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第3話 した者が、される側になっていた シルヴィ視点
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((……おばあ様が言っていた通りですね))
これまでに起きていたこと、ラクライス様の心変わりによる決死の逃走。一部始終を聞いたわたしは、真っ先に『因果応報』という言葉が浮かんできました。
『いいかいシルヴィ。悪いことをしたらね、全部自分に返ってきてしまうんだよ』
あの時わたしに行ったようなことが、しっかりとその身に返ってきてしまっている。改めて、その通りだと感じます。
「シビーユさ――あの女は本気です! 長年夫として傍にいたからよく分かります! あの女は自分のためなら平気でなんでもやってしまう!! 人ですら虫を始末するように殺せてしまう人間なのですよ!!」
「……そうでしたか」
「そうなのです男性の御方! 俺はそんな危険人物に追いかけられていて、今頃あちこちに追手がばら撒かれているはず! いつまで逃げ切れるか分からない、とてつもなく切羽詰まった状態なんですっ!」
エクトルさんに向けて首が取れそうな程に頷き、ジャゾン様は再び胸の前で強く手を組みました。
「ですのでどうかお願い致します!! どうか一緒に連れて行ってください! そちらの馬車に乗せていただきっ、隣国に逃がしてください!」
このタイミングならまだあらゆる偽装が行われていないから、問題なく国境を越えられる――。誰が自分を連れて国境を越えたか分からないから、ラクライス侯爵家に目をつけられる心配もない――。
危険性は0なのだと信じられない程の早口で説明をし、エクトルさんとわたしを交互に見つめました。
「もしかすると――きっとこれが最後のチャンス。貴方様がた以外に頼れる人はいないのですっ! どうか……どうか……お願い致します! 俺を……お助けください……!」
「申し訳ありません。そちらは出来かねます」
言下、でした。エクトルさんが淡々と、左右に首を振ってくれました。
「なっ!? なぜなのですか!? どうして助けてくださらないのですか!?」
「その理由を説明する義務はありません。……僕らは先を急いでいるのですよ。失礼いたします」
元凶なのだから協力するはずがない――。そう返すと、面倒くさいことになってしまうからなのでしょう。エクトルさんが早々に話を切り上げ、わたしの手をそっと握って、歩き出しました。
ですのでわたしは優しく手を引かれ、馬車へと戻って――
((っ!))
――馬車に乗り込もうとしていた時、でした。不意に体温がカッと上昇し、無意識的に足が止まってしまうことになったのでした。
なぜならば、後ろから――
「お待ちください!! どうかお助けください!! 実はっ、今回だけじゃないんですっっ! 以前も酷いことがあったんですっ! 前の婚約者にも酷い裏切りをされていてっ、俺はこれまで散々な人生を歩んできたんですっ!! ずっと真面目にっ、真摯に生きてきたのにっ、こんなことになってしまった! こんな形で終わりたくないんですっ! どうかっ、どうかっっ、お助けくださいませ!!」
――こんな叫び声が、聞こえてきたのですから。
これまでに起きていたこと、ラクライス様の心変わりによる決死の逃走。一部始終を聞いたわたしは、真っ先に『因果応報』という言葉が浮かんできました。
『いいかいシルヴィ。悪いことをしたらね、全部自分に返ってきてしまうんだよ』
あの時わたしに行ったようなことが、しっかりとその身に返ってきてしまっている。改めて、その通りだと感じます。
「シビーユさ――あの女は本気です! 長年夫として傍にいたからよく分かります! あの女は自分のためなら平気でなんでもやってしまう!! 人ですら虫を始末するように殺せてしまう人間なのですよ!!」
「……そうでしたか」
「そうなのです男性の御方! 俺はそんな危険人物に追いかけられていて、今頃あちこちに追手がばら撒かれているはず! いつまで逃げ切れるか分からない、とてつもなく切羽詰まった状態なんですっ!」
エクトルさんに向けて首が取れそうな程に頷き、ジャゾン様は再び胸の前で強く手を組みました。
「ですのでどうかお願い致します!! どうか一緒に連れて行ってください! そちらの馬車に乗せていただきっ、隣国に逃がしてください!」
このタイミングならまだあらゆる偽装が行われていないから、問題なく国境を越えられる――。誰が自分を連れて国境を越えたか分からないから、ラクライス侯爵家に目をつけられる心配もない――。
危険性は0なのだと信じられない程の早口で説明をし、エクトルさんとわたしを交互に見つめました。
「もしかすると――きっとこれが最後のチャンス。貴方様がた以外に頼れる人はいないのですっ! どうか……どうか……お願い致します! 俺を……お助けください……!」
「申し訳ありません。そちらは出来かねます」
言下、でした。エクトルさんが淡々と、左右に首を振ってくれました。
「なっ!? なぜなのですか!? どうして助けてくださらないのですか!?」
「その理由を説明する義務はありません。……僕らは先を急いでいるのですよ。失礼いたします」
元凶なのだから協力するはずがない――。そう返すと、面倒くさいことになってしまうからなのでしょう。エクトルさんが早々に話を切り上げ、わたしの手をそっと握って、歩き出しました。
ですのでわたしは優しく手を引かれ、馬車へと戻って――
((っ!))
――馬車に乗り込もうとしていた時、でした。不意に体温がカッと上昇し、無意識的に足が止まってしまうことになったのでした。
なぜならば、後ろから――
「お待ちください!! どうかお助けください!! 実はっ、今回だけじゃないんですっっ! 以前も酷いことがあったんですっ! 前の婚約者にも酷い裏切りをされていてっ、俺はこれまで散々な人生を歩んできたんですっ!! ずっと真面目にっ、真摯に生きてきたのにっ、こんなことになってしまった! こんな形で終わりたくないんですっ! どうかっ、どうかっっ、お助けくださいませ!!」
――こんな叫び声が、聞こえてきたのですから。
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