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第5話 ようやく気付いた男 シルヴィ視点

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「しっ、しっっ、シルヴィ!? お前はっシルヴィなのかっ!? あのシルヴィなのかっっ!?」

 激しく目を見開き、腰を抜かしたジャゾン様。魚のように口をパクパクしながら、激しく震える指でわたしを差しました。

「……ええ、そうですよ。お久しぶりですね、ジャゾン様。5年前はお世話になりました・・・・・・・・・
「!!!!!!!!!!!」

 貴族相手ですのでカーテシーを行うと、ジャゾン様の血色はますます悪くなる。唇の色は真っ青を通り越し、紫色になってしまいました。

「まさかこんな形で再会するだなんて。思ってもみませんでした」
「どぉっ、どうしてここに!? ここに居る!?」
「僕達は昨日(さくじつ)結婚をしていましてね、彼女のおばあ様にそのご報告をしに来ていたんです。その後こうして思い出の場所を訪れていて、偶然出会ってしまったというわけなのですよ」

 同時刻逃走中に立ち寄り、わたし達の姿を見つけて声をかける。いくつもの偶然が重なった、すごい確率の出来事ですね。

「………………………………」
「彼女も僕も、当初は正体を明かさず去るつもりだった。シルヴィが抱いた疑問が解消されたら、馬車に乗って次の目的地を目指す予定だったのですよ」
「………………………………」
「けれどそんな予定は、変更されることとなった。貴方の発言によって」

『お待ちください!! どうかお助けください!! 実はっ、今回だけじゃないんですっっ! 以前も酷いことがあったんですっ! 前の婚約者にも酷い裏切りをされていてっ、俺はこれまで散々な人生を歩んできたんですっ!! ずっと真面目にっ、真摯に生きてきたのにっ、こんなことになってしまった! こんな形で終わりたくないんですっ! どうかっ、どうかっっ、お助けくださいませ!!』

 この言葉を聞き、わたしの足は止まりました。

「『人の悪い部分を集めたゴミ』、その後飛び出したありもしない言い分。アレらによってシルヴィは酷く不快な思いをしましたし、大切な人が嫌な思いをして僕も非常に気分が悪くなった。それになにより――過去の出来事を聞いた時から、貴方に激しい怒りを抱いていたのですよ」
「………………………………」
「これまでのことと、今日のこと。1つと2つが合わさり、僕は決めたのですよ」

 ぱちんと、指を鳴らす。その音と同時に、護衛の皆さんが動き出し――あっという間に、ジャゾン様を取り囲んだのでした。


「これまでのお礼をさせてもらうとね」



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