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第7話 突然、ではない提案 シルヴィ視点

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「5年前のシルヴィの追放は、自己中心的な捏造によるものだった。それを大勢の前で公表したらさっき言ったことは止めてやる」

 エクトルさんの望みは、証言。かつてわたしの身に起きたことへの対応でした。

「僕はお前と同じくらい、シビーユ達――関係者たちに腹が立っていたんだよ。せっかく全員にお礼ができるチャンスが来たのだから、この機会に攻めてやろうと思ったのさ」
「な、なるほど……! そうですよねっ、仰る通りだと思います! た、ただ……」
「ただ?」
「俺の証言だけですと、その……。言い分が事実だと、信じてはもらえない可能性が高い状況となっているのですよ……」

 シビーユはすでに『逃亡』に関する手を打っていて、俺が『ジビーユに殺される』と治安機関に助けを求めても意味がないようにしている――自分は何かしらの悪者にされていて、そんなものが言ったことは信用されない。ずっと逃げていたからシビーユが手を打っているかは分からないけど、あの女ならそうしないはずがない。見ていないけれど断言できます。
 ジャゾン様はそう説明され、そこに関しては同意です。ああいったことをされる方は、真っ先に保身を行いますから。

「そちらに関する証拠があれば、話が変わりますが……。あいにくそういったものは、なくて……」
「いいや、ある。5年前ミウサンサ子爵家当主に金を渡し、長女の縁結びを約束した際に、契約書を用意したそうじゃないか。そいつを使えばいい」
「あっ、そういえばそんなものがありました! そちらを使えば――駄目です……。その書類はもちろんまだ保管されてはいますが、その場所はミウサンサ子爵邸とウチの屋敷……。ミウサンサ子爵家はわざわざ自分の首を絞める真似はしませんし……。父は――父も母もわが身が一番で、協力なんてするはずがありません……」

 かつてジャゾン様と婚約を結んでいたので、当主ご夫妻はよく知っています。あの方々は息子を溺愛していましたが、それよりも自分達が可愛い。
 子どもが危険な状態になっても一切手を貸さない人たちで、その証拠にジャゾン様が言っていたように、ジャゾン様はオラワサル伯爵家に逃げ込もうとしていません。

「従いたい気持ちはあるのですが……。そうできないのですよ……」
「そこも違う。お前を上手く使えば契約書は手に入るんだよ」
「え!? そうなのですか!?」

 これに関しては、わたしも同じく驚いてしまいます。
 できないはずなのに、できてしまえる……?

「エクトルさん。どうやって行うのですか?」
「それは――少しでも早く動き出さないといけないから、説明は車内でさせてもらうよ。……その男を縛って車馬に」
「「「「はっ!」」」」

 ジャゾン様は後ろ手に縛られ、そんな彼と一緒に馬車に乗り込みます。そうしてわたし達を乗せた馬車は、オラワサル伯爵邸を目指して走り出し――

「――というわけなんだ。こうしておけば解決するでしょう?」
「は、はい、そうですね。盲点でした」

 ――その後移動中に計画の全貌を教えてもらい、それから数時間に目的地に到着しました。

「エクトルさん。わたしもご一緒します」
「あの人達と会うと、余計に嫌な思いをしてしまう。シルヴィはここで、お菓子でも食べながら待っていて」

 ここでも、気を遣ってくださいました。優しく微笑んだエクトルさんはジャゾン様と護衛2人を連れて馬車から降り、門番のひとりと共にお屋敷へと入っていって――

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