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第12話 裏側 シルヴィ視点

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「みんな、お帰り。ありがとう」
 ジャゾン様が血相を変えて逃げ出してから、5分くらいが経った頃でした。護衛のうちの4名――ジャゾン様を追いかけていた人達が戻り、エクトルさんが労いの言葉をかけました。

『現場に着いてから説明した方が分かりやすい、というのも嘘。スムーズにココに――人の気配がまったくない場所に運ぶために、吐いた嘘なんだよ』

『お前をここで刺殺し、埋める。そうすれば誰にも気付かれない。よしんば気付かれたとしても、僕の関与を疑われることはない。証拠隠滅の完成だ』

 あの言葉も、嘘。あれは――護衛の皆さんがジャゾン様を取り囲んでいなかったのも、全部作戦なんですよね。

『シルヴィ。このあと、最後のお礼を始めようと思うんだ』

 ジャゾン様の自白を聞いている時に、コッソリ教えてくれました。
 ジャゾンを殺すつもりもないし、これ以上相手にするつもりもない。でもあの男にはしっかりとした罰を与えたい。
 だから――

 一生恐怖と共に生きていくようにさせる。

 殺意をむき出しにした相手から辛うじて逃げ切ったものの、少し落ち着けばすぐに、『捕まえるまで探し続ける』ということに気付く。
 そうすることで、あの方の人生がそのように変貌してしまうのです。


「あの様子なら小一時間は逃げ続けて、どこかの街に逃げ込んで安心する。でもすぐに、笑ってはいられなくなる」
「エクトルさんが探し始めると思い込んで、怯え始めますね」
「そうなったら、言わずもがな。楽しい人生に・・・・・・なるだろうね」

 エクトルさんは微苦笑を浮かべながら肩を竦め、パンと手を叩きました。

「じゃあ、帰ろうか。僕達の帰るべき場所に」
「そうですね。戻りましょう」

 各地で自供があった影響で、予定が1日押してしまっています。訪れたい場所は全て足を運んでいますので、『ラクティアース』に戻りましょう。


 エクトル様のおかげでモヤモヤも怒りもなくなって、やっと完全に、過去と完全に決別できたと言い切れます。ですので話題の変更に合わせて元関係者たちのアレコレも頭から追い出し、わたし達は笑顔で馬車に乗り込んだのでした。







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