19 / 34
第11話 見る目のない男・セルジュ 俯瞰視点
しおりを挟む
((うふふふふ。あと少しで、1ランク上の生活が始まるのね))
スレン侯爵家邸内――。自身が所属するお茶会の主催者である、長女リーナの屋敷で開かれる舞踏会。その絢爛な会場で、エレーヌは密かに笑みを浮かべていました。
『わたしのために、婚約を解消してくださる。そこまで仰られるほどに想われている。そう知ってしまったら…………わたしも、同じ気持ちとなってしまっておりますわ』
あの夜に行った返事は、全て嘘。彼女に愛は、一切ありませんでした。
エレーヌは、それほどまでにセルジュが――伯爵家令息が自分を愛していると知り、ゆくゆくは伯爵を尻に敷けると判断。彼は元々顔が良かったこともあり、相思相愛となったフリをしていただけなのです。
((今まで何度も、我慢をしてきたんだもの。これからはしっかり払ってもらわないといけないわ))
定期的に行っていた、深夜の密会。セルジュとのキスや、それ以上の行為――。そういったものは全て、1ランク上の毎日を得られるための行動でした。
そのためエレーヌは様々なことを考えていて、このあとの『大イベント』が終われば、本格的に動き出そうと企んでいたのでした。
今夜この場で行われる大イベント。それは、1組の男女による運命の出逢い。
偶然ダンスを行うようになった、セルジュ・ガ―レンドとエレーヌ・ルレアル。2人は相手を身近で感じたことにより、お互いを『出逢うべき相手』と実感。そうしてこの場で交際を宣言し、周囲からは『新たな第一歩』を温かく祝福される――。
セルジュはそういったシナリオを、必死になって用意していたのです。
最愛の人に、こんな内心があるとは知らずに。
「レディ。なぜか貴方へと導かれてしまいました。どうか一曲、貴方と過ごすことをお許しください」
「よろこんで。光栄でございます」
初対面のフリをしている、けれど心の中では満面の笑みを浮かべているセルジュ。彼は目の前にいる女性が、レティシアとはまるで違うとは――打算、他意にまみれているとは知りません。
そのため2人はダンスを踊り、それが終わると第2段階の始まりです。
「………………」
「………………」
まず2人は驚いたように顔を見合わせ、やがて同時に声を上げます。そして同じタイミングで笑い、同じタイミングで想いを打ち明け――突然芽生えたその恋は、成就。こうして2人の関係は公となり、幸せの始まり…………とはなりません。
セルジュとエレーヌが破顔し、大きな拍手で包まれる会場。その外では――
スレン侯爵家邸内――。自身が所属するお茶会の主催者である、長女リーナの屋敷で開かれる舞踏会。その絢爛な会場で、エレーヌは密かに笑みを浮かべていました。
『わたしのために、婚約を解消してくださる。そこまで仰られるほどに想われている。そう知ってしまったら…………わたしも、同じ気持ちとなってしまっておりますわ』
あの夜に行った返事は、全て嘘。彼女に愛は、一切ありませんでした。
エレーヌは、それほどまでにセルジュが――伯爵家令息が自分を愛していると知り、ゆくゆくは伯爵を尻に敷けると判断。彼は元々顔が良かったこともあり、相思相愛となったフリをしていただけなのです。
((今まで何度も、我慢をしてきたんだもの。これからはしっかり払ってもらわないといけないわ))
定期的に行っていた、深夜の密会。セルジュとのキスや、それ以上の行為――。そういったものは全て、1ランク上の毎日を得られるための行動でした。
そのためエレーヌは様々なことを考えていて、このあとの『大イベント』が終われば、本格的に動き出そうと企んでいたのでした。
今夜この場で行われる大イベント。それは、1組の男女による運命の出逢い。
偶然ダンスを行うようになった、セルジュ・ガ―レンドとエレーヌ・ルレアル。2人は相手を身近で感じたことにより、お互いを『出逢うべき相手』と実感。そうしてこの場で交際を宣言し、周囲からは『新たな第一歩』を温かく祝福される――。
セルジュはそういったシナリオを、必死になって用意していたのです。
最愛の人に、こんな内心があるとは知らずに。
「レディ。なぜか貴方へと導かれてしまいました。どうか一曲、貴方と過ごすことをお許しください」
「よろこんで。光栄でございます」
初対面のフリをしている、けれど心の中では満面の笑みを浮かべているセルジュ。彼は目の前にいる女性が、レティシアとはまるで違うとは――打算、他意にまみれているとは知りません。
そのため2人はダンスを踊り、それが終わると第2段階の始まりです。
「………………」
「………………」
まず2人は驚いたように顔を見合わせ、やがて同時に声を上げます。そして同じタイミングで笑い、同じタイミングで想いを打ち明け――突然芽生えたその恋は、成就。こうして2人の関係は公となり、幸せの始まり…………とはなりません。
セルジュとエレーヌが破顔し、大きな拍手で包まれる会場。その外では――
1
お気に入りに追加
1,082
あなたにおすすめの小説
クリスティーヌの華麗なる復讐[完]
風龍佳乃
恋愛
伯爵家に生まれたクリスティーヌは
代々ボーン家に現れる魔力が弱く
その事が原因で次第に家族から相手に
されなくなってしまった。
使用人達からも理不尽な扱いを受けるが
婚約者のビルウィルの笑顔に救われて
過ごしている。
ところが魔力のせいでビルウィルとの
婚約が白紙となってしまい、更には
ビルウィルの新しい婚約者が
妹のティファニーだと知り
全てに失望するクリスティーヌだが
突然、強力な魔力を覚醒させた事で
虐げてきたボーン家の人々に復讐を誓う
クリスティーヌの華麗なざまぁによって
見事な逆転人生を歩む事になるのだった
元王妃は時間をさかのぼったため、今度は愛してもらえる様に、(殿下は論外)頑張るらしい。
あはははは
恋愛
本日わたくし、ユリア アーベントロートは、処刑されるそうです。
願わくは、来世は愛されて生きてみたいですね。
王妃になるために生まれ、王妃になるための血を吐くような教育にも耐えた、ユリアの真意はなんであっただろう。
わあああぁ 人々の歓声が上がる。そして王は言った。
「皆の者、悪女 ユリア アーベントロートは、処刑された!」
誰も知らない。知っていても誰も理解しない。しようとしない。彼女、ユリアの最後の言葉を。
「わたくしはただ、愛されたかっただけなのです。愛されたいと、思うことは、罪なのですか?愛されているのを見て、うらやましいと思うことは、いけないのですか?」
彼女が求めていたのは、権力でも地位でもなかった。彼女が本当に欲しかったのは、愛だった。
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
恋愛に興味がない私は王子に愛人を充てがう。そんな彼は、私に本当の愛を知るべきだと言って婚約破棄を告げてきた
キョウキョウ
恋愛
恋愛が面倒だった。自分よりも、恋愛したいと求める女性を身代わりとして王子の相手に充てがった。
彼は、恋愛上手でモテる人間だと勘違いしたようだった。愛に溺れていた。
そんな彼から婚約破棄を告げられる。
決定事項のようなタイミングで、私に拒否権はないようだ。
仕方がないから、私は面倒の少ない別の相手を探すことにした。
酷いことをしたのはあなたの方です
風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。
あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。
ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。
聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。
※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。
※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。
※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。
あなたとの縁を切らせてもらいます
しろねこ。
恋愛
婚約解消の話が婚約者の口から出たから改めて考えた。
彼と私はどうなるべきか。
彼の気持ちは私になく、私も彼に対して思う事は無くなった。お互いに惹かれていないならば、そして納得しているならば、もういいのではないか。
「あなたとの縁を切らせてください」
あくまでも自分のけじめの為にその言葉を伝えた。
新しい道を歩みたくて言った事だけれど、どうもそこから彼の人生が転落し始めたようで……。
さらりと読める長さです、お読み頂けると嬉しいです( ˘ω˘ )
小説家になろうさん、カクヨムさん、ノベルアップ+さんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる