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エピローグ クリスチアーヌ視点

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「………………では。今度こそ、始めますかな」
「そうですな」
「クリスチアーヌ様」
「ええ。サミュエル様」

 深夜0時過ぎ。普段は絶対に外にいない時間に、わたし、サミュエル様、お父様、ゾルゾハーズ卿は、庭にいた。

 ――婚約が結ばれた際は固く握手を交わし、その後は庭で乾杯をするのがこの国リングロードの定番――。

 なんだか昔のことのように思えるけど、昨日――0時をちょっと過ぎちゃってるから、一昨日になるわね。わたし達が庭で乾杯をしようとしている時に、異変が起きてしまった。
 書類上ではすでにそうなっているものの『この国の定番儀式』をキチンと済ませないと、自信を持って婚約者を名乗れない。だから自信を持って婚約者を名乗れるようにするために、これから最後の工程を行う。

「……クリスチアーヌ、ありがとう」
「クリスチアーヌ嬢。ありがとうございました」
「クリスチアーヌ様、あと一回だけ言わせてくださいね。ありがとうございます」

 お父様、ゾルゾハーズ卿、サミュエル様が並んで頭を下げて、今こうして平和に過ごせることへの感謝を改めて伝えてくれる。そうして『お礼』が終わるとサミュエル様はわたしの隣へと移動し、いよいよ、最後の仕上げが始まる。

「クリスチアーヌ、サミュエルくん、おめでとう」
「サミュエル、クリスチアーヌ嬢、おめでとう」
「お父様、お義父様・・・・。ありがとうございます」
「父上、お義父さん・・・・・。ありがとうございます」

 お父様達は、ワインが入ったグラスを。わたし達は、ぶどうのジュースが入ったグラスを。順番に掲げていって――

「「「「かんぱい」」」」

 ――グラスを合わせて、グラスの中の液体を一気に飲み干す。
 これでこの国での『婚約の儀式』はすべて終わり、わたしとサミュエル様は正真正銘の婚約者となったのだった。

「サミュエル様。これからも、よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。……クリスチアーヌ様。僕は僕なりの方法で貴方を守り、幸せをお届けしますね」
「はいっ。楽しみにしております!」


 かつてリリアンと呼ばれていた時代に、経験できなかったもの。クラリスの話を聞いて、自分自身も体験してみたくなったもの。

 薔薇色の日々。
 そして、虹色の日々。

 それがどんなものなのか、本当に楽しみ。
 そんな魅力的な日々を、この人と過ごせることが、楽しみで仕方がない。





 サミュエル様。
 わたしは。貴方に出会えて、とっても幸せです!
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