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第10話 今日は返って来る日 ~シビーユ達の場合~ 俯瞰視点(3)

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「兄上とシビーユ――他貴族の次女を自身の都合で消息不明にし、あまつさえ夫の殺害を企んだ。そんな人間を置いたままにしていたら、ラクライス家が致命傷を負ってしまう。家のために消えてもらいます」

 シビーユの叔父ローランドは――他の親族も、それらの話は一切聞かされていませんでした。そのため言葉こそ丁寧なものの、その顔は真っ赤になっていました。

「出来る限り世間の溜飲を下げられるよう、特に厳しい場所――人気(ひとけ)が少ない街『ローダール』に送る。もちろん、無一文でね」
「ま、待ってくれ! お前まで信用しているのか!? あれは作り話だ!」
「そうなんですの!! アレはっ、わたくし達を陥れるための罠! 根も葉もない話でして――」
「あの書類はどう説明するのですか? それに、侍女や家令、使用人達も証言をしている。作り話でも根も葉もない話でもなく、すべて事実だ」

 使用人達は血相を変えたジャゾンを見ていますし、近しいものに毒殺の準備をさせていました。新当主に嘘を吐くメリットはなく、ローランドにありのままを伝えていたのです。

「「……………………」」
「言い訳は無意味です。理解したら、僕の指示に従い馬車に向かってください」
「…………お、叔父様……。内密にしていたら、誰も気付きませんわ……。どこかに匿って――」
「ラクライス家の名に傷をつけた者に与える温情などありません。兄上、シビーユ、馬車に向かってください」
「お願いしますわ! どうかご慈悲を……!」
「たのむ……! これまでの功績を考慮してくれ! ずっとラクライス家を盛り上げてきたじゃないか――」
「今回の件で、それ以上のダメージを受けてしまっているのですよ」

 プラマイ0どころか、大きなマイナス。結果として足を引っ張るだけの存在と――過去最低の当主となっていました。

「そっ、それでもなんとか! 姪ですしっ、大目に見てください!」
「我々は苦楽を共にしてきた実の兄弟じゃないか! 兄を助けてくれ!」
「できません。……お前達、この者達を連れて行ってくれ」
「! おじさ――きゃああ!?」「! ろーらん――うわああ!?」

 今はもうローランドの傘下に入っている男4人が2人を拘束し、シビーユとルイは外へと連れ出されてしまいました。そして乱暴に馬車に押し込まれると、2人を乗せた馬車は静かに動き出して――




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