクションです。 作者独自の世界観です。ご了承ください。 7/31 お話の至らぬところを少し訂正させていただきました。 申し訳ありません。大筋に変更はありません。 8/1 追加話を公開させていただきます。 リクエストしてくださった皆様、ありがとうございます。 調子に乗って書いてしまいました。 この後もちょこちょこ追加話を公開予定です。 甘いです(個人比)。嫌いな方はお避け下さい。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

その愛は本当にわたしに向けられているのですか?

柚木ゆず
恋愛
「貴女から目を離せなくなってしまいました。この先の人生を、僕と一緒に歩んで欲しいと思っています」  わたしアニエスは、そんな突然の申し出によって……。大好きだった人との婚約を解消することになり、アリズランド伯爵令息クリストフ様と婚約をすることとなりました。  お父様の命令には逆らえない……。貴族に生まれたからには、そんなこともある……。  溢れてくる悲しみを堪えわたしはクリストフ様の元で暮らすようになり、クリストフ様はとても良くしてくださいました。  ですが、ある日……。わたしはそんなクリストフ様の言動に、大きな違和感を覚えるようになるのでした。

運命の歯車が壊れるとき

和泉鷹央
恋愛
 戦争に行くから、君とは結婚できない。  恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。    他の投稿サイトでも掲載しております。

夫に離縁が切り出せません

えんどう
恋愛
 初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。  妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。

処理中です...